ウイスキーラヴァーの日常

シングルモルト、ウイスキー好きのサラリーマンが、ウイスキーを通じて感じたこと、思ったこと、考えたことなどを綴るブログです。

【初心者向け】ウイスキーの定義や分類など

 ここ数日で初心者向けの資料を作ってまして、せっかくですのでブログにも掲載しようと思います。美味しいウイスキーを飲むのが一番の目的ですが、そのためには最低限の知識があった方が、美味しいウイスキーにたどり着きやすかったり、また興味や関心も増えるかと思います。

尚、初心者向けカテゴリにはこれまでにも幾つか記事を作っていますので、そちらも参考にして戴ければ幸いです。

 

 

1.ウイスキーとは?

ウイスキーの定義を端的にいうならば、穀物を原料とした蒸留酒で、樽で熟成されたもの」と定義されます。しかしこのままでは多少わかりにくいので、いくつか分類して説明していきましょう。

お酒(酒類)は大きく分けて3種類あり、それぞれ醸造酒、蒸留酒、混成酒があります。蒸留酒とは、ビールやワインのように、原料を発酵させることでアルコールを生成し作られた酒のことです。アルコール度数はせいぜい10%と、低めなのが特徴です。一方、蒸留酒は、醸造したものに蒸留という工程を加えて出来たもので、ウイスキー、ブランデー、ラムやジン、ウォッカなどがこれに当たります。蒸留酒のうち、ウイスキーを名乗るためには、各国の法律をクリアしなければなりませんが、概ねの理解としては、「穀物を原料とし、オーク樽で(概ね3年以上)寝かせたもの」と覚えてください。

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2.ウイスキーの原料

 ウイスキーの原料は、穀物と水に大別されます。穀物は、大麦麦芽モルト)、とうもろこし、小麦、大麦、ライ麦などが用いられます。原料の比率などは、それぞれの地域ごとに法律で決められていることが多く、例えばモルトウイスキーであれば、大麦麦芽のみを使用することが定められています。

 また、ウイスキーを蒸留する際には、原料の半分を占める水の存在も非常に重要になっています。ウイスキーを仕込む水のことを仕込み水(マザーウォーター)と言い、ウイスキーの個性を生み出す要因の一つと言われています。良質な水源には蒸溜所が建設されることが多く、例えばスコットランドのスペイサイド地域にあるスペイ川流域には、およそ50以上の蒸溜所が存在し、グレンリベット、グレンフィディックといった名だたる蒸溜所も、このスペイサイドで作られています。

3.ウイスキーの分類

ウイスキーは、原料や混ぜあわせ方により、幾つかに分類されます。

まずは原料による分類です。

モルトウイスキー

大麦麦芽のみを原料に、単式蒸溜器で蒸溜したウイスキーのこと。それぞれが豊かな風味を持ち、個性の強いものが多い。

グレーンウイスキー

とうもろこし、小麦、未発芽の大麦などを主原料に、大麦麦芽を混ぜ合わせて、連続式蒸留機で蒸留したウイスキーのこと。癖がなくマイルドだが、個性に乏しいとされる。

世の中の大半のウイスキーは、このモルトウイスキーとグレーンウイスキーを混合させたブレンデッドウイスキーです。ジョニーウォーカーカティーサーク、角瓶など、様々なところで売られているスコッチやジャパニーズウイスキーはこのブレンデッドウイスキーです。

また、モルトウイスキーは以下のように更に分類することができます。

シングルカスク

一つの樽からの原酒のみを瓶詰したもの。
その樽や原酒の個性が明確に出る。

 

シングルモルト

単一の蒸溜所(A蒸溜所)で作られたモルトウイスキーのみを樽詰めしたもの。
A蒸溜所で作られた原酒同士は混ぜ合わせても良い。
蒸溜所の個性が明確に出ることが多い。

 

ブレンデッドモルト

複数の蒸留所で作られたモルトウイスキーを混ぜ合わせたもの。

A蒸溜所+B蒸溜所…。

 

4.世界五大ウイスキー

 世界のウイスキー産地を大別して、世界5大ウイスキー産地という概念が存在します。今回はスコッチのみを扱います。その他にも、台湾、タスマニア、インド等様々な地域でウイスキーは作られています。

  1. スコットランド:スコッチウイスキー

  2. アイルランドアイリッシュウイスキー

  3. アメリカ合衆国:アメリカン・ウイスキー

  4. カナダ:カナディアン・ウイスキー

  5. 日本:ジャパニーズウイスキー

 

5.スコッチウイスキーの分類

 スコットランド全土のモルト蒸溜所はおおよそ140程あるとされています(一部休業、閉鎖含む)。スコッチウイスキーは、生産されている地域によって、およそ6つに大別されます。

①スペイサイド地方

②ハイランド地方

アイラ島

アイランズ

⑤ローランド地方

アイランズ

 

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*1

 

①ハイランド地方Highland

 スコットランドは元々文化や民族の異なる北部ハイランドと南部ローランドの2つの地域に分類されます。ハイランドはケルト民族やゲール属の国で、ローランドはゲルマン系などが支配していたようです。

ハイランドでは、およそ40以上の蒸溜所があります。広範囲に渡るため東西南北に分類することも多く、地域ごとに様々な個性を持ったモルトが多い印象です。

②スペイサイド地方Speyside

スコットランドの北東にある地方で、上質な水源であるスペイ川流域では沢山の蒸溜所が存在します。この流域で作られるモルトをスペイサイドモルトと言い、全長160km程度の河川に、およそ50以上の蒸溜所がひしめき合っています。スコッチのモルトウイスキーの中でも華やかでバランスに優れたものが多いとされ、有名な蒸溜所である、グレンリベット(The Glenlivet)や、グレンフィディックマッカランといった、多くの有名な蒸溜所が存在します。

アイラ島Isle of Islay

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 アイラ島ヘブリディーズ諸島の最南端にある島ですが、独特のスモーキーやヨード、ピーティーと言われる独特の香味のあるウイスキーを生産していることで有名です。この地域で生産されているウイスキーをアイラモルトと言い、主にウイスキーの生産で成り立っている島です。アイラ島の北東部にはアスケイグ港があり、近くにカリラ(Caol ila)、ブナハーブン(Bunnahabhain)という2つの蒸溜所が存在します。カリラは比較的スモーキーなモルトが多いですが、一方でブナハーブンはスモーキーさやピーティーさの少ない、アイラモルトでは珍しいウイスキーです。

 南部のアードベッグArdbeg)、ラガヴーリン(Lagavulin)、ラフロイグ(Laphloaig)はヨード臭を伴うパワフルなアイラモルトが特徴的で、ラフロイグはあのチャールズ皇太子が愛飲しているという、お墨付きのウイスキーです。

島の中心部にあるインダール湾にはボウモアBowmore)蒸溜所という、アイラモルトの女王とも形容される蒸溜所があり、こちらもスモーキーで魅力的なモルトを多く輩出してきました。その対岸にはブルイックラディ(Bruichladdich)蒸溜所があり、2001年に再オープンし、ユニークなモルトを多く製造しています。

北西部には2005年にキルホーマン(Kilchoman)蒸溜所が設立されました。将来的に100%アイラの原料でウイスキーを作ることを目標に、小さな蒸溜所が動いています。

アイランズ

 アイラ島以外の諸島(アイランズ)を総称してアイランズと言い、そこで生産されたモルトアイランズモルトと呼称します。様々な個性を纏ったモルトが多く、一括りに特徴を語るのは非常に難しいですが、佳酒も多く、ハイランドパーク(Highland Park)、バランタインの原酒であるスキャパ(Scapa)、スパイシーでスモーキーなタリスカー(Talisker)、その他アイル・オブ・ジュラIsle of Jura)、アイル・オブ・アラン(Isle of Arran)、トバモリー(Tobermory)、アビンジャラク(Abhainn Dearg)、アイル・オブ・ハリス(Isle of Harris)などがあります。

⑤ローランド地方

 スコットランドの中では、エジンバラグラスゴーといった大都市を含むローランド地方。こちらで作られるモルトをローランドモルトといいます。歴史的にはローランドモルトは風味の軽い、ライトなウイスキーを造り、グレーンウイスキーブレンデッドウイスキーを大量生産し、19世紀には一斉を風靡しました。しかし近代化が進むに連れて伝統技術が廃れていくなどし、現在は次第に衰退し、現在でも創業を続けているのは、グレンキンチー、オーヘントッシャン、アイルサベイなどの限られた蒸溜所でのみモルトを生産しています。近年になり、ブラドノックやエデンミル、キングスバーンズなどの蒸溜所の再稼働や新規蒸溜所の建設が進み、少しずつモルトの生産も増えてきています。

⑥キャンベルタウン

 スコットランドのキンタイア半島の先端の町、キャンベルタウンで作られるモルトウイスキーをキャンベルタウンモルトといいます。19世紀後半には30を超える蒸溜所があり、かのマッサンでお馴染みの竹鶴政孝が最終的見学、実習したヘーゼルバーン蒸溜所はキャンベルタウンにありました(現在は閉鎖)が、現在は3つの蒸溜所が残るのみです。と言っても佳酒が多く、スプリングバンク、グレンスコシア、そして2004年に復活したグレンガイル蒸留所。何れも評価の高いモルトを排出し続けています。

 6.ウイスキーラベルの読み方

例を挙げて説明していきます。

このボトルはシグナトリーというボトラーズから出ているボトルです。ボトラーズはその商品ごとにレイアウトが大体決まっているので、慣れればすぐ読めるようになりますが、画像から解読をしていきます。

ここに書かれている文字を書き出していき、解説します。ボトラーズは詳細にかかれていることが多いです。特にシングルカスクですので、このボトルはたくさん情報が載っています。

 

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CASK STRENGTH COLLECTIONボトラーズのシリーズ名ですが、このシリーズではカスクストレングスでのリリースを特徴としています。

IMPERIAL…蒸溜所名です(インペリアル:閉鎖蒸溜所)

1995…蒸溜年

AGED 18 YEARS…熟成年数

SELECTED BY AND BOTTLED FOR ASTA MORRIS…これはアスタモリスというボトラーズに販売された樽であることを表します。つまり、アスタモリスがシグナトリーから樽を買い、アスタモリスから販売するといった形で売られたボトルになります。

Distilleried on:DD/MM/YYYY 蒸溜日

Bottled on:DD/MM/YYYY ボトリング日

Matured in a Hogshead 熟成した樽の種類。今回はホグスヘッドとしかわかりません。

Cask No 50147 カスクナンバー。

Bottle No: 31 of 289 瓶詰めされた本数(アウトターン)とこのボトルが何番目かを指します。

70cl つまり700mLです。

52.4% 度数を指します。

 

*1:Wikipedia:Scotch Whiskyの画像を日本語に翻訳

白州蒸溜所に行ってきました(ツアー編)

先日行ってきました、白州蒸溜所のレポートです。
金曜日に風邪をひき、土曜日にインフルの検査、陰性を確認してそのまま飲み会、日曜日は5時起きで白州へというイミフスケジュールでしたが、某酒屋さんの運転とお話のお陰で、楽しく有意義に過ごせました。また行き帰りの車で少しBABYMETALに詳しくなるという…

さて、日曜日の10時半頃に白州に到着したのですが、ツアーまで時間がありましたのでウイスキーミュージアムに行ってきました。

このアングルから撮ると良い、と言われたので取ってみましたが雰囲気出てますでしょうか…?

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正面は中々撮りにくいですが、こういう雰囲気出ている施設であります。

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ウイスキーミュージアムでは、山崎にもあるような、サントリーを中心としたジャパニーズウイスキーの歴史が展示されています。

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まあそんなこんなでぐるぐる回ってたら時間になりまして、工場見学へ。

まずはピートと麦芽の説明。
①二条麦芽の使用、②ピートとノンピート麦芽の違い③ピートについて

この3つを簡単に説明されていました。

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マッシュタン。かなり大きいです。
ここらへんから適当に写真を撮りながらきょろきょろしていたのでどんなガイドだったかあんまり覚えてないですが、流暢に噛まずに説明されるガイドさんを見て、サントリーの教育の素晴らしさを感じずにはいられませんでした。同行した方は、「サントリーのガイドさんは顔面偏差値が高い」(一部改変あり)と仰られていましたので、サントリーの女性店員を見る度に偏差値を付けざるを得ませんでしたが、見学時の偏差値の中央値は55程度じゃないでしょうか。確かに平均以上のきれいな方が多かったです。

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何を見学しに行ったかわからなくなってきましたので話を戻しますが、かなり大きなマッシュタンです。

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確か4mほどの高さと仰られていました。かなり高いところにあります。

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続いてウォッシュバック(発酵槽)。

大きく、相当な数に圧倒されます。ダグラスファー製、72kL程度のマッシュタンが24基あり、フルーティーな香味が広がります。

一部透明になっていて、発酵槽の下が見えるようになってるのがさすがです。

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ただ、回っていたら気になる英語が…

発酵槽、…!?

Fermentation Tub????

聞いたことがありません。

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英語では普通Washback、せめてFermenterでないとおかしくないですか??

念のためググってみましたけど、こんな英語はどこにも引っかかりませんでした。

ここ以外にも、白州はところどころ怪しい英語が散見されるのは残念です。

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さて、次はポットスチルです。

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2014年にポットスチルが追加され、従来のランタン7基、ストレート5基にストレート4基が追加されました。

中々置くまできれいに撮ることは出来ませんが、現在16基のポットスチルがあるとのことで、かなり大きな蒸溜所だなと再認識させられます。

スコットランドなどとは異なり、色んな形のポットスチルがあるのがまた面白いですよね。ちなみに、初留器と再留器の見分け方ですが、①サイトグラスの有無、②大きさ(初留の方が大きいことが多い)から大体見分けがつきます。

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今回はモルト蒸留しか見れませんでしたが、帰り際のこの奥にはグレーンの連続式蒸留機があるようです。個性的なグレーンを実験的に作っているようで、非常に楽しみです。

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お次はバスで移動して熟成庫。

奥からバレル、ホグスヘッド、パンチョン、シェリー樽という謎の分け方で説明されてましたが、シェリー樽=Sherry Buttの解釈で良いようです。

まあウイスキーの製造工程を見たことがない人向けの並びなのでしょうけど、シェリーバッドじゃなくてシェリー樽と略しているのがちょっとふしぎではありました。ただ一度に比較できるのは良いですね。

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熟成のお話を聴きながら辺りを見ると、きちんと樽が貯蔵されているのが見えます。

かなりの貯蔵です。

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現在は完全にID管理されており、樽の素性は不明です。

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さて、、戻ってきてからはテイスティングセミナー。

トゥワイスアップでの試飲を勧められていましたが、せっかくなのでいつもどおりテイスティングさせていただきました。

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白州ホワイトオーク原酒
香りは華やかで甘く、フレンチトースト、蜂蜜掛けのクリーム、マスカット。
飲むと香り通りの華やかさ、スミレ、蜂蜜、ライム、柑橘感。
 
白州ピーテッド
香りは発酵層の乳酸の香り、華やかな樽香、バニラ、奥からほのかにピーティ。
飲むと粘性を感じ、バニラ、蜂蜜掛けのアイスクリーム、ほろ苦いウッディネス、ピート、スパイシー、余韻長く、オーキー。
 
 
白州NA
若々しい麦感、ハニートースト、バニラ、スウィーティ。
飲むと軽やかで粘性があり、ライム、オレンジ、少し粉っぽさ、僅かなピーティ、余韻は程よくピーティ。
 
風邪で鼻水が出まくっているところを無理やり薬で止めてテイスティングしている辺りかなり怪しいですが、ホワイトオーク原酒は中々華やかなモルトで美味しかったです。
ハイボールテイスティングもしましたが、氷が溶けやすくてあんまり上手く作れませんでした。ミントと炭酸水の組合せでもかなり美味しくイケるので、最終的にミント炭酸水でさっぱりとして、ツアーを終えたのでした。

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大きい蒸溜所はさすがの見学ルートの出来で、素晴らしいですね。楽しい見学となりました!強いて言うならば、英語だけなんとかしてくれれば…とは思いました。

白州蒸留所に行ってきました。試飲編

今週末は風邪を引いてしまいダウンしていました…。幸いインフルエンザではなかったので、気合いでなおす(薬漬け)ことにして、最低限の予定は参加することにしました。

今回の連休中に行く予定だった、白州蒸溜所。こんなコンディションですが、楽しく参加出来ました。

蒸留所レポートは後日記入することとして、今回は色々試飲してきましたので簡単にまとめてみます。

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他にも、同行したグループの方から5-6種類少しおすそ分け頂きました。

 

あんまりしっかりとテイスティング出来てませんが、簡単に書き留めたのをまとめておきます。

 
1.山崎パンチョン
香りはビスケット、蜂蜜、オレンジオイルなど。飲むとオーキーでスパイシー、太い麦感、スパイシー。
昔のパンチョンよりも熟成感があんまり感じられなくなった印象。素朴な原酒と言った印象でした。
 
2.山崎ミズナラ
オイリー、クラッカーとバター、シトラス、和室のような木香
飲むとハニーシロップ、きれいな麦のコク、少し草っぽさ
そんなに強い木香すらないですが、ミズナラは美味しいですね。
バタークラッカー(同行した方はできたてのポップコーンと表現していました)のような穀物感が美味しい、いいモルトでした。
 
3.山崎シェリー
香り、ナッツ、レーズン、スパニッシュオークのスパイス感、みたらし、魚油。
飲むとレーズン、オーキーでオイル、アーモンドオイル、レッドキャベツ
ヤマザキのシェリーはオイリー感が強いんですが、少しアクが強いというか野暮ったさ、DHAEPAのような魚油のようなニュアンスがあるのが独特でした。白州と山崎で同じような樽を使ってるはずなのに、これだけ味が違うのが印象的でした。
 
4.白州25年
テイスティング書いてませんが、内陸ピート感に始まる複雑さが良いボトルでした。個人的には80年台のハイランドパークを連想してしまうんですよね。
 
5.白州シェリー
これは美味しいです。スパニッシュオークなんですが、あんまりネガティブなニュアンスがないのが素晴らしいボトルだと思います。

他にも、山崎25年(ちょっとシェリー感が減った?)や山崎18年、白州18年、ボウモア25年(しっかりとしたトロピカルで美味しいのにパフュームが…)などをいただきました。久しぶりに飲みましたが、楽しく美味しく戴けました。今回飲んでないですが、響ミズナラと白州シェリーは一飲の価値あり、と思います。

戸河内 18年 ブレンデッドウイスキー

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評価:A

香りはバタービスケット、オレンジ、蜂蜜、ほんのりとしたピート、僅かに焦げた木のニュアンス。
飲むとグレーンのさらっとした甘味が主体だが、麦のコク、クリーム、バニラ、ピートなどのニュアンスがあり、飲みやすくも飲み応えがある。余韻はビターでウッディ。
 
中国醸造が2014年あたりにリリースした、戸河内18年です。
元々はみりんや焼酎を作っている会社のようですが、岡山県北部の戸河内にある、線路のトンネル跡を保管用に改装し、そこで18年寝かせたウイスキーとしてリリースしたようです。リリース時の情報を見ると、中身は8年もののスコッチモルトと、4年物のカナディアングレーンとのことで、実際には22年もの、モルトに至っては恐らく1988年前後の原酒ということになりそうです。実際どんな樽熟成をしているのか謎ですが、本家ページを見る限りでは、きちんと樽で熟成されていますし、そこそこの原酒を使っているよう思えます。出処はおそらくOEMなどでつながりがあったレッドライオン社でしょうが、レッドライオンも蒸溜所を持っているわけではないので、そのまま商社経由でバルクを引っ張ってきたのかもしれません。なにせ90年代の話ですし、今とはだいぶ勝手が違いそうです。
 
さて、実際飲んでみましたが、香り立ちは結構良いですし、決して悪いものではないです。ちょっとピーティーでもありますが気にならない程度で、バタービスケットのような麦感を感じる、内陸系のモルトを想わせる香味です。ただちょっとグレーン感が強い印象があり、勝手な推察ですが、20%台でしかモルトが入ってないんじゃ…と思わせるようなグレーン感でした。実際に飲んでわかるかというと悩むところなんですが、何れにしてもグレーン感が強く、ごくごくいけますが正直物足りないなあと言うのが正直なところで… 
ただ所謂ジャパニーズウイスキーブームに乗っかった商品というよりは、少なくともこの時点ではいい状態で出荷するという意図があったようにも思えますし、当時の定価6000円という価格設定が妥当かどうかは置いといて(駒ケ岳10年が5000円台で買えた時期ですし、余市/宮城峡などもまだまだ買えた時期でした)、当時海外モルトを詰めていた日本の会社の中では、かなり良い出来の方ではないでしょうか。
色々連々と書きましたが、このボトルのメリットをいうならば話のネタにしやすいなあと言いますか、出所不明で飲んでみたら中々イケるという不思議なボトル、言ってしまえばブログネタにしやすそうなボトルでした笑
 

ブナハーブン 1969 40年 ダンカンテイラー ロナック

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評価:A++
香りはパイナップル、マンゴー、洋梨などのトロピカル。奥にウッディ、バニラと軽い溶剤、樹脂。
飲むとパッションフルーツ、パイナップルなどのトロピカル感に、広葉樹のような木のニュアンス、木のえぐみがある。余韻は長く、程よいウッディネス。えぐみは時間経過で抜けていく。

 

ダンカンテイラーのロナックシリーズより、ブナハーブンの長期熟成、1969年の40年ものです。

ダンカン・テイラー社は1938年、ビジネスマンのアベ・ロッセンベルグにより、アメリカ合衆国で設立されたボトラーズで、1960年代の初頭から、スコットランド全域の数多くの蒸留所のニューフィリングの樽を購入しました。アベの死去、ダンカン・テイラー社は慈善団体の監督下に置かれましたが、2000年にハントリーの現在の会社に買収されました。そのような理由で、沢山の60年代原酒のストックがあり、ピアレスコレクションや、レアレスト・レアといった多くの伝説的なボトルをリリースしていたボトラーズです。

これはロナックシリーズで、長期熟成を安価な価格で!というコンセプトで出されたリリースのようですが、リリースが40度手前のものが多いことを考えると、これ以上熟成するとウイスキーとして売れないものを詰めたのではないかと個人的には考えています。それ故、確かに過熟気味なものも多い印象を受けます。今回このサンプルをいただく際に、過熟っぽさがある気がするが、どうか?という話を頂き、それも兼ねて飲んでみることとしました。

 

フレーバーからは、確かに樹脂や溶剤のような過熟のニュアンスがありますが、60年代ブナハーブンらしい、かなりしっかりしたトロピカルがあります。飲んでみると、結構なエグみも見られましたが、概ね香り通りのトロピカル感を感じることが出来ます。美味しいといえば美味しい、ただエグいという印象ですが、時間経過でエグみが多少飛びますので、ゆっくりと家で飲むのには適したボトルなのかな、といった気がします。

過熟っぽさは過熟っぽさであるのですが、最近の若々しいボトルがどんどんリリースされているこのご時世、こういうボトルを飲むだけで美味しく感じてしまう気はします。昔はさして注目されなかったのかもしれませんが、今となっては良いボトルです。

ベンネヴィス 1966 44年 キングスバリー 40.7%

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評価:S-S+
香りはフルーティーでエステリー、過熟なプラム、アプリコット、桃やリンゴのジャム、高級家具、バニラ、少し漢方薬のような香り。
飲むと軽やかだが芳醇で、香り通りのフルーティーさ、プラムやアプリコット、チェリーなどのコンポート、白ワイン、パイナップルやパッションフルーツなどのトロピカル感、フィニッシュは非常に長く、果実感と僅かな樽香、わずかな粉っぽさが続く。
 
キングスバリーより、ベン・ネヴィス1966、44年熟成のボトルです。
1825年に、ロング・ジョンの相性で親しまれた、ジョン・マクドナルドが27歳のときにインバネスフォート・ウィリアム地区設立した蒸留所がベン・ネヴィスで、McDonald家によって経営されていました。複数の日本の書籍では、ベン・ネヴィスの項に1920年代にシーガーエヴァンスに売却される、といった記載がありますが、海外書籍にはそういった記載はなく、実際には売却されたのはLong Johnの名前のみで、ベン・ネヴィスは1941年までMcDonald家の所有だったようです。
 
1825 John McDonaldにより設立
ジョン・マクドナルドの死後はDonald Peter McDonaldによる家族経営。
1891 Peter McDonald死去
1908 蒸留停止
1920s Long Johnの売却
1941 Joseph Bobbsが2万ポンドで買収
1955 蒸留再開
(中略)
 
現在はニッカウヰスキーが買収している蒸留所で、ベン・ネヴィス10年のみが日本では正規輸入となっています。
 
さて、前置きが長くなってしまいましたが、このボトルはキングスバリーの66年のベンネヴィスです。44年というとんでもない熟成期間ですが、飲むと重厚なフルーツ感があり、うっとりしてしまうレベルです。樽の影響が流石に多いですが、嫌みなく仕上がっており、また良い感じに度数が落ちていることもあり、フルーツ感満載のとても美味しいボトルでした。恐らくシェリー系の樽熟成かと思われますが、嫌な要素がほぼ無くここまで仕上がったのは素晴らしいボトルですね。本当に良いものを飲ませていただきました!

ラガラガヴーリン ディスティラーズ・エディション ペドロ・ヒメネス ダブルマチュアード 1991-2008 lgv. 4/496

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評価:S
香りはアプリコットジャム、プラム、紅茶、魚介だし、香ばしい麦や豆、しっかりしたヨードとピート。
飲むと口当たりは粘性があり、フルーツやヨードを感じさせる。香り通りのアプリコットやプラムのジャム、きなこ餅と餡蜜、焼き目を付けたクラッカー、コクのある魚介だし、しっかりとしたピートやヨード、全体的にまとまっており嫌みなく仕上がっているが、奥深さもある。

1991ビンテージのラガヴーリン、ダブルマチュアードです。
ポートエレンの東側にあるラガヴーリン。湿地帯には10以上の密造所があったようですが、ジョン・ジョンストンが1816年にそれらを集め、認可事業としたのが1816年、昨年バイセンテナリーだったことは記憶に新しいところです。

昨年のバイセンテナリーでは、ラガヴーリン25年や、1991のTWE向けチャリティーボトルが物凄い高い評判で、実際25年はものすごく美味しいものでした。もしかすると1991のラガは当たりなのかもしれないと思っていまして、偶々日帰り途中に寄った酒屋で、同じ1991ビンテージのこのボトルを見つけ、そこそこ妥当な価格だったのでお持ち帰りしたのでした。

飲んでみると、アプリコットジャムやプラムといったフルーツ感に、香ばしい麦や豆のニュアンス、魚介ダシっぽい香りに芳醇なピートがあり、飲んでもフルーツやヨード感、クラッカーや餡蜜といった芳醇な甘味とコクが広がり、かなりの粘性をもったボトルで、一つ飛び抜けた美味しさのボトルでした。

 このボトル、過去には飲んだことはないのですが、ネット上ではかなりピーティーと表現されていて、自分の飲んだ感じとはちょっと感覚が異なりました。考えたらボトリングから10年弱経過していますし、経年変化の妙なのかもしれません。美味しいボトルだったことは変わりありません、何度も飲みたくなるような、買ってよかったボトルでした。