ウイスキーラヴァーの日常

シングルモルト、ウイスキー好きのサラリーマンが、ウイスキーを通じて感じたこと、思ったこと、考えたことなどを綴るブログです。

タリバーディン 1993 23年 48.7% Sakura

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※2枚目の画像はsaketryより転載

評価:A+
香りは柔らかく甘い。ミルクキャンディー、バニラ、オレンジピール、少し青草や花びら。
飲むと滑らかな口当たりに、甘さ控えめのビターなミルクココア、少しあとからバニラシロップ、スパイシーやハーブ。
フィニッシュは樽のエグミや草っぽさ、少し粉っぽい。
 
先日リリースされたスコッチモルト販売さんのボトル、Sakuraシリーズより、1993 タリバーディンです。
 
 20世紀最初に設立されたスコットランドの蒸溜所として、1949年にジュラやマクダフ、グレンアラヒーなどを手掛けていたデルム・エバンスにより設計された蒸溜所で、その後すぐに買収されています。1971年にはインバーゴートン社がオーナーとなり、1973年には増築されましたが、1993年にホワイトマッカイに買収、94年からは暫く操業停止の時期が続いていました。2011年にワイン商のメゾン・ミッシェル・ピカールが買収し、以後シングルモルトのリリースを目標にリリースを行う方針となりました。現在はワインカスクフィニッシュなどのフィニッシュものや、ハイランドクイーンへのブレンドなどを行っています。
 蒸留所内にボトリング施設を持っている数少ない蒸溜所の一つであり、ハイランドクイーンやコストコ向けのカークウォールのウイスキーのボトリングなどを行っているようです。
 酒質は南ハイランドらしい軽さやグラッシーさを伴っているものが多い印象です。エヴァンスが設計した独特の構造によるものなのか、地域性なのかはわかりませんが…
 
 さて、この度シークレットヤングアイラと共にリリースされたSakuraシリーズのタリバーディンですが、サンプルの量しか飲めていませんが、結構美味しいボトルでした。香りは最初フルーティーでしたが、時間経過でミルクキャンディーやバニラなどのらしい香りが前面に出てきており、またタリバーディンらしい草っぽさが梅の花のように振れるようにも感じました。樽感やえぐみがあってスパイシーではありますが、タリバーディンとかにある草っぽさがそんなに強くなくて、度数も程良く落ちて飲み頃と思います。やや樽のネガティブさも感じられるので微妙なニュアンスが全く無いわけではないですが、程よいらしさがあります。個人的にはこういうボトルは好きです。
SAKURAというネーミングセンスがしっくり来る、良リリースだと思いました!
 
 
 
 

 

 

アベラワー 16年 2016年ボトリング ハンドフィルド シェリーカスク 56.5%

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評価:A+

香りは硬めのプラム、スパイシー、軽くミーティー、クレヨン。
飲むとプラムのグミ、粘性がありリッチ、カカオの多いチョコレート、バニラ、シナモン。余韻はスパイシーさが残る。
 
 スペイサイドの中央に位置し、アベラワー皮時に建てられているアベラワー蒸溜所。1825-26年頃に設立されたとの記載がありますがが、どうやら事業計画の失敗でグラント兄弟が引き継ぐこととなり、1840年にはグラント兄弟がグレン・グラントを設立するために去るなどしていたようです。
現在の地に蒸溜所が建設されたのは、1879年に大規模火災が起き、当時ダルユーインを運営していたジェームズフレミングにより建設されました。ヴィクトリア朝の美しい建物だったようで、その後ロバートソンに買収されてますが、1898年にも再度火災が発生し、再建されたと行った経緯があります。
 1974年にはペルノ・リカールが買収し、その際に近代的な設備が付け加えられました。現在はペルノ・リカールシングルモルトとして、グレンリベットと共に主力のシングルモルトです。2002年にはビジターセンターを一新し、また特にフランスでは350万本を超える出荷数を誇る、ベストセラーのボトルになっています。
スタンダードクラスでは12年、18年がリリース、またカスクストレングスのアブーナもリリースされております。18年はこの前のウイスキーガロアでも高評価のボトルでした。
 
さてこれは蒸溜所で自分で詰めることの出来る、ハンドフィルドボトルです。打ち合わせのときも含め、何度か飲む機会に恵まれましたので飲んでみました。あまり複雑さはないものの、粘性が高く嫌味のないシェリーカスクで、少しオイリーや機械油のニュアンスもありましたが、純粋に美味しいと思えるボトルでした。アブーナも含めて、アベラワーは安定して良いボトルが多いですね。人によっては評価をA++位にしてもいいかもしれません。よく出来たシングルモルトだと思います。
 

長濱蒸溜所を見学してきました。

先日、長濱蒸溜所に行ってきました。

偶々長距離ドライブの寄り道(寄り道ってレベルじゃなかったですが)に長濱に降りてみました。見学出来るか電話をしてみると、レストランから見たりすることが出来るとのこと。近江牛という言葉に釣られつつ、行ってみることにした次第です。

長濱インターから降りて大通りを曲がると、少し趣のある街並みを通る結構細い道を進んでいきます。「本当にこんなところに蒸溜所?ナビが間違えているんじゃ?」と思いながら道を勧めていくと、蔵を改築したと思われる建物に確かに「長濱浪漫ビール」の文字が。米蔵を改築したところのようですね。

元々はクラフトビールづくりをされており、20年程前から製造されているようです。

レストランに入り、ビールと近江牛を注文。ハンドルキーパーのため飲めなかったのですが、同乗者はヴァイツェンを気に入っていました。IPAも飲んでいましたが、Punk IPAを少し爽やかに飲みやすくした感じだったようで、ブルワリーとしての実力も伺われます。

 

 さて、見学です。遠目でしか見れませんでしたが、ポットスチルはこんな感じでした。ポルトガルのホヤ(HOGA)社製の独特の形状のポットスチルで、エデンミルなどが採用しているようです。

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室内には樽がダンネージのように置かれていました。

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こちらは新しく詰めたものでしょうか。Lightly Peatedの記載があります。

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火入れ式で初めて詰められたミズナラ樽です。

www.romanbeer.com

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モルトミル、マッシュタン、ウオッシュバックなどはビールと供用しております。

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飲めないままの訪問だったのが残念でしたが、職人さん方が忙しなく製造管理をしておりました。今後のリリースが楽しみになる蒸溜所でした。

ボウモア 1996-2011 15年 ウィルソン&モーガン 57.3% シェリーフィニッシュ


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評価:A++
香りは焦げた木、しっかりとした麦、甘く煮詰めたプラム、らしいピート、ヨード感。
飲むと口当たりは軽やかで、プラムやアップルのコンポート、マラスキーノ、ピート、生姜、シナモンシュガー、程よい樽感。余韻は短めで、やや強めのタンニン。
 
ウィルソン&モーガンが2011年頃にリリースした、1996年蒸留のボウモア、15年熟成です。
このボトルがリリースされた頃は、恐らく1993に代表される90年代前半のトロピカルなボウモアが流行っていた頃で、90年代後半蒸留はまだまだ売っていた時期かと思います。1994年にはサントリーが完全子会社化しましたが、90年代後半までの優秀なリリースは、サントリー介入が関係していると思わずにはいられません。
個人的には96-98辺りのリリースにも好みのものが多く、これも開栓が楽しみなボトルでした。
私のホームバーでは、マスターが仕入れに行く酒屋の好みもあり、ウィルソン&モーガンが必ず一本は開いてるんじゃないかと言うくらいウィルソン&モーガン推しのバーで、自ずと飲む機会の多いボトラーの一つですが、確かにできの良いものが多い印象です。特に今回のようなシェリーカスクフィニッシュなどのフィニッシュものでも美味しいものが多く、カスクマネジメントのレベルの高さを感じさせます。
 
このボトルも例外ではなく、やや樽のコテコテ感はありますが、赤い果実の砂糖やワイン漬けのような、甘くフルーティーなニュアンスに、90年代後半のニュアンスも感じ取られ、程よいフィニッシュものに感じました。
 
今年に入りウィルソン&モーガンのインポーターが成城石井からePowerに変わったようです。5月には2種類程度リリースされると聞いています。今後のリリースも楽しみです。
 
 
 

スプリングバンク 2000 16年 UK向け

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評価:A++
香りはしっかりと力強い麦感、イチゴ、ブリニーとシェリーのリッチな香りが混ざり合う。少しアーシー、奥からピート、古びた納屋、オイリー。
飲むとプラムジャム、プルーン、キャラメル、苔のようなピート、魚介だし、グレープフルーツのわた、深みのある麦感、程よいピート、スパイシー。
 
スプリングバンクのオフィシャル、2000年蒸留の2016年リリース、UK向けのボトルです。
 スプリングバンクと言えば、キャンベルタウンにある数少ない蒸溜所で、未だにJ&A・ミッチェルによる独立資本での経営がなされている蒸溜所です。自社でボトリング設備を有している数少ない蒸溜所で、その設備は同社の所有するボトラー、ケイデンヘッドのボトリングにも利用されています。また、特筆すべきはすべての麦芽をフロアモルティングで賄っており、昔ながらの製法を踏襲した、昔のモルトらしい香味を作れる、数少ない蒸溜所の一つと言っていいでしょう。ピートは近くのマクリハニッシュの土地から切り出し、このピートの炊く時間により3酒類の原酒をつくりわけます。ヘーゼルバーン、ロングロウはそれぞれスプリングバンクのノンピート・ピーテッドを指します。創業は1828年で、今から10年先のバイセンテナリーが楽しみな蒸溜所です。
 
さて、このボトルはUK向けのシェリーカスクなのですが、バットで16年熟成ということもあり、シェリーと原酒の混じり具合が良い感じです。麦感もバンクらしく力強いですが、嫌な要素があまりなく、多層的なフレーバーを感じます。飲み進めていく度にコロコロと表情を変え、今後もっと香味の変化がありそうです。さすがのバンク、素晴らしい出来でした。

イチローズモルト 秩父 Exclusively Bottled For HBA 2010-2016 6年 59.5%


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評価:A+~A++
香りはエステリーで甘い。アプリコット、アップルのコンポート、シナモン、アメリカンコーヒー、焼きたてのトースト。
飲むとしっかり熟成したプラム、ストロベリー、桃、トロピカルティー、リッチな麦のコクがあり飲み応えがあるが、粘性はそれほど多くない。
余韻はスパイシーさと、程よいタンニンとウッディネス、。

 

先週は体調不良か花粉のせいかわかりませんが、鼻詰まりがひどくモルトをテイスティングする機会に全然恵まれず…。週末になり少し味がわかるようになってきたので再開します。

さて今回はホテルバーメンズ協会向けにボトリングされた、イチローモルト、2010年蒸留の6年モノです。

説明不要の秩父蒸留所ですが、以前もいくらか紹介したように、2010年ころからの蒸留はフルーティーで美味しいモルトが増えてきた印象です。フロアモルティングもはじめましたし、これからのリリースが楽しみになってきました。6-7年蒸留で、複雑さはそこまでなくてもしっかりとした熟成感が得られるのは、ジャパニーズらしいといえばらしいでしょうか。

さてこのぼとるですが、シェリーらしいアプリコットやアップルのコンポートなどと言った甘い香りや、プラムなどの赤い果実感を感じつつ、秩父原酒らしさと相まって、トロピカルティーのようなニュアンスも感じられ、かなりいい出来のイチローモルトでした。そこそこスパイシーですが、経年変化でもっといい感じに触れるかもしれませんね。このようなニュアンスは、90年代前半のブッシュミルズなどとも似たようなニュアンスに感じます。これからのリリースも楽しみにさせてくれる一本でした。

ジュラ 1989 26年 ヘビリーピーテッド シグナトリー

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評価:A+

 
香りはグレープフルーツ、キンカン、すりおろしたリンゴ、穏やかな麦感、土っぽいピート香。
飲むとスパイシーだが僅かにシトラスやパイナップルなどのトロピカル感、その後スモーキーなしっかりとしたピートが覆う。余韻はウッディ、バニラ、スパイス。
 
シグナトリーからリリースされている、ジュラの1989年蒸留、2016年リリースです。
アイラ島の東側に隣接しているジュラ島。アイラのアスケイグ港からアイラ海峡を2000m程渡ったところに島があり、隣接という言葉が相応しい島です。人口が約200人に対し、鹿が4000頭以上おり、まさに鹿の島(ヴァイキングの言葉でジュラ)という言葉通りの島です。
 現在のジュラは1963年にオープンした蒸溜所で、現在はホワイトマッカイグループ、親会社はインドのUBグループの傘下です。基本的にはノンピートでオイリーなモルトを作りますが、夏の1ヶ月間はピーテッドタイプのモルトも作成しております。仕込み水はマーケットロッホの水で、こちらは比較的ピーティーな水のようです。
 ジュラは1999年辺りのバーボン樽が有名で、またオールドのジュラはトロピカル感を纏ったボトルも散見されます。このボトルも香味からは間違いなくバーボン樽ですが、かなり土っぽさが強いピートする香りでした。飲むと結構なスパイシーさを感じますが、奥からシトラスとトロピカル感を感じ、ピートが覆い、結構美味しいモルトでした。時間経過でスパイシーさがマイルドになってきた時、いい方向に触れるとさらに面白い一本となりそうな、ポテンシャルを感じるウイスキーでした。サンプルくださったT様、ありがとうございました!