東京遠征回想 その①
前述の通り、テイスティングのストックがなく禁酒していたので、たまには備忘録として飲んだボトルを並べてみようと思います。7/28-30まで3日間、1泊3日でずっと飲んでいました。今回は簡単に一言感想を書きながら振り返っていこうと思います。
7/28
仕事を終え、駅まで車を飛ばし(自宅から駅まではかなり遠いんです)終電の新幹線で東京駅に着き、そのまま山手線で有楽町へ。
死ぬまで飲む勢いだったのですが、本調子ではなかったのでゆっくりと飲ませていただきました。
朝まで飲めるまで飲ませていただきましたが、素晴らしいモルトばかりで感動いたしました。多少無理しても来てよかったと思える、素晴らしい日でした。
1.マクファイルズ ピュアモルト 1945
終戦の年にリリースされたオールドボトル。
40年台のモルトを飲むのは2回めで、前回はコテコテシェリーのストラスアイラでしたが、経年変化にもかかわらずしっかりとした麦感やアーシーなニュアンスが特徴的でした。すごいボトルでした。
2.マキロップチョイス ジュラ 1966
赤いフルーツやちょっとしたオイリーさもあり、複雑で美味しいボトルでした。
ジャコーネのグレンファークラス21年。加水。
これも素晴らしいですね。優しいフルーツ香にオールドのシェリーがきれいに主張してきますが、しっかりとしたファークラスらしい麦感や土っぽさも顕在しており、そのバランスが絶妙に感じました。状態も抜群でしたし、素晴らしいボトルでした。
グレンリベット エクスポート
個人的に驚いたボトルの一つ。
70年台のリベットで、以前に2度ほど飲んでいましたが、今回飲んだのはいままでと全く違うものと言ってもいいくらいの感動でした。
オールドっぽいシェリー感やフルーツ感に程よいタンニン感。これがグレンリベットか…と言わしめるような素晴らしいボトルでした。ものすごい状態も良かったです。
ボウモア バイセンテナリー 正規輸入品
人生レベルでトップクラスに入るモルトと言っても過言ではないくらいの素晴らしさ。トロピカル感もそうなんですが、シェリーやレザー感も複雑に混じり、言語化しようとしても感情が先行してしまうような、それくらいの素晴らしさ。慈悲深いモルトでした。
グレンファークラス 1977 for TWH
ウイスキーフープ向けの77ファークラス。
プレーンカスクとのことですが、程よいフルーツ感にプレーンらしいピーティなニュアンスがあり、複雑でかなり美味しいボトルでした。
ファークラス、フープでいかれる度に素晴らしいカスクに出会えているようで、今の時点でこれだけ素晴らしいカスクがReleaseされていて、今後が楽しみでなりません。
ロングモーン 1975 EX-BOURBON HOGSHEAD TWA STILL LIFE
スティル・ライフシリーズの75ロングモーン。このあたりのロングモーンはシェリーが多い印象ですが、こういうスペックもあるんですね。嫌味のない美味しいフルーツ感がたまらなかったです。
タリスカー リンブルグウイスキーフェア向け モルトオブスコットランド
1994-2012のタリスカー。リンブルグウイスキーフェア向け。
リフィルシェリーとのことでですが、少しミーティーなのが印象的でした。タリスカーらしい潮感やフルーツ感もあり、美味しいボトルでした。
スキャパ 蒸留所限定 2017年ボトリング
2006-2017年のスキャパ。リフィルシェリーバットとのことですが、程よいプラムのような果実感やシェリー感があり、なんとも美味しいスキャパでした。こういうの家にあると幸せな気がします。
グレンロセス 2006 67.2% #5454 for UK
UK向けのグレンロセス。これは買いましたのでいつか飲んだときに記事にしようと思っていますが、バナナのようなニュアンスを感じ、複雑さに寄与している気がします。
まだまだハイプルーフで飲みごたえも抜群なのですが、経年変化でどうなるか気になるところです。秩父でも似たようなニュアンスを感じたことがあるような。今でも十分美味しいですし、今後が楽しみなボトルです。
グレンスコシア 25年
アメリカンオークで熟成された25年、まだ本国にしか発売されていないようですが、£250くらいだった気がします。
さらっとテイスティングコメントを書いていたので後日紹介する予定です。
£300くらいで本国で発売されている、95年蒸留のポートカスクのスプリングバンク。
詳細は聞いていませんが、向こうのネットショップで売っています。
チョコレートやプルーンのような見た目通りの香味で美味しかったです。
長くなってしまったので続きはまた今度書きます。
イチローズモルト 2010-2015 for Whisky Talk 2016 FUKUOKA 59.4% "オオサンショウウオ"
評価:A+-A++
香りはチョコレート、チェリー、少しミーティ、干し柿、ダージリンティー、程よいウッディネス。
飲むとチョコレート、干しぶどう、しっかりとした麦のコク、バニラ、ややスパイシー。
秩父蒸留所のイチローズモルトより、昨年のウイスキートーク向けのカスクです。
そのラベルから、所謂オオサンショウウオとして人気の高いボトルだったと記憶しています。
このボトルはまずバーボンバレルで樽詰めされた後、スパニッシュオークのシェリー樽で熟成させた、ダブルマチュアードのボトルのようです。
殆ど開けたてでしたので、硬い印象がありましたが、嫌味のないチョコレートやチェリーといった香味や、紅茶感などがあり、飲み疲れしないシェリー香味がありました。原酒がフルーティーで軽めなのも影響しているのかもしれません。
秩父蒸留所では、おおよそ8000樽の樽が熟成されていますが、見学した際には、1年に1回はテイスティングを行い、状態を確認していると言っていました。このボトルも途中でシェリー樽への詰替が行われていますが、このような原酒の確認によるカスクマネジメントが功を成しているものと推察します。にしても、良いチョイスだと思いました。
レートは悩みますが、次回飲んだときは更に好印象になっていることを期待して、A+としておきます。
※先日東京訪問などをしておりましたが、その前後より風邪を引いてしまい、病み上がりで飲みすぎたせいもあり、炎症が続いているようです。幸い快方に向かっておりますが、療養も兼ねて少し禁酒をしており、ブログ更新が滞っておりますことをご了承下さい。
ローズバンク 1991-2007 16年 the Whisky Experience 56.1%
評価 S
香りは白い花、シトラス、チェリー、ワックスのかかったレモン、バニラ、華やかな木香。
飲むとジンジャーレモネード、シトラス、しっかりとした麦のコク、高級家具、バニラ、余韻は優しいウッディネス。
当時、ザ・ウイスキー・エクスチェンジ社より2007年前後に単発で販売されていたリージョンズ・ウイスキーシリーズより、ローズバンク、1991年のリリースです。
1840年に地元の穀物商であったジェームズ・ランキンが精麦棟を改修して作ったと言われるローズバンク。ローランド伝統の3回蒸留を行う蒸留所で、1914年よりSMD社の所有となり、1993年に閉鎖が決定しましたが、現在も惜しむ声が多いと思います。
このボトルはリリースより10年ほど経過しておりますが、そのためかローズバンクっぽいシトラスやフローラルなニュアンスがはっきりと感じられ、樽感もそこまで強くなく、今丁度飲み頃ではないかと思えました。
個人的にはローズバンクのか細い良さというのはわかるときとわかりにくときがあるんですが、これははっきりと分かりやすいらしさが拾えます。熟成年数もちょうどいいのかもしれません。ナイスなタイミングで飲ませていただいた、大変美味なローズバンクでした。
アルタベーン 1995-2010 ゴードン&マクファイル コニッサーズチョイス
評価:A+
香りはエステリー。ユリの花、蜂蜜、洋梨、モルティ、バニラ。
飲むとスパイシーでドライ。みずみずしさを伴う麦のコク、バニラ、スパイス、強めの渋みを伴う樽感、余韻はドライ。
ゴードン&マクファイルのコニッサーズ・チョイスより、1995年のアルタベーンです。
1975年にブレンド用の原酒製造目的でシーグラム社が設立したアルタベーン。ブレンド用の使用が多いようで、あまりシングルモルトのリリースは多くない印象です。自分は外では飲む機会はなく、たまたま買ったボトルが二本くらい家にある程度です。
特徴的な点は、ウォッシュバックは下部が円錐状になっており、麦汁の抽出が効率的なこと(ハスクの層が濾過しやすく堆積するのでしょう)、ウォッシュスチルの加熱にエクスターナルヒーティング*1を行っていること。スチルはストレート、ボールタイプが2対あります。熟成はシーバス社のキースの集中熟成庫で行われているようです。
さて、このボトルですが、いつ開けたかも忘れたまま放置していたのですが、この前我が家で飲み会が開かれたときにとある方が気に入られたため、「そんなにおいしかったっけ?」ということで久し振りにのんでみました。
香りはかなりエステリーで、確かに華やかなスペイサイドの原酒のような、この価格帯とは思えない香りでした。飲むと意外にドライで、加水で無理矢理バッティングさせた感は否めませんが、4000円くらいで買ったことを考えると、トータルでみても中々おいしいと思えるボトルでした。
*1:もろみを外で加熱し、その後戻す方式。グレンバーギー、ミルトンダフ、グレングラッサ、グレンカダムなどで行われているとのことでした。
アードナムルッカン 2016 AD オフィシャル 53.0%
ARDNAMURCHAN 2016/AD 53% OB
香りはニューポッティ。キャベツの芯のようなニュアンスあり。ボディのはっきりした、厚みのあるモルティさ、嫌みはなく、少しフィッシュオイルのニュアンス、シトラス、干しぶどう、シダ植物やコケ、アーシーといったピーティなニュアンス、少し火薬。
飲むとニューポッティさ、スピリッツ感はあるが、適度にボディが太く、焼きショコラ菓子、オレンジのドライフルーツ、レモンクリーム、ピート、魚介だし。少し魚油感があるが、タンニンで上手くマスクされている。
アードナムルッカンからまさかのニューリリース、まだ三年経ってないので、ウイスキーではなくスピリッツとしてのリリースです。
アードナムルッカンはスコットランド最西端の蒸留所で、2014年にアデルフィが創業しました。自分もチラッと書きましたが、クレイジージャーニーで目白田中屋の栗林さんが訪れた蒸留所です。
このボトルは約2500本限定で、2015年蒸留のピーテッドモルトのオロロソとペドロヒメネス15樽(60リッター程のオクタブ)と2014年蒸留のノンピ-トのオロロソとペドロヒメネス14樽(オクタブ)をブレンドし、2か月間スパニッシュオークのペドロヒメネス樽(バット)でフィニッシュをかけたようです。
今回、ごく少量のリリースだったのですが、運良く一本手に入りましたので、しっかりとテイスティングさせていただきました。
スピリッツなので評価を付けませんが、非常に素晴らしく、美味しすぎてビックリしました。少しオイルだったり硫黄だったりするニュアンスは徐々に馴染んで来ると思いますし、この2年で嫌味のないがしっかりと太さがあるというのは、本当に上手に作られているんだろうなあと推察します。
色々と蒸留所見学に行って思うのは、ニューポットで綺麗すぎると線が細いウイスキーになったり、嫌な香味が変化していくなど、先を見据えた原酒づくりという視点が必要なのだろうと思うところがあります。樽のニュアンスも素晴らしく、カスクマネジメントも流石の一言です。7年はリリースしないと放送では言っていましたが、このような未来に思いを馳せることができるリリースでした。今年一番驚いたリリースかもしれません。今後のリリースが楽しみです。5年後にはもっとウイスキーが好きになっていることを期待して、熟成を待っていたいものです。
ブラインドテイスティング:ロイヤルブラックラ 1984 30年 ケイデンヘッド 54.1%
評価:A++
香りはエステリーでメロウ。アプリコットキャンディー、メロン、バタークッキー、ハニーシロップ、バニラ、菜種油、嫌みにならない程度のウッディネス。
飲むとハニーシロップ、オレンジ、アップル、しっかりとした麦のコク、ミリングしたてのハスク、バニラ、少しグラッシー、嫌みにならない程度の引き締める樽感や粉っぽさ。余韻はオーキーだが嫌みは少なく、短め。
総評
しっかりとしたアップルやオレンジといったフルーツ感とバニラといった樽感、飲み進めていくとのみ応えがありボディもあるが、オーキーな樽感と淡く消える余韻が特徴的。バーボンホグスヘッド、やや過熟で経年変化により抜けてきたか?
年数 24-30年程度
地域 スペイサイド
度数 50-55度程度
バーボンホグスヘッド
蒸留所は不明。ケイデンヘッドのバーボンホグスヘッド(家にある92グラントのケイデンなど)に似たようなニュアンスが多い。スペイサイドのブレンド向けの蒸留所か。70年代グレングラントっぽいニュアンスもあったが、その割にはグラッシーなニュアンスがなく除外。グレンバーギ―などでもありそうだが、しっかり樽で味付けされており、上記の年数以上は流石に過熟か。
前情報からはオルトモア、他はグレンロッシーなどが思い浮かぶ。
以上の内容で送りました(考察はやや増しておきましたが、ほぼ同じ解答です)
結果は…
ロイヤルブラックラの1984年蒸留、 30年熟成でした。
北ハイランドはインバネスの北東、ネアンの町近郊にあるロイヤルブラックラ。イングランドやローランドで多く売られたためか、ウィリアム4世のお気に入りとなり、1835年にはロイヤルワラントを授与されています。
現在はバカルディ社の所有で、以前セミナーで21年を飲ませていただきましたが、フルーティーで美味しい原酒だった記憶があります。デュワーズなどの原酒に用いられいますね。
正直素直なブレンド用の原酒で、ハイランド~スペイサイド系のモルトだろうということしか検討はつきませんでしたし、これのハウススタイルがあったら教えてくれよ!みたいに思いながら飲んでましたが、蒸留所以外のスペックはだいたい合っていたので合格としておきます。恐らく最初は樽感が結構あり、ドライでスパイシーなボトルだったと想像します。この香味と余韻の淡い感じは経年変化でかなりフルーティーに変化したボトルと想像しましたが、いいタイミングで戴きました。あるボトルを飲み頃の状態で戴く、これはボトルを持っている人達の宿命でもあり、辛いところでも楽しみなところでもあると思いました。そういう状態について考えさせてくれるボトルでした。
ラフロイグ 1997-2015 17年 シグナトリー・ウイスキーフープ向け 53.0%
Laphroaig 1997-2015 17 year old
Signatory, Cask hand selected by THE WHISKY HOOP
Matured in a Hogshead
Cask #8369
O/T: 285 bottles
評価:A++
香りはナッツ、オレンジピール、ハニーシロップ、バニラ、シリアルフレーク、魚介だし、ピート、程よいウッディ。
飲むとピート、魚介だしや磯っぽさ、スモークした貝殻、ハニーシロップ、しっかりめの麦感。
ウイスキーフープ向けのラフロイグ、1997年蒸留のボトルです。
このボトルがリリースされたときは2015年の年の瀬で、ラフロイグのバイセンテナリーで、凄いラフロイグがたくさん飲めた年でした。自分は確か2016年のはじめに東京で頂いて、ボトラーズに時折見られる、フルーティーさが際立つボトルだなあという印象でした。
その時も美味しく頂いたのですが、最近になりよく行くバーで勧められたので飲んでみました。
以前飲んだときよりナッティーさや魚介ダシや燻製したようなスモーキーなニュアンスが多く感じましたが、フルーティーさも共存しており、複雑さは以前より増したような気もします。かなりいい仕上がりになっているラフロイグだと思います。
ラフロイグやボウモアのトロピカル、フルーティー感は93年が有名で、このあたりは確かに凄い不思議なボトルが多いですが、ラフロイグはその以後もややフルーティーに寄ったボトルが見られる気がします。あんまりオフィシャルでは見ないのが興味深いんですが。理論的には麦汁の清澄度や酵母の問題なのかなと思ってしまいますが、他にも麦の品種のせいなのか、フロアモルティングのせいなのか、樽の影響なのか。正直良くわからないんですが、いろんな要因が重なって美味しくなってるんでしょう。このまま安定して美味しいボトルを輩出し続けてほしいです。