ウイスキーラヴァーの日常

シングルモルト、ウイスキー好きのサラリーマンが、ウイスキーを通じて感じたこと、思ったこと、考えたことなどを綴るブログです。

アルタベーン 1995-2010 ゴードン&マクファイル コニッサーズチョイス



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評価:A+
香りはエステリー。ユリの花、蜂蜜、洋梨、モルティ、バニラ。
飲むとスパイシーでドライ。みずみずしさを伴う麦のコク、バニラ、スパイス、強めの渋みを伴う樽感、余韻はドライ。

ゴードン&マクファイルのコニッサーズ・チョイスより、1995年のアルタベーンです。

1975年にブレンド用の原酒製造目的でシーグラム社が設立したアルタベーン。ブレンド用の使用が多いようで、あまりシングルモルトのリリースは多くない印象です。自分は外では飲む機会はなく、たまたま買ったボトルが二本くらい家にある程度です。

特徴的な点は、ウォッシュバックは下部が円錐状になっており、麦汁の抽出が効率的なこと(ハスクの層が濾過しやすく堆積するのでしょう)、ウォッシュスチルの加熱にエクスターナルヒーティング*1を行っていること。スチルはストレート、ボールタイプが2対あります。熟成はシーバス社のキースの集中熟成庫で行われているようです。

さて、このボトルですが、いつ開けたかも忘れたまま放置していたのですが、この前我が家で飲み会が開かれたときにとある方が気に入られたため、「そんなにおいしかったっけ?」ということで久し振りにのんでみました。

香りはかなりエステリーで、確かに華やかなスペイサイドの原酒のような、この価格帯とは思えない香りでした。飲むと意外にドライで、加水で無理矢理バッティングさせた感は否めませんが、4000円くらいで買ったことを考えると、トータルでみても中々おいしいと思えるボトルでした。

*1:もろみを外で加熱し、その後戻す方式。グレンバーギー、ミルトンダフ、グレングラッサ、グレンカダムなどで行われているとのことでした。

アードナムルッカン 2016 AD オフィシャル 53.0%


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ARDNAMURCHAN 2016/AD 53% OB

香りはニューポッティ。キャベツの芯のようなニュアンスあり。ボディのはっきりした、厚みのあるモルティさ、嫌みはなく、少しフィッシュオイルのニュアンス、シトラス、干しぶどう、シダ植物やコケ、アーシーといったピーティなニュアンス、少し火薬。
飲むとニューポッティさ、スピリッツ感はあるが、適度にボディが太く、焼きショコラ菓子、オレンジのドライフルーツ、レモンクリーム、ピート、魚介だし。少し魚油感があるが、タンニンで上手くマスクされている。

 

アードナムルッカンからまさかのニューリリース、まだ三年経ってないので、ウイスキーではなくスピリッツとしてのリリースです。

アードナムルッカンはスコットランド最西端の蒸留所で、2014年にアデルフィが創業しました。自分もチラッと書きましたが、クレイジージャーニーで目白田中屋の栗林さんが訪れた蒸留所です。

malt.hateblo.jp

このボトルは約2500本限定で、2015年蒸留のピーテッドモルトのオロロソとペドロヒメネス15樽(60リッター程のオクタブ)と2014年蒸留のノンピ-トのオロロソとペドロヒメネス14樽(オクタブ)をブレンドし、2か月間スパニッシュオークのペドロヒメネス樽(バット)でフィニッシュをかけたようです。

今回、ごく少量のリリースだったのですが、運良く一本手に入りましたので、しっかりとテイスティングさせていただきました。

スピリッツなので評価を付けませんが、非常に素晴らしく、美味しすぎてビックリしました。少しオイルだったり硫黄だったりするニュアンスは徐々に馴染んで来ると思いますし、この2年で嫌味のないがしっかりと太さがあるというのは、本当に上手に作られているんだろうなあと推察します。

色々と蒸留所見学に行って思うのは、ニューポットで綺麗すぎると線が細いウイスキーになったり、嫌な香味が変化していくなど、先を見据えた原酒づくりという視点が必要なのだろうと思うところがあります。樽のニュアンスも素晴らしく、カスクマネジメントも流石の一言です。7年はリリースしないと放送では言っていましたが、このような未来に思いを馳せることができるリリースでした。今年一番驚いたリリースかもしれません。今後のリリースが楽しみです。5年後にはもっとウイスキーが好きになっていることを期待して、熟成を待っていたいものです。

ブラインドテイスティング:ロイヤルブラックラ 1984 30年 ケイデンヘッド 54.1%

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評価:A++

香りはエステリーでメロウ。アプリコットキャンディー、メロン、バタークッキー、ハニーシロップ、バニラ、菜種油、嫌みにならない程度のウッディネス。
飲むとハニーシロップ、オレンジ、アップル、しっかりとした麦のコク、ミリングしたてのハスク、バニラ、少しグラッシー、嫌みにならない程度の引き締める樽感や粉っぽさ。余韻はオーキーだが嫌みは少なく、短め。


総評
しっかりとしたアップルやオレンジといったフルーツ感とバニラといった樽感、飲み進めていくとのみ応えがありボディもあるが、オーキーな樽感と淡く消える余韻が特徴的。バーボンホグスヘッド、やや過熟で経年変化により抜けてきたか?

年数 24-30年程度
地域 スペイサイド
度数 50-55度程度
バーボンホグスヘッド
蒸留所は不明。ケイデンヘッドのバーボンホグスヘッド(家にある92グラントのケイデンなど)に似たようなニュアンスが多い。スペイサイドのブレンド向けの蒸留所か。70年代グレングラントっぽいニュアンスもあったが、その割にはグラッシーなニュアンスがなく除外。グレンバーギ―などでもありそうだが、しっかり樽で味付けされており、上記の年数以上は流石に過熟か。
前情報からはオルトモア、他はグレンロッシーなどが思い浮かぶ。

 

以上の内容で送りました(考察はやや増しておきましたが、ほぼ同じ解答です)

結果は…

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ロイヤルブラックラの1984年蒸留、 30年熟成でした。

北ハイランドはインバネスの北東、ネアンの町近郊にあるロイヤルブラックラ。イングランドやローランドで多く売られたためか、ウィリアム4世のお気に入りとなり、1835年にはロイヤルワラントを授与されています。

現在はバカルディ社の所有で、以前セミナーで21年を飲ませていただきましたが、フルーティーで美味しい原酒だった記憶があります。デュワーズなどの原酒に用いられいますね。

正直素直なブレンド用の原酒で、ハイランド~スペイサイド系のモルトだろうということしか検討はつきませんでしたし、これのハウススタイルがあったら教えてくれよ!みたいに思いながら飲んでましたが、蒸留所以外のスペックはだいたい合っていたので合格としておきます。恐らく最初は樽感が結構あり、ドライでスパイシーなボトルだったと想像します。この香味と余韻の淡い感じは経年変化でかなりフルーティーに変化したボトルと想像しましたが、いいタイミングで戴きました。あるボトルを飲み頃の状態で戴く、これはボトルを持っている人達の宿命でもあり、辛いところでも楽しみなところでもあると思いました。そういう状態について考えさせてくれるボトルでした。

ラフロイグ 1997-2015 17年 シグナトリー・ウイスキーフープ向け 53.0%

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Laphroaig 1997-2015 17 year old
Signatory, Cask hand selected by THE WHISKY HOOP
Matured in a Hogshead
Cask #8369
O/T: 285 bottles

 

評価:A++

香りはナッツ、オレンジピール、ハニーシロップ、バニラ、シリアルフレーク、魚介だし、ピート、程よいウッディ。
飲むとピート、魚介だしや磯っぽさ、スモークした貝殻、ハニーシロップ、しっかりめの麦感。

ウイスキーフープ向けのラフロイグ、1997年蒸留のボトルです。
このボトルがリリースされたときは2015年の年の瀬で、ラフロイグのバイセンテナリーで、凄いラフロイグがたくさん飲めた年でした。自分は確か2016年のはじめに東京で頂いて、ボトラーズに時折見られる、フルーティーさが際立つボトルだなあという印象でした。

その時も美味しく頂いたのですが、最近になりよく行くバーで勧められたので飲んでみました。

以前飲んだときよりナッティーさや魚介ダシや燻製したようなスモーキーなニュアンスが多く感じましたが、フルーティーさも共存しており、複雑さは以前より増したような気もします。かなりいい仕上がりになっているラフロイグだと思います。

ラフロイグボウモアのトロピカル、フルーティー感は93年が有名で、このあたりは確かに凄い不思議なボトルが多いですが、ラフロイグはその以後もややフルーティーに寄ったボトルが見られる気がします。あんまりオフィシャルでは見ないのが興味深いんですが。理論的には麦汁の清澄度や酵母の問題なのかなと思ってしまいますが、他にも麦の品種のせいなのか、フロアモルティングのせいなのか、樽の影響なのか。正直良くわからないんですが、いろんな要因が重なって美味しくなってるんでしょう。このまま安定して美味しいボトルを輩出し続けてほしいです。

ボウモア 9年 シェリーカスク OB 40%

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Bowmore 9 yo Sherry Cask Matured
40%

評価:A

香りは焼け付いたゴム、空豆、黒糖、ボウモアらしい焦げ感のあるピート、焦げた木材。
飲むと口当たりは軽く、チェリー、パッションフルーツ、麦汁のうっすらとした甘み、焦げ感のあるピート、バニラ、魚介だし感、置いておくと少し紙っぽさが出てくる。

ボウモアのオフィシャル、9年です。
最近ですとボウモアの12年のラベルが変わったり、アイラフェス向けの19年が美味しいと評判でしたが、安ウマということで並行輸入で入ってきたこの9年も結構話題になっていた気がします。よく行くバーが仕入れてましたので、テイスティングしました。

焼け付いたゴム感や紙とも言わないけど近いようなニュアンスはありましたが、割と熟成感もあり、スイスイ行けるボトルです。

価格と味のバランスを考えると、文句を言えるようなボトルではないですが、グレンキースや短熟アイリッシュなどにあるようなボディの軽さを結構感じてしまい、40%まで加水されていることも考えると、何も考えずにスイスイ飲んでしまったほうが良いボトルだなーという印象でした。

ボトルの評価というものは結構難しく、主観で好き嫌いを表現するのは簡単なんですが、それをなるべく客観的に見ようとすると相当の鍛錬や姿勢が大事になっていくると思っています。ウイスキーを人に勧めたり、ウイスキーへの更なる理解をしようと思うと、出来ないとわかっていてもなるべく客観的にボトルを評価したいというのが本音じゃないでしょうか。このボトルは賛否両論あるようですが、ネガティブな要因と、4000円では得られないシェリーの美味しさが共存している点で評価が分かれるんだと思っています。個人的には求めているボウモアの味とはちょっと異なりますが、それをこの価格帯のボウモアに求めるのも筋違いな話だと思いますし、楽しめるモルトだと思います。カスクボトラーズをバカスカ飲んでいる人にはちょっと物足りないとは思いますが、オフィシャルのスタンダードをメインで飲まれている方に、ちょっと違うボウモアをお見せする形で提供するのは結構良いんじゃないかなあと思いました。是非一度ご賞味ください。

 

グレンファークラス 15年 OB 46%

 

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評価:A

香りは干しぶどう、ベリーティー、削りたての木、少しピーティ。
飲むとベリーのガム、木材、ココア入りのおからパウダー、少し香草のリキュール、程よいウッディ。

 

前回旧ラベルのファークラスを飲み、今回久しぶりに現行品を飲んでみようかなあと思い戴いた一杯です。

malt.hateblo.jp

現行品と比較すると、やや木材っぽいニュアンスや、ガムのようなベタッとした甘みが気になりますが、流石飲みやすく嫌味のあまりない仕上がりだと思います。

近年シェリー感も旧ラベルより強い印象はありますが、恐らくこれはJ&MM社のシーズニングシェリー樽の影響じゃないかと思います。下記リンクを読んで戴ければわかりますが、6ヶ月間オロロソ・シェリーを詰めた樽を使っているとのこと。

whiskymag.jp

ただこの価格高騰の時期にあって、この価格で安定して15年もののウイスキーがこのクオリティでリリースされているのは、グレンファークラスの膨大なストックがあってこそだと思いますし、シェリー樽のウイスキーを知る、一つの入口になるウイスキーだと思います。

余談ですが、グレンファークラスはマッシュタンや蒸留釜も大きいのですが、熟成庫も非常に広大なようで、他の蒸留所の樽も保管しているようです。先日スコットランドに行った方から見せられた写真はこちら。

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てっきりアベラワーなどの集中熟成庫においているのかと思いきや、ファークラスの熟成庫に様々な樽を場所貸しのような形で保管してあるようです。興味深い話が聞けました。

ブラドノック 1977 23年 53.6% レアモルト

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BLADNOCH 1977 23 year old
Alc:53.6% 
RARE MALT
# 4906

評価:A++

香りはメロン、洋なし、オレンジ、サワークリームフルーツグラノーラのようなドライフルーツとシリアル。
飲むとオレンジ、バニラ、グレープフルーツのわた、太く少し酸味のある麦感、やや強めの樽感。

 

UD社のレアモルトシリーズより、ブラドノック1977年、23年です。

1817年にローランドのウィグタウンに創業したブラドノック。オーナーは幾度と変わっていますが、1983年にアーサー・ベル&サンズが買収、ギネス社が1985年に同社を買収し、UD社の傘下とします。1993年には蒸留所は閉鎖され、取り壊しの危機にありましたが、1994年にレイモンド・アームストロング氏が買収、2000年に蒸留再開します。2014年くらいに不穏な動きがあったようですが、2015年にDavid Priorが買収、マスターディスティラーにはバーン・スチュワート社のブナハーブン、ディーンストン、トバモリーレダイグの製造からブレンディングを担っていたIan Macmillan氏が携わることとなりました。今年はバイセンテナリーで、5月頃より稼働を再開したようです。もう少し大々的な宣伝やボトル販売がされているとうれしいですが、そういう感じではなさそうです。

さて、今回のボトルはそのUD社が持っていた樽をリリース、と推測されます。レアモルトらしく樽で味付けされていない、ナチュラルなリリースが特徴的ですが、これも例外ではなく、モルティでエステリーなものでした。複雑さや重厚感こそないですが、嫌味が少なく美味しいモルトでした。全然みなくなったレアモルトですが、やはりいい出来ですね。