ウイスキーラヴァーの日常

シングルモルト、ウイスキー好きのサラリーマンが、ウイスキーを通じて感じたこと、思ったこと、考えたことなどを綴るブログです。

【再テイスティング】ボウモア 1998-2014 16年 ハンターレイン Old Malt Cask 57.5%

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評価:A++
香りはまだ荒々しさが残るがまとまってきており、ピート、炙った貝殻、搾りたてのオレンジジュース、ビワ、軽く樽香、バニラ。 
飲むとフルーティーで、香り通りのオレンジ、繊維質の強いやや早熟のビワ、軽くパッションフルーツジュース、突き抜けるピート、潮気、余韻に軽いウッデイネス、粉っぽさ。加水でトロピカル感は増すが、余韻の少し残る樽感も目立つようになる。
 
ハンターレインよりJIS向けのOMC、18年熟成のカスクストレングスのタイプです。
以前にも記事にしたことがありますが、改めて飲んでみました。
 
ボウモアアイラ島の西岸、ボウモア町に設立された蒸溜所で、今更ここでうんちくを語るのもアレですが、一応まとめておきます。
ボウモアは1779年設立で、アイラでは一番古い蒸留所と言われていますが、実際には10年ほど前には稼働していたのではないか、という話もあるようですね。
 
オーナーは何度か変わっており、1963年にはモリソン家が購入し、有名なモリソンボウモアの時代となります。83年にはコンデンサーの冷却の熱を利用するコジェネレーションシステムを作るなど、近代化の一途を辿りましたが、これがあの忌まわしきパフュームの原因の一つとも言われていますね。現在はサントリーが所有しています。
 
現在、フロアモルティングが40%ほど行われていると言われますが、90年代後半はそのせいかフルーティーな原酒が多いイメージです。
伝説の93年などの90年代前半の流通のものとは異なりますが、らしいトロピカル感やフルーツ感が出るボトルもある印象です。
 
最初に飲んだときはミカンのような柑橘感が強かったのですが、今はトロピカルさや複雑さが増してきたような印象です。自分の感じ方も変わったのかもしれません。
加水でもっとトロピカル感が出てきており、これから、どう変化していくのか楽しみです。
 

イチローズモルト秩父 single cask PX For MMWM 2014


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評価:A+ 

香り プラム、チェリーブランデー、キャラメル、レーズンバター、ドイツパン。
飲むとフルーツとスパイスが混ざり合う。レーズン、ジンジャー、りんごのコンポート。余韻はスパイシーでオーキー。

 

イチローモルト秩父より、2014年のモダンモルト向けのボトルです。

2010年蒸留、2013年に2nd caskの表記があるので、ダブルマチュアードまたはカスクフィニッシュ的な位置付けかと思いますが、記載には PX SHERRY spanish Oak Hogsheadとなっており、2nd caskの詳細は不明です。

 

プラムやチェリーブランデーのような香りや、ちょっとスパイスを感じる果実感はまさにスパニッシュオークでペドロヒメネスの甘味が混じり合った結果なんだろうと思いますが、3年熟成という熟成の短さが影響しているのか、そこまで嫌味に感じられず、若さもそんなに感じないところまで熟成しており、良いところてまボトリングしたのかなと思います。

2010年蒸留ころから、秩父はフルーティーが目立つようになってきて、原酒も洗練されているように思います。これからのリリースにも期待ですね。

 

シグナトリー ビンテージハイランドモルト ピュアシングルハイランドモルト 40% 90年代流通?

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評価:A
香りは甘く華やかで、メイプルシロップ、バニラエッセンス、クローブなどの香草、広葉樹や落ち葉。
飲むとライムソーダ、素朴で軽い麦の甘味、プロヴァンスのようなスパイス、余韻はやや強めのアルコール感とウッディネス。
 
シグナトリーよりリリースされていた、ピュアシングルハイランドモルトです。熟成年数、蒸溜所の中身、流通時期、全くわかりませんが、手に入れた酒屋さんの話を合わせると90年代流通っぽいです。裏がないのでわかりませんが、新しくても2000年初頭のリリースではないでしょうか。価格も数千円と、酒屋でふらっと見つけて安い価格だったので、試しに買ってみた格好です。だれか情報を持っている方がいらっしゃいましたら、教えて戴けると幸いです。
 
シグナトリーはエドリントン兄弟が1988年に設立した比較的新し目のボトラーですが、今では4大ボトラーの一つに数えられているほどのストックを持っており、正直当たりハズレは多いですが、安価にビンテージものが購入できたりと、時々当たりを引くと強烈なコスパに返信するようなボトルの印象です。ウイスキーフープやLMDW、最近ですとベルギーのネクターの10周年記念にシグナトリーボトルが何本もリリースされており、そのストックの多さを見せつけられます。
 
 
さて、実際のモルトですが、だいぶ経年変化でこなれて来たのか、甘く華やかで素朴なメイプルシロップやバニラエッセンスのニュアンス、後から広葉樹などの、遊歩道のような草木のニュアンスを感じます。
飲んでみるとシトラス感があり軽いのですが、余韻はウッディ感やスパイス感が強く、軽い酒質が災いして樽の渋みが目立ってしまいます。
恐らくソーダ割りなんかにすると飲みやすいんでしょうけど…
嫌味は少ないので、美味しいには美味しいです。スターターに少し飲むには悪くないかな、と思うようなボトルでした。

ブナハーブン 18年 OB 46.3%

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評価:A++
香りはややわざとらしいチェリー、キャラメルマキアート、ナッツのシロップ、シナモン、じっくり煮詰めたアップル、プルーン、梅の塩漬け。
飲むとリッチでフルーティー。ココアパウダー、レーズンやプルーン、しっかりとコクのある麦感、ブリニー、余韻は塩気やビターチョコレート。
 
ブナハーブンのオフィシャル、18年です。
ブナハーブンの歴史については前回の記事を参照いただくとして、現行の蒸留内訳についてまとめていきます。
基本的にブナハーブンはアイラ唯一のライトピーテッドと言われるのは有名なところかと思いますが、実際の数値で言うと2-3ppmとかなりピートの少ないボトルになっています。80年代後半~90年代前半にも時々ミディアムピーテッドのボトルなどが見られることもありますが、その生産量はかなり少ないと思われます。本格的にピーテッドタイプが出てくるようになったのは1997年蒸留のもので、35-40ppmのヘビーピーテッドタイプを試験的に蒸留し始め、2004年に6年物をmoine(モンニャ、モーニャ;ゲール語でピートの意)としてアイラフェスで発売した経緯があります。
2003年以降は毎年ピーテッドタイプを作っており、全体の10%程度を占めるようですね。ブナハーブンというとシェリーなイメージですが、実際はシェリー樽は10%程で、90%はバーボン樽と、意外にも少なく思えます。
 
さて、このブナハーブン18年ですが、他のOBよりもシェリー樽比率が高いのが特徴と言えそうです。40%程がシェリー樽、60%がバーボン樽という贅沢な比率でブレンディングされている通り、香りからはシェリー感が漂います。
開けてすぐはチグハグな香りでしたので、1ヶ月ほど待ってやや一体感が出てきたところでテイスティングしてみましたが、ドクターペッパーやチェリーコーラのようなややわざとらしいチェリー感や、キャラメル飲料のような甘味とコク、甘味やオイルをしっかりとまとったナッツやシナモンパウダーなどの香味が広がり、オフィシャルのシェリーのブナっぽい作りの味です。ボトラーズではシングルカスクが多く、こういう香味はあんまり出てこないので、ヴァッティングの妙なのでしょう。
飲んでもフルーティーさと甘味がしっかりと感じられ、潮っぽさを感じながらも一体感があり、中々完成度の高いボトルに仕上がっています。ブナ好きなら飲んでおきたい一本と思います。
 
このボトルについて最後に2つほど。これに限らずなんですが、バーン・スチュワート社の発売するオフィシャルは46.3%にこだわっており、カスクストレングスなどの数値ではなく、調整でこの度数にしているということ。
上のテイスティング写真では度数が見えませんでしたので、下にも貼り付けておきます。
また、ブナハーブンは正規取扱がアサヒですが、18年に関しては正規輸入品がなく、並行輸入品しかないところも残念なところです。自分の住んでいる片田舎ではブナハーブン12年すら売っている酒屋がありません。あまりにも悲しい現実ですが、ブナ好きとして普及に努めたいと思います。笑
 

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ブナハーブン 1988-2016 28年 single malts of scotland 46.8%

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評価:A++
香りはミントキャンディ、華やかで嫌みのない麦感、ハニーシロップ、クリーミーで甘い、バタースコッチ、僅かに海苔のような磯の香り。
飲むと厚みのある麦の甘味やコクが華やかに口の中に広がり、白い花、マカダミアナッツ、クリーミーでオイリー。わずかに樽の引っかかりやブナっぽいエグミ、紙っぽさ。
余韻は長くリッチ。
 
スペシャリティドリンクス社より、シングルモルツ・オブ・スコットランドシリーズの1988年蒸留の28年ものです。
 
 ブナハーブンアイラ島の北東、アスケイグ港より4kmほど北の海岸にある蒸溜所で、1881年にロバートソン&バクスターのウィリアム・ロバートソンが、オールドパーなどで有名なグリーンリースブラザーズ社の協力を得て、1881年Islay distilleriesとして創立した蒸溜所です。当時結構な未開な土地だったようですが、ロバートソン&バクスター社が、当時のカリラのオーナーだったバロックレイド社との関係が深く、丁度カリラの改築の時期だったようで、そのこともありこのアスケイグの地を選んだようですね。蒸溜所の建設にあたっては、メンバーの宿舎や周辺の道路も整備したようで、現在宿舎の一部などをビジターセンターとして使用しています。
 
水源はマーガディル川、スタオイシャ湖で、上流から水をパイプラインで引いているためピートの含有が少なくなっているのが特徴です。
1883年に1stスピリットの蒸留を行い、また1887年にはIslay distilleriesがグレンロセスと合併してHighland Distilleriesとなり、以後Highland Distilleriesが運営していました。
スコッチ需要の高まった1963年には、1対だったポットスチルが2対になり、同時期にモルティング施設は撤去されています。1987年頃には年間300-400万リットルの生産量を誇っていましたが、2002年ころは75万リットルまで減少しました。原酒不足に悩まされるのはこれからかもしれません。
Highland Disilleriesは1998年にエドリントングループの傘下になり、Highland distillersという名称で運営されていました。カティーサークやフェイマスグラウスなどにも使われていましたが、2003年4月にはトバモリーやディーンストンを所有しているBurn Stewart Distillersに買収、現在はブラックボトルのキーモルトになっています。2013年にはバーンスチュワートディスティラーズが、南アフリカのDistell Group(ディステル社)に買収され、現在同社の所有となったのは記憶にあたらしいところです。
 
Single Malts of Scotlandシリーズを展開しているスペシャリティドリンクス社は、1999年にUKのウイスキーショップ、The Whisky Exchangeのスキンダー・シンにより開かれたボトラーズで、Single Malts of Scotlandシリーズ以外にも、Elements of Islay、Whisky Trail、Port Askaigなどのシリーズを手掛けており、高品質のボトルが多い印象です。
 
さて、このボトルはサンプルを頂きましたが、香りからはモルティさやナッティさ、またミントキャンディとしましたが、キシリトールのような人工甘味料的な甘味を感じました。桃っぽさとインポーターコメントにはありましたが、このことかもしれません。飲むと厚みのある麦の香味やナッティさを感じ、ブナらしいエグみもそこそこに感じ、結構高品質なブナハーブンでした。ちょっと樽感はありますが、1988ビンテージも中々良いボトルが多いですね。

オスロスク1993-2009 43% Gordon & Macpail Connoisseurs Choice


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評価:A~A+
香りはモルティで華やか。シトラス、ハニーシロップ、モルティでクリーミー、パセリなどの香草。
飲むと口当たりは軽く、モルティ、麦汁、軽いスパイスや紙っぽさ。余韻は淡く、生木のニュアンス。
 
ゴードン&マクファイルのコニサーズ・チョイスより、オスロスク1993です。J&Bでお馴染みのJusterini & Brooks社が、ブレンド用キーモルト生産のために1972年に設立した、比較的新しい蒸溜所です。設立の経緯の一つには、当時の親会社のIDV(International Distillers & Vintner)社がドリーの泉という良質な軟水源を見つけたことも一因のようです。70年代のスコッチブームと相まったと推察されます。
その後、IDV社は同年に1972年にグランド・メトロポリタン社の傘下に入り、1997年12月には親会社であるグランドメトロポリタン社がギネス社と合併し、UDV社に吸収される格好となり、現在のディアジオ社に至ります。
マッシュタンとウオッシュバックはステンレスで、ウォッシュバックは8基、ポットスチルはランタン型4ペア、熟成は基本バーボン樽ですが、シングルモルト用にはシェリー樽の熟成や、最後の2年をバーボンとシェリー樽原酒を合わせたダブルマリッジさせる場合もあります。
シングルモルトの発売開始は1986年で、読みやすいシングルトンという銘柄で販売されておりましたが2001年に終売、2002年にFlora & Fauna(花と動物)シリーズで販売されましたが、その後オフィシャルのボトルはリリースされいません。
新しい蒸溜所だけあって、ウェアハウスが広く、近隣の関連蒸溜所の貯蔵庫にもなっており、おおよそ26万樽程度のストックがあるようです。
 
ゴードン&マクファイルは1895年、高級食料品として創業し、20正規初頭よりシングルモルトを販売している最大級のボトラーの1つです。蒸溜所限定ラベルやコニサーズ・チョイスをはじめとして、他ボトラーの追随を許さないくらいのストックがある、信頼の強いボトラーです。1993年にはベンロマックを所有しています。
 
前置きが長くなってしまいましたが、こちらは2009年リリースのオスロスクです。軽い口当たりに、麦のジュースのような華やかな香味が広がり、スターターとして抜群のボルトです。普段のみにも使えそうですし、安いながらも上品なボトルでした。

ブッシュミルズ21年 40% OB 2014年ロット

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評価:A+

香りは、焦がしたカラメル、ローストした麦、ハニーシロップ、桃の皮、リンゴ
飲むと口当たりは軽く、麦汁の甘い香味、熟したリンゴ、シナモン、ハニーシロップなどの甘い香味が優しく広がる。
 
昨日に続き、アイリッシュブッシュミルズの21年、こちらは2014年ロットです。
知り合いが持っていたのを詰めてもらいました。2015年と2014年で味が違うのかどうかですが…
全然別物でした。
2014年ロットはガブガブ飲んでいるわけではないですが、カラメルやりんご、ハニーシロップのような甘味はあるんですが、どちらかと言うと麦汁にシェリー感が合わさっているような香味です。こちらにもトロピカル感はなくはないと思いますが、2015と比べちゃうと「ないです」と言ってしまいます。
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今後、ブッシュミルズ21年がどういう味になるかわかりませんが、少なくともこの2015年ロットは美味しいアイリッシュですので、見かけたらぜひ一度試してみて下さい。2014もトロピカルを感じないだけで、美味しいボトルではありますので、好きな方はこちらを飲んでみるのも良いと思います。2015がわかりやすいキャッチーなモルトで評価を一つ上げておきましたが、本当いいモルトに仕上がっていると思います。
 
さて、昨日のブログでアイリッシュウイスキーの定義をまとめましたが、一部訂正があります。
Single Pot Still Whiskeyという表記が撤廃されたことについてです。

どうやら2014年にアイリッシュウイスキーの定義が変わったようで、麦芽の使用やライ麦までの使用率が定められたようです。

使用率に対する文献はアイルランド政府の法令をそのまま引っ張ってきているので間違いはなかったのですが、呼名を昔のままで作ってました。お詫びして訂正致します。

海外版Wikipediaも文章を省略して記載されているので、法令をそのまま引っ張ってきますと、

“Pot Still Irish Whiskey/Irish Pot Still Whiskey” is defined as a spirit distilled from a mash of a combination of malted barley, unmalted barley and other unmalted cereals. The mash must contain a
minimum of 30% malted barley and a minimum of 30% unmalted barley and be:

となっていますので、改正点は、①「Single pot still」の呼名の廃止と②malted barleyとunmalted barleyはそれぞれ30%ずつ使用、ライ麦などの雑穀は5%以下にすること。

で間違いなさそうです。

日本語での言及はこのブログに記載されているという情報を戴きました。

mtsuchiya.blog.fc2.com

某資格教本では、この定義後の発行ですがまだ掲載されていなく、現在の法令と矛盾した記載がまだなされている(レッドブレストではモルトと未発芽大麦を5:5~8:2で使用という記載あり:2014年以前ならこの使用方法は法令上OKなはずです)ので、次回までには加筆修正が欲しいところです。

というか、レッドブレストが未だにSingle pot still whiskeyを名乗っているのが混乱の元なんだよ!と思わなくもないですが、もしかすると定義でこうなってしまった以上、Pot still Irish whiskeyを名乗れないのかも?と思ってしまうところもあります。どなたかお詳しい方、ご教授戴ければ幸いです。

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