ウイスキーラヴァーの日常

シングルモルト、ウイスキー好きのサラリーマンが、ウイスキーを通じて感じたこと、思ったこと、考えたことなどを綴るブログです。

戸河内 18年 ブレンデッドウイスキー

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評価:A

香りはバタービスケット、オレンジ、蜂蜜、ほんのりとしたピート、僅かに焦げた木のニュアンス。
飲むとグレーンのさらっとした甘味が主体だが、麦のコク、クリーム、バニラ、ピートなどのニュアンスがあり、飲みやすくも飲み応えがある。余韻はビターでウッディ。
 
中国醸造が2014年あたりにリリースした、戸河内18年です。
元々はみりんや焼酎を作っている会社のようですが、岡山県北部の戸河内にある、線路のトンネル跡を保管用に改装し、そこで18年寝かせたウイスキーとしてリリースしたようです。リリース時の情報を見ると、中身は8年もののスコッチモルトと、4年物のカナディアングレーンとのことで、実際には22年もの、モルトに至っては恐らく1988年前後の原酒ということになりそうです。実際どんな樽熟成をしているのか謎ですが、本家ページを見る限りでは、きちんと樽で熟成されていますし、そこそこの原酒を使っているよう思えます。出処はおそらくOEMなどでつながりがあったレッドライオン社でしょうが、レッドライオンも蒸溜所を持っているわけではないので、そのまま商社経由でバルクを引っ張ってきたのかもしれません。なにせ90年代の話ですし、今とはだいぶ勝手が違いそうです。
 
さて、実際飲んでみましたが、香り立ちは結構良いですし、決して悪いものではないです。ちょっとピーティーでもありますが気にならない程度で、バタービスケットのような麦感を感じる、内陸系のモルトを想わせる香味です。ただちょっとグレーン感が強い印象があり、勝手な推察ですが、20%台でしかモルトが入ってないんじゃ…と思わせるようなグレーン感でした。実際に飲んでわかるかというと悩むところなんですが、何れにしてもグレーン感が強く、ごくごくいけますが正直物足りないなあと言うのが正直なところで… 
ただ所謂ジャパニーズウイスキーブームに乗っかった商品というよりは、少なくともこの時点ではいい状態で出荷するという意図があったようにも思えますし、当時の定価6000円という価格設定が妥当かどうかは置いといて(駒ケ岳10年が5000円台で買えた時期ですし、余市/宮城峡などもまだまだ買えた時期でした)、当時海外モルトを詰めていた日本の会社の中では、かなり良い出来の方ではないでしょうか。
色々連々と書きましたが、このボトルのメリットをいうならば話のネタにしやすいなあと言いますか、出所不明で飲んでみたら中々イケるという不思議なボトル、言ってしまえばブログネタにしやすそうなボトルでした笑
 

ブナハーブン 1969 40年 ダンカンテイラー ロナック

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評価:A++
香りはパイナップル、マンゴー、洋梨などのトロピカル。奥にウッディ、バニラと軽い溶剤、樹脂。
飲むとパッションフルーツ、パイナップルなどのトロピカル感に、広葉樹のような木のニュアンス、木のえぐみがある。余韻は長く、程よいウッディネス。えぐみは時間経過で抜けていく。

 

ダンカンテイラーのロナックシリーズより、ブナハーブンの長期熟成、1969年の40年ものです。

ダンカン・テイラー社は1938年、ビジネスマンのアベ・ロッセンベルグにより、アメリカ合衆国で設立されたボトラーズで、1960年代の初頭から、スコットランド全域の数多くの蒸留所のニューフィリングの樽を購入しました。アベの死去、ダンカン・テイラー社は慈善団体の監督下に置かれましたが、2000年にハントリーの現在の会社に買収されました。そのような理由で、沢山の60年代原酒のストックがあり、ピアレスコレクションや、レアレスト・レアといった多くの伝説的なボトルをリリースしていたボトラーズです。

これはロナックシリーズで、長期熟成を安価な価格で!というコンセプトで出されたリリースのようですが、リリースが40度手前のものが多いことを考えると、これ以上熟成するとウイスキーとして売れないものを詰めたのではないかと個人的には考えています。それ故、確かに過熟気味なものも多い印象を受けます。今回このサンプルをいただく際に、過熟っぽさがある気がするが、どうか?という話を頂き、それも兼ねて飲んでみることとしました。

 

フレーバーからは、確かに樹脂や溶剤のような過熟のニュアンスがありますが、60年代ブナハーブンらしい、かなりしっかりしたトロピカルがあります。飲んでみると、結構なエグみも見られましたが、概ね香り通りのトロピカル感を感じることが出来ます。美味しいといえば美味しい、ただエグいという印象ですが、時間経過でエグみが多少飛びますので、ゆっくりと家で飲むのには適したボトルなのかな、といった気がします。

過熟っぽさは過熟っぽさであるのですが、最近の若々しいボトルがどんどんリリースされているこのご時世、こういうボトルを飲むだけで美味しく感じてしまう気はします。昔はさして注目されなかったのかもしれませんが、今となっては良いボトルです。

ベンネヴィス 1966 44年 キングスバリー 40.7%

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評価:S-S+
香りはフルーティーでエステリー、過熟なプラム、アプリコット、桃やリンゴのジャム、高級家具、バニラ、少し漢方薬のような香り。
飲むと軽やかだが芳醇で、香り通りのフルーティーさ、プラムやアプリコット、チェリーなどのコンポート、白ワイン、パイナップルやパッションフルーツなどのトロピカル感、フィニッシュは非常に長く、果実感と僅かな樽香、わずかな粉っぽさが続く。
 
キングスバリーより、ベン・ネヴィス1966、44年熟成のボトルです。
1825年に、ロング・ジョンの相性で親しまれた、ジョン・マクドナルドが27歳のときにインバネスフォート・ウィリアム地区設立した蒸留所がベン・ネヴィスで、McDonald家によって経営されていました。複数の日本の書籍では、ベン・ネヴィスの項に1920年代にシーガーエヴァンスに売却される、といった記載がありますが、海外書籍にはそういった記載はなく、実際には売却されたのはLong Johnの名前のみで、ベン・ネヴィスは1941年までMcDonald家の所有だったようです。
 
1825 John McDonaldにより設立
ジョン・マクドナルドの死後はDonald Peter McDonaldによる家族経営。
1891 Peter McDonald死去
1908 蒸留停止
1920s Long Johnの売却
1941 Joseph Bobbsが2万ポンドで買収
1955 蒸留再開
(中略)
 
現在はニッカウヰスキーが買収している蒸留所で、ベン・ネヴィス10年のみが日本では正規輸入となっています。
 
さて、前置きが長くなってしまいましたが、このボトルはキングスバリーの66年のベンネヴィスです。44年というとんでもない熟成期間ですが、飲むと重厚なフルーツ感があり、うっとりしてしまうレベルです。樽の影響が流石に多いですが、嫌みなく仕上がっており、また良い感じに度数が落ちていることもあり、フルーツ感満載のとても美味しいボトルでした。恐らくシェリー系の樽熟成かと思われますが、嫌な要素がほぼ無くここまで仕上がったのは素晴らしいボトルですね。本当に良いものを飲ませていただきました!

ラガラガヴーリン ディスティラーズ・エディション ペドロ・ヒメネス ダブルマチュアード 1991-2008 lgv. 4/496

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評価:S
香りはアプリコットジャム、プラム、紅茶、魚介だし、香ばしい麦や豆、しっかりしたヨードとピート。
飲むと口当たりは粘性があり、フルーツやヨードを感じさせる。香り通りのアプリコットやプラムのジャム、きなこ餅と餡蜜、焼き目を付けたクラッカー、コクのある魚介だし、しっかりとしたピートやヨード、全体的にまとまっており嫌みなく仕上がっているが、奥深さもある。

1991ビンテージのラガヴーリン、ダブルマチュアードです。
ポートエレンの東側にあるラガヴーリン。湿地帯には10以上の密造所があったようですが、ジョン・ジョンストンが1816年にそれらを集め、認可事業としたのが1816年、昨年バイセンテナリーだったことは記憶に新しいところです。

昨年のバイセンテナリーでは、ラガヴーリン25年や、1991のTWE向けチャリティーボトルが物凄い高い評判で、実際25年はものすごく美味しいものでした。もしかすると1991のラガは当たりなのかもしれないと思っていまして、偶々日帰り途中に寄った酒屋で、同じ1991ビンテージのこのボトルを見つけ、そこそこ妥当な価格だったのでお持ち帰りしたのでした。

飲んでみると、アプリコットジャムやプラムといったフルーツ感に、香ばしい麦や豆のニュアンス、魚介ダシっぽい香りに芳醇なピートがあり、飲んでもフルーツやヨード感、クラッカーや餡蜜といった芳醇な甘味とコクが広がり、かなりの粘性をもったボトルで、一つ飛び抜けた美味しさのボトルでした。

 このボトル、過去には飲んだことはないのですが、ネット上ではかなりピーティーと表現されていて、自分の飲んだ感じとはちょっと感覚が異なりました。考えたらボトリングから10年弱経過していますし、経年変化の妙なのかもしれません。美味しいボトルだったことは変わりありません、何度も飲みたくなるような、買ってよかったボトルでした。

ティーリング 1991 23年 ウイスキーマガジン向け 58%


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評価:S
香りはプラム、桃のコンポート、パッションフルーツ、マンゴー、ネーブルオレンジ、シナモン、アメリカンコーヒー
飲むとトロピカルなフレーバーが開き、プラムジ、パイナップル、桃といったトロピカル感に紅茶のニュアンスが混じり、甘味の強いトロピカルティーのよう。フィニッシュは軽く嫌みのない樽感、スパイス。

 

アイリッシュウイスキーマガジン向けのティーリング、1991年蒸留、23年熟成です。
一時期これでもかというくらいにティーリングが乱発した時期がありましたが、その際に出てきたボトルの一つだったと思います。ウイスキーマガジン向けはバレル熟成とホグスヘッド熟成の二つがあったかと記憶してますが、こちらはホグスヘッドになります。

 

このティーリングの中身はブッシュミルズといわれ、88ブッシュミルズと並んで91ブッシュミルズはかなり良いボトルが多い印象です。
いわゆるケミカル感やトロピカル、南国フレーバーを堪能できるボトルが多いですが、このボトルもしっかりとしたトロピカル感があり、またシェリー樽と思われる赤い果実のニュアンスも感じられ、とても美味しいボトルです。元々の原酒の軽さの妙か、はたまた長期熟成の賜物か、度数を気にさせない口当たりの軽さもなかなかのもので、気にせずスイスイ飲めてしまいます。


こんな分かりやすくスイスイ飲めるボトルが家にあったら、ガブガブ飲んでしまうだろうなあ…

 

余市 NA 旧ボトル

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評価:A

香りは若く、乳酸系のフレーバー、しっかりとした麦芽、焦げたピート、少しエステリーでオレンジの皮。
飲むとしっかりとした麦感、食パンの白い部分、少しピーティや塩辛さ。

旧ボトルの余市、NAです。
先日、ふと余市を飲もうと思い立ったときに、開栓している余市がないことに気づき、とりあえず取り出しやすい位置に置いてあったので開けた一本。終売後に見つけたミニボトルで、ドラッグストアーでものすごく格安で売っており、とりあえずで買ってみたボトルでした。
もう何年も飲んでいませんでしたが、昔飲んだ余市はもっとアルコール感の強い余市だった気がしましたが、これは若いなりに結構楽しめる香味で、正直「あれ、こんなに美味しかったっけ」と思えるボトルでした。ニューポッティ感はあるんですが、最近はこういう短熟でニューポッティなリリースも結構多いような気がしますし、価格を考えればかなりすごいコスパだったんだなあと。
勿論そんなに多層的なフレーバーがあるわけでもないのですが、この価格帯でこれほどのレベルをリリースしていた、ニッカの凄さを再認識することとなりました。

 

現在のニッカのラインナップはちょっと寂しいところもあるのが正直なところですが、やはり今までのリリースが異常であって、ここまで良心的な価格でのリリースをしないと、ニッカは生き残れなかったんだろうと推察します。ここまで安くなることは今後しばらくはないでしょうが、この若さでも良い原酒だと再認識できましたし、この調子で原酒が育って、良いリリースがまた出てくると良いなと思いました。

ボウモア ホワイトサンズ 17年 43%

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評価:A+
香りはトロピカルとピート。柿、ビワ、パッションフルーツ、ピート、少し紙っぽさ、焦がした麦。
飲むと口当たりはさらりとしており、パイナップル、桃やチェリーの缶詰、ジューシーさにしっかりとしたスモークとピートが混じる。

ボウモアが2014年ころにリリースした免税店向けボトルから、ホワイトサンズ17年です。
逆算して1997年からそれ以前のリリースが使われていると思われ、トロピカルが主体の90年代中後期のボウモアが使用されているというのは気になるところで、実際中々評判の良かったボトルだったと思います。

久しぶりに飲もうかなーと思いテイスティングしてみましたが、やっぱり結構美味しいです。
ちょっと紙っぽさこそありますが、しっかりと時間を掛けて飲むとトロピカルや黄色い果実感、それとピートがしっかりと混じっており、飲みくちはさながらトロピカルジュースのようで、確かに中々良い出来です。

気軽にこの辺りのリリースを飲みたいときには、このボトルも選択肢になるかもしれませんね。まだ販売しているみたいですし、ご興味のある方は試してみても良いんじゃないかと思います。