ウイスキーラヴァーの日常

シングルモルト、ウイスキー好きのサラリーマンが、ウイスキーを通じて感じたこと、思ったこと、考えたことなどを綴るブログです。

インペリアル 1995 21年 キングスバリー 51.7%

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評価:A+

香りはオレンジ、ライムといった柑橘系、煮詰めたカラメル、ブラウンシュガー、ナッツ、コリアンダー、やや穏やかな麦感。
飲むとオレンジゼリー、バニラ、ココアパウダー、黒糖、麦のコク、強めの樽感でスパイシーな余韻。

 

キングスバリーより最近リリースされた、インペリアル1995年、おおよそ21年熟成です。

インペリアル、という名前ですが、所謂皇室御用達ではなく、ビクトリア女王の在位60周年を記念して付けられた名前のようです。無理やり在位60週年に合わせるため、工期が厳しく、また当時のブーム通りの波に乗ったようで、休止・再開、オーナーが変わるなどが次々と起こり、1925年にはDCL傘下に入り、1985年に閉鎖となります。現在はペルノ・リカールがダルムナック蒸留所を設立、と言うのは何度も紹介した話でした。

 

さて、今回のインペリアルですが、キングスバリーからリリースされ、すぐに輸入元完売となった、結構人気のあったボトルのようです。閉鎖蒸留所で、良リリースも多いインペリアルですし、お値段もお手頃でしたので、バーなどでも扱いやすいのかもしれません。

 飲んでみると、去年~一昨年ボトリングのインペリアルとはちょっと雰囲気が違います。少し樽感が強くなり、柑橘や甘味が前面に出てきている印象です。

スペイサイドの中でも原酒の芯がそこまで太くないインペリアルですし、モルティさと樽感がしっかり載る、熟成のバランスがとれていた時期はもう過ぎてしまったかもしれません。それでもいい出来のインペリアルだと思います。恐らくはこれから先95インペリアルはほぼリリースされなくなるような予感がします。好きな人は買えるうちに買っておくべきかもしれませんね。

Whisky Festival Osaka2017に行ってきました。

6/4、Whisky Festival Osakaに行ってきました。

前日は京都で朝までのむという失態をやらかし、相変わらず本調子ではなかったのですが中々楽しいフェスでした。簡単ですがレビューさせていただきます。

オープンと同時に行ったのは、まずはのジャパンインポートシステムさん。

メルマガ限定でベンロマック35年を飲ませてもらいました。バランスの良く、穏やかな木香が素晴らしい佳酒です。

次はエイコーンさん。新作が出ていましたので、気になるグレンキースを戴きました。スペイサイドの軽いボディらしい、フルーティーな原酒で美味しいキースでした。

フラフラと回ってMHDさん。グレンキンチーの24年を頂きました。これもローランドの長熟らしい、軽めの原酒とやや強めだけど嫌味のない樽感で、原酒の良さがよく分かるリリースだと思います。

 

スコッチモルト販売さん。後日セミナーに行くこともあり、これだけ飲ませていただきましたが、結構美味しいベンリネスでした。

開けたては結構樽の渋みが強いようですが、試飲に貰ったボトルはかなりフルーティーに触れていました。もし買われた方がいたら少し放置がお薦めです。

 

ePowerさんでは秩父IPAとクロフテンギアが推しだったようです。秩父IPAだけですが飲んでみました。秩父のトロピカル感、少し軽めのモルティな部分にしっかりとIPAのホップ感があって面白かったです。いい出来だと思います。

SAKE SHOP SATOさん。時々実店舗に行きますし、手伝いに来ていたwaiter waiterの天野さんのお店にも何度かお邪魔したことがあるのでご挨拶。お二方とも精力的に活動されていらっしゃいます。waiter waiterは店舗移動と分店もあるようですので、また名古屋に行く際はお伺いしたいバーです。

 

サントリーブースでは白州グレーンの有料試飲がありました。これが一番レアかもしれません。以前ご紹介しましたが、白州蒸留所は2013年より試験的にグレーンを作っています。今回はライ麦のグレーン。ライウイスキーはあんまり飲まないですが、ライのニュアンスはしっかりとありつつも、渋みなどの嫌な感じがなく、軽めに抑えており、かなり飲みやすい原酒でした。

malt.hateblo.jp

 

さて、飲み周りも程々に、今回は2連続セミナー。

最初はバカルディデュワーズセミナーです。

デュワーズ12年、アバフェルディ16年、ロイヤル・ブラックラ、クライゲラキ23年、そしてアバフェルディの1999年シングルカスクを戴きました。

アバフェルディは圧巻の美味しさですね。素晴らしいシェリーカスクです。

その後知り合いの方々やバーテンダーさんともお会いしながら、色々回ってました。

セミナー2つ目は秩父の吉川さん。某有名バーテンダーさんや某蒸留所所長の方もいらっしゃいました。トークは面白かったですし、イノベーションという視点のお話もあり、中々考えさせられる話でした。

その他にもガイアフローブースにはグラックアダー、アスタモリスのロビン・バートが来日、新作を戴きました。ベンリネス2006ですね。

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富士山麓はSignature Blendが飲めました。嫌味のないバランスの良いブレンドでいいですねこれ。グレーンののぺっとした感じがちょっと気になりますが、美味しいです。

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秩父カスクはまた異なるIPAでした。秩父再訪の際にまた聴いてみようと思いますが、IPAカスクも色んな所から入ってきているようです。

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そんなこんなで、ここ以外にも色んな所を回ってきました。そういえば記念ボトルは買わなかったですが、どうだったんでしょうか?

その後に行ったバーでも大御所の方がいらっしゃって話が出来たりと、色々と実りあるフェスでした。今後の活動に活かしていきたいと思います。絡んでくれた皆様、ありがとうございました!

グレンカダム 1973-2013 39年 ウイスキーエージェンシー パーフェクトドラム 44.1%

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評価:S

香りは長熟エステリーの香り、メロン、梨、白い花、アプリコット、オレンジキャンディー。
飲むと洋梨、キウイフルーツ、コクのある染み入る麦の甘み、ポッピングキャンディー、クリーミー、余韻はスパイシーでややしっかり目の樽感。

 

東ハイランドはグレンカダム蒸留所より、1973年蒸留、39年熟成、数年前にリリースされたエージェンシーのパーフェクトドラム、らしい長熟のスペックです。


アンガス地方の中心地、ブレチン地区にあるグレンカダム蒸留所、昔はノースポート蒸留所が存在していましたが、現在は閉鎖されています(ブレチンという名前でボトラーズからリリースされていたこともありました)。
グレンカダム蒸留所は1825年に創業されたとされますが、諸説ありここでは省略します。所有者は次々と代わり、1893年にギルモア・トムソン・カンパニーに売却され、glencadam distillery ltd.が創立されました。
1954年にはスキャパ・プルトニーと共にカナダのハイラム・ウォーカー社が買収し、1959年には改修工事が行われています。その後、アライド・ドメック社の所有となり、蒸留休止をしていましたが、2003年にはアンガス・ダンディー社が買収し、2007年にはブレンド施設を増設しています。2016年1月にはブレチン地区の洪水により、熟成樽には影響は出なかったものの電気系統のトラブルで一時休止に見舞われていました。
実際の酒質は、大地のクリームと称されるほどクリーミーで、バランタインの七つの大柱、キーモルトとしても有名です。

 

さて、このグレンカダムですが、らしい長熟エステリー香が漂い、メロンや梨、アプリコットキウイフルーツなどといった多彩なフルーツ香や、キャンディ系の甘い香味があり、また程良い麦感や樽感も嫌みなく感じられ、複雑さに寄与している印象で、さすがと言わんばかりの素晴らしいモルトでした。ややオールドっぽいニュアンスもあり、十分な陶酔感もあります。
個人的にグレンカダムは思い入れのあるウイスキーで、あんまりモルトを知らなかった頃に、G&Mのコニサーズチョイスの美味しさとコスパの良さに、何本か買った思い出があります。70年代のかダムは久しぶりに飲みましたが、素晴らしい出来のモルトでした。またどこかで出会えればいいなあと…

クライゲラキ 1990 26年 ベリーズベスト for GINZA ZENITH 10th anniversary 48.4%

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評価:S
香りはエステリーでオイリー、白桃、メロン、フルーツトマト、華やかな麦感、バニラ、コンデンスミルク、ワクシー、濃厚なバター、少し土っぽさ。
飲むとオイリーでエステリー、メロン、華やかで染み入るような麦の甘味と深いコク、非常になめらかな口当たり、フルーツピンチョス、生クリーム、少し余韻はスパイシーで長い。

 

最近リリースされました、銀座にあるバー・ゼニスさん向けのクライゲラキです。

1891年、当時ホワイトホース社のPeter Mackieが、ベンリネスやオルトモアのオーナーであった、Alexander Edwardととこも設立したのがクライゲラキです。Peter Macikeのおじはラガヴーリンのオーナーで、一族で当時のホワイトホースの構成原酒を確保できていたといえるでしょう。実際の稼働は1898年からで、デザイナーにはチャールズ・ドイグを迎えています。

その後1900年代に、Peter MackieMackie & Companyとしてホワイトホースを相続し、ホワイトホースを牽引していったのですが、どうやらクライゲラキはお気に入りの蒸留所だったようで、年次総会はクライゲラキで行われていたようです。後にナイトの称号を授与されます。

 1924年、Sir Peter Mackieの死後、社名をホワイトホース・ディスティラーとし、1927年にはDCLに買収されます。64-65年にはDCLにより拡張工事がなされ、2基のポットスチルが増設され、当時のカリラのような、所謂"Waterloo Street" designとなっています。

1998年、UDV社はクライゲラキなどの3つの蒸留所ををバカルディ社に売却、現在に至ります。長らくはブレンデッド向けへの出荷が多かったようですが、バカルディ社の方針転換もあり、2014年にはオフィシャルのニューリリースが行われ、13年・17年・23年が販売されています。

 

さて、今回のボトルですが、銀座のバー・ゼニスさんの10周年向けに詰められたボトルです。丁度少し前に発売された、ウイスキーファインドのクライゲラキ1990がかなりの高評価だったため、比較評価されているケースが多かった印象です。今回はBBRからのリリースでありますが、コーヒーミルラベルというレアなラベルでのリリースで、これだけでも中身の素晴らしさを彷彿とさせてくれます。今回やっと飲む機会に恵まれましたので、テイスティングしてみました。

メロンや桃のようなエステリーさやワクシーなニュアンスがかなりあり、高級脂肪酸などが豊富に含まれているのだろうと推察します。違う方がロックで飲んでいるのを見ましたが、白濁していましたね(自分はもったいなくて出来ませんでした…)。勿論スペイサイドらしい素朴な麦感も感じられ、複雑さ・陶酔感を覚える味です。元々クライゲラキはオフィシャル17年など、好きなボトラーズですが、これは格が違う、非常に滑らかで非常に美味しいゲラキでした。

ゼニスさん、お伺い出来ていませんが、周りの評判も良く、一度行ってみたいバーです。また、6/4にはウイスキーフェスでバカルディのセミナーがありますね。大変楽しみです。

ベンネヴィス 1966 39年 ハートブラザーズ 40.2%

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評価:A++
香りはエステリーでオイリー。アプリコットやプラムのジャム、アップルやパイナップルのシャーベット、グァバ、白ワイン、うっすらとしたモルティさと少し紙っぽいニュアンス、機械油のようなオイリーさ。
飲むとドライベルモットアプリコット、紅茶や焙じ茶、ミネラル、ベイリーフローズマリーなどのグラッシーさの強いスパイス、ややべったりしたオイリー、余韻はかなりスパイシー。

 

1966年蒸留のベン・ネヴィス、39年熟成のウイスキーです。

ベン・ネヴィスは、1825年にLong Johnで有名なJohn McDonaldにより設立され、以後Donald Peter McDonaldによる家族経営をされていましたが、1908年に蒸留停止となっています。1920年代にLong Johnブランドの売却を行い、1941年にはJoseph Bobbsが2万ポンドで買収し、1955 蒸留再開となっています。連続式蒸留機の導入なども行っていましたが、1978年に蒸留停止、81年にはウィットブレッド社(後のアライドグループ)が買収しますが、数年で再度蒸留停止(文献により諸説あります)、1989年にニッカウヰスキーが買収し、設備投資を行った上で1990年から蒸留再開となり、現在に至ります。

ニッカが設備を入れ替える際、ニッカの持っていないオレゴンパイン製のウォッシュバックを作るなど、今後の原酒の使い方にバリエーションをもたせるような作りにしているようですね。実際、生産量の半分程はニューポットの時点で日本に輸入されているユで、同社にとっていかに重要な蒸留所であるかが垣間見えます。   

実際にも休止前とニッカ買収後ではかなり香味の触れが違うように思います。近年ですと96ビンテージが有名ですね。 

 

さて、このボトルですが、休止前の貴重な60年代の原酒を頂く機会に恵まれました。自分の飲んだことのある60年代のベン・ネヴィスは、草や漢方薬、紙っぽさが目立つ、ちょっと独特な香味という印象を持っているのですが、これもこの系統かなと思います。一方で酒質の線の細さやアルコール度数の節度、フルーティーさやトロピカルといった、ポジティブなニュアンスもしっかりとしています。どうやら何年か置いて落ち着いたところでのサンプルを詰めたようで、昔はもっとスパイシーだったとか…。元々度数がかなり落ちてますが、さらにスパイシーさが落ち、まとまってきています。
最近のリリースで言うと82ミルトンダフにもつながるような焙じ茶やミネラルのようなニュアンスがあり、またそれなりの草っぽさも強いのですが、自分はこれぐらいなら割と飲めてしまいます。この時期のような、初夏の暑い日に一杯だけ飲むのには良いお酒かもしれません。

ヘーゼルバーン 2003-2017 13年 オロロソ・カスク・マチュアード 47.1%

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評価:A+

香りはプラム、メロン、柔らかいシェリーの甘み、しっかりとした麦感、岩牡蠣のようなミルキーやブリニー。
飲むとしっかりとしたコクの有る麦感、プラム、オレンジ、炙った貝、ドライオロロソ、バニラ、少しピーティ、スパイシーで余韻は短め。

 

スプリングバンクのブランド、ヘーゼルバーンより、2003年~2017年の13年熟成、オロロソカスクのバッティングです。

元々ヘーゼルバーンとはキャンベルタウンにあった、最大規模を誇っていた蒸留所ですが、1925年に禁酒法の煽りを受け閉鎖、竹鶴政孝が研修していたことでも有名と思います。現在は殆ど生産棟は壊されているようですが、スプリングバンクのブランドで、ノンピート3回蒸留のものをヘーゼルバーンというブランドで販売しています。

飲んでみると今時のシェリー香もそうですが、バンクらしい強めの磯っぽさを感じ、まるで岩牡蠣のような印象を受けました。バンク好きなら楽しめると思いますし、今後の変化も楽しみにしたいですね。

グレンアラヒー 1972 38年 ダグラスレイン Old Malt Cask スペシャル・カスク・ストレングス for JIS 55.8%

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Glenallachie 1972 Old Malt Cask "Big Stamp" Special Cask strength Refill Butt
for Japan Import System

評価:S
香りはオレンジ、パッションフルーツ、パイナップル、麦のコク、ライム、カイエンペッパー。
飲むと香り通りのトロピカル感、しっかりめの麦のコク、オレンジオイル、ややオーキーだが嫌みにならない程度、バニラ、クローブなどのスパイス。

 

分社前のダグラスレイン、ビックスタンプシリーズより、グレンアラヒー1972 38年蒸留です。

スペイ川中流域に位置する、クライゲラキ近くにあり、近くにアベラワーやベンリネス山を迎える立地です。創業は1967年と新しく、ちょうど今年で50年になります。英国のビール会社スコティッシュニューカッスル社による運営で、設計は近代蒸留所の設計で有名な、ウィリアム・デルム・エヴァンスのよるものです。タリバーディン蒸溜所(1948年)、アイルオブジュラ蒸溜所(1960年)なども彼の手による設計で、シンプルでコンパクトで、蒸留所っぽくないといえばない作りが特徴的です。その後1985年にインバーゴートンに買収、87年に操業停止、89年にペルノ・リカールによって買収され、操業再開といった流れです。ポットスチルがストレート・ランタン型の2種類あるのも特徴的と言えそうですね。ブレンド用が多いようで、あまりニューリリースは見られていませんが、2012年には拡張工事を行い、生産量が1.3倍程度になったようで、精力的に生産しているようですね。

ダグラスレインは1948年創業の、元々ブレンデッドウイスキーを製造していた業者ですが、1998年にOld Malt Caskシリーズを発売、来年には20周年になります。アルコール度数を50%に統一するのが特徴的ですが、当時は特別にカスクストレングスで詰めたものを“Special Cask Strength”というスタンプを印字しリリースしており、通称ビックスタンプと呼ばれていました。このビックスタンプシリーズは高評価のボトルが多い印象です。

2013年にダグラスレインは創業者の兄弟で2つに分社され、そのときに保有されていた樽も2つに分かれたようです。旧社名を引き継いだダグラスレインはオールド・パティキュラーシリーズとして、新しいハンターレイン社は主要シリーズであるOld Malt Caskシリーズを引き継ぐ形で、現在も精力的にリリースを行っています。両社とも日本のインポーター、Japan Import Systemとの繋がりが深いようで、日本向けにオリジナルのカスクストレングスでのリリースを精力的に行っています(for JISと表記されていることがおおいです)。

 

さて、このグレンアラヒーですが、スペイサイドのナチュラルな熟成感のある甘味が感じられるのかなあーと想像して飲んでみましたが、意外にもカイエンペッパーやクローブといった、少し突き刺さるようなスパイス感があり、そこにジューシーなトロピカル感が見られるような構成で、面白い香味でした。もしかすると、発売当時はかなりスパイシーだったのかもしれませんね。麦やスパイスの香味が複雑さに寄与している印象があり、とても美味しいボトルでした。