ウイスキーラヴァーの日常

シングルモルト、ウイスキー好きのサラリーマンが、ウイスキーを通じて感じたこと、思ったこと、考えたことなどを綴るブログです。

ダグラスレイン OMC トマーティン 1976 22年 50%

 

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評価:A++
香りはフルーティで、桃、アップルシナモンケーキ、パイナップル、マンゴーといったトロピカルフレーバー。乾燥した木材やバニラ。
飲むと軽くまろやかな口当たりで、アプリコット、桃のシロップ漬け、弱いが76らしいケミカル感、ショコラアイス、麦のコク、シナモンスパイス。余韻は長く、ケミカルやトロピカル感が広がり鼻に抜けていく。
 
OMCから98年頃リリースの、トマーティン1976、22年熟成のボトルです。
 
ハイランドはネス湖の東、ハイランドの都市であるインバネスの南東にある、トマーティン村にあるトマーティン。1897年に設立され、数年の閉鎖などもあったようですが、1956年には2基であったポットスチルを4基へと増設。1958年には6基、1961年には11基、1974年にはプラス12基増設で合計23基のポットスチルが並んでいたようです。しかし、1980年代の不況の煽りを受け、1985年には財政管理会社となったこともありましたが、当時大倉商事と宝酒造が共同で買収し、閉鎖危機を救うこととなりました。日系企業の蒸溜所買収はこのトマーティン蒸溜所が最初になります。
1998年には宝酒造、丸紅、国分が共同で所有し、現在ウオッシュバック12器、初溜釜6器、再溜釜6器(2器は閉鎖中)の合計12器で生産しています。
水源はモナリヤス山系の伏流水である、オルタナフリスという小川のようです。
Tomatinが作っている、ウイスキー製造の図解の動画が非常にわかりやすく、Tomatinの設備もキチンと書いてくれているので、一見の価値があると思います。


Infographic - Whisky Production at Tomatin

OMC、Old Malt Caskブランドは、説明不要と思いますが、当時はボトラーズのダグラスレイン分社前のブランドで、非常に高品質なモルトを詰めていたと言われます。基本的には50%に加水して販売するスタイルですが、Japan Import System向けのボトルは時々Special cask strengthという表記が見られます。これは日本でしかやらないことのようで、JISさんの企業努力に感服してしまいます。

現在、分社後はハンターレインがOMCブランドを引き継いでおりますし、時々JIS向けもみられますね。

さて、このトマーティンですが、1976という当たり年のウイスキーを世に知らしめた黎明期のボトルのようです。98年ころのリリースで、ボトリングからおおよそ19年とかなり時間も経っていますが、トロピカル感は確かに見受けられます。一方で、TWHの1976などとは異なり、ケミカル感や複雑さはそこまで見られない印象もあります。元々この頃の原酒は軽いですので、経年変化でかなり落ち着き、軽くなりすぎているのかもしれません。

以前、66トマーティンの記事でも書きましたが、このフルーティーさは諸説あり、一つは74年のポットスチル増設により出てきたフレーバーじゃないかということ。また、最近のトマーティンにもフルーティーを感じるボトルもあります。一説にはオルタナフリス川のマザーウォーターが関連しているのでは?という話もあるようですが、個人的にはポットスチル増設によるフルーティーフレーバーの生成説を推したいところではあります。まだまだこういうところも謎だらけですが、色々と飲んで経験していきたいところです。

ラフロイグ カーディス(カーチェス) 2011ボトリング イーラッハ(アイリーク)エディション

 
Laphloaig Cairdeas Ileach edition btd. 2011

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評価:A++
香りはなめし革、燻した麦、鰹節、しっかりとしたピートやヨード、アボガドオイル、アップル、オレンジピール
飲むとラフロイグらしい柑橘感を伴うピーティー、ヨード感で、喉ごしの良い麦のコク、ヨード、ピート、雑穀、アボガドオイル、ミネラル、軽い樽感とバニラ。余韻は長く、ピートと軽い清涼感のあるハーブ、オレンジオイル、ざらつきのあるミネラル感。
 
ラフロイグがFriends of Laphloaig向けに年一でリリースしている、カーディスの2011年ボトリングのものです。どうやらメーカーズマークのバーボンカスクで8年熟成されたもののようで、2003年頃の蒸留になるんでしょうか。
 
飲むとしっかりとしたヨードやオイリーのニュアンスの中に、オレンジオイルっぽさもあり、しっかりとしたフルーティさを伴うバーボン感にラフロイグらしいピーティーなニュアンスが見られます。
短熟でもしっかり仕上げてくるラフロイグ、とても美味しかったです。

ウエストランド ピーテッド 46%

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評価:A
 
香りは円熟で、草やお香を燻したような、オリエンタルさを感じるピート、スモーキー、若いが角の取れたハスクのような麦芽、淡いグラッシー。
飲むと口当たりはまろやかで、独特の枯れ葉や烏龍茶などの茶葉のニュアンスを伴うピートに、麦のしっかりとしたコク、ホッピーなラガービール、余韻はスモーキーで長め。
 
アメリカ、ワシントン州シアトルに蒸溜所を構えるウエストランド。2010年に設立したばかりの蒸溜所ですが、2016年のICONS OF WHISKYではクラフトプロデューサー・オブ・ザ・イヤーを獲得するなど世界的に評価上々です。
アメリカでは空前のウイスキーブームらしく、小規模の蒸溜所、マイクロディスティラリーの設立が流行っているようです。ビール界隈ではマイクロブルワリーのクラフトビールやクラフトサイダーが大流行していて、日本でもブルワリーがたくさん出てきていますが、アメリカではマイクロディスティラリーも数百あるとのことですから驚きです。日本でもマイクロディスティラリー設立が流行していますが、どうやらその比ではないようです。
 
さて、実際に日本でも購入できるクラフトウイスキーとなると、恐らくスコッチモルト販売さんが輸入しているWESTLANDとKOVALさんが有名かと思います(KOVALさんなんかは日本人が働いているようで、名古屋でもいらしてましたね)。
 
 
ウエストランドに関する説明はスコモルさんの公式HPがありますので、そこを見ていただければわかるのですが、ピートまで取れるというのは驚きですね。

http://scotch-malt.co.jp/westland

 

さて、普段はスコッチ時々ジャパニーズやアイリッシュを飲む自分ですが、この前某酒屋さんが「ウエストランドのギャリアナはまあまあ美味しいですよ」という情報をくださり、またネット界隈でもピーテッドはまあまあ美味いといった話もあったので、試しにと思って飲むことにしました(たまたまサンプルあったんですよね)。
 
まずはノージングからですが、香りからは草やお香を燻したようなピーテッド感がかなり特徴的です。とある過熟のミズナラを飲んだときの香りに若干似ており、オリエンタルと表現してしまいましたが、客観的にはあまり感じないかもしれません。どちらにしても独特の香草感を軽く感じるピートに、かなりのモルティさです。あまりにモルティで麦芽をそのまま嗅いでいるような感覚や、某社のホップが大量に入ったクラフトのラガービールのような、ビールっぽいモルティさも感じられるのが面白いモルトです。宣伝通り短期熟成とは思えない熟成感で、角が取れて美味しく戴けますし、確かに人気が出るのもわかります。
 
宣伝ではアイラモルトのようと形容されていますが、流石にそれはないだろうとは思います。まずはピートのニュアンスがアイラっぽくないですし、なんならスコットランドのピートはもっとヘザー感の強い青草感と思いますが、このウエストランドはお香のようなニュアンスや、若干烏龍茶のような茶葉っぽさを感じます。また、ピートがそこまで強くないので、アイラのピートの代用品として飲むとがっかりすると思います。
 
このウエストランドに限って言うなら、駒ケ岳が結構近い熟成感と思います。短期熟成らしく複雑さはあんまり感じられなくとも、しっかりとしたモルティさで短期で仕上げてくる美味しいモルトでした。

ラフロイグ25年 46.8%

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 評価:S
 
香りはヨード、ピート、海藻、レモン、アップル、シトラス、イチジク、焦がした木材の香り、多層的なフレーバー。
飲むと深煎りしたナッツやオイル、オレンジピール、ピート、磯、ハニーシロップと多彩で引っかかりのない香味。余韻はヨードを伴うピーティが長く残り、ラフロイグらしい。
 
ラフロイグ25年、オフィシャル2015年リリースのボトルです。2015年、ラフロイグが200周年記念になった年のリリースとあって、注目もされた一方でバイセンテナリーボトルを追うのに大変だったところもあったかと思います。
 
このボトルですが、ラフロイグらしいヨード感やピート感はありつつも、レモンやアップルといった酸味や甘味、ナッツやオイルなどの香味があり、一線を超える美味しさがありました。まあバイセンテナリー、特に32年や、カーティスなどの存在を考えると、ちょっと地味になってしまう感は否めませんが、この年は素晴らしいボトルがリリースされすぎましたね。美味しく戴きました。

エドラダワー イビスコシェリー OB 2000-2014 57.1%

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評価:A++
香りは煮詰めたシナモンアップル、和三盆、ダークチェリー、プルーンの砂糖漬け、アプリコット、ココアパウダー、チェリー。
飲むと近年シェリーの甘み、チェリー、チョコレート、プルーン、砂糖漬けのアップルの果実感、サワークリーム、乾いた木材、嫌みは少なく、余韻はスパイシーとウッディネス。
 
エドラダワーより、イビスコシェリー、2000年蒸留のボトルです。
エドラダワーはハイランド、ピロクトリー地区の蒸留所にあり、1825年に設立。地理的にはブレアアソールの近くにあるようですね。
スコットランドでは最小の蒸留器であることで知られ、生産量は年間約10万リットル。これは日本で言うと秩父蒸留所に該当する量になります。
2002年には4大ボトラーズの一つ、シグナトリーが同蒸留所を買収し、元ラフロイグ蒸留所のイアン・ヘンダーソン氏をマネージャーに抜擢しています。どうやら1998年にはブレンド用に回していたモルトシングルモルトに回すなどのことをしていたようなので、おそらく98年ころからシグナトリーの介入は始まっていたのでしょう。
 
元々エドラダワーといえばクリーミーな味わいに、石鹸のような独特な香味:パフュームが見られるのが特徴的でしたが、2014年ころからは、日本のモルト界隈で脱パフュームの噂がちらほら出始め、再評価されつつある印象です。どうやら2000年前後より脱パフュームという話が通説で、シグナトリーが蒸留所の掃除をしたためにパフュームがなくなったと言われています。実際には98年ころからシグナトリーが介入していたようですので、説が正しければ98-99年蒸留あたりより脱パフュームがみられるはずです(実際、99年イビスコシェリーは脱パフュームしていたのを確認しています)。
 
さて、このボトルですが、2000年蒸留のイビスコシェリーです。このボトルは99年蒸留や2001年蒸留よりも色が濃い!と、数か月前にネット界隈の一部で噂になっていた記憶がありますが、たしかにこのボトルは前後のイビスコよりもこってりとした味わいです。近年系のシェリー感をふんだんに味わえ、嫌味の少ない甘味に、サワークリームのような独特のエドラダワー感が感じられます。イビスコシェリーは価格が上がってきていますが、こんな嫌味のないシェリーカスクがこの価格帯で飲めるのはたしかに良いですね。シェリー好きな方には是非オススメしたいボトルでした。評価は悩むところですが、複雑さはないもののシェリー好きの方にはおすすめと言うことでA++としておきます。
 
 
 

グレンロセス セレクトリザーブ 43% OB

 

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評価:A
香りは若々しい麦のつんとした香り、アーシー、スパイシー、ホワイトオーク、パイナップル、麦の籾殻、べっこう飴。
飲むとドライな口当たりに若い麦のコク、アメリカンホワイトオーク、乳酸。ひっかかりは少なく、余韻はスパイシーで樽のタンニン。
 
グレンロセスのオフィシャルボトルから、セレクトリザーブです。
 
グレンロセスは現在エドリントングループが所有していますが、エドリントンはマッカランやハイランドパーク推しということもあってか、ロセスは基本的にブレンド用に回されることが多いようです。95%程度がブレンド用に回され、トップドレッサーという異名を持つ、という話はよく聞くかと思います。
ブレンド先としてはカティーサークが有名かと思いますが、所有しているエドリントンはフェイマスグラウス、デュワーズ、シーバスリーガルの原酒にこのロセスを使っており、2010年にはBBRが販売していたカティーサークのブランド権・販売権をエドリントンに、エドリントンからはグレンロセスシングルモルトのブランド権・販売権をトレードをしたようです。
 
WORLD WHISKYによると、セレクトリザーブは2004年から販売されているシリーズのようですね。グレンロセスシングルモルト販売の60%(つまり全体の3%)を占めるようで、かなりメジャーなボトルと言っていいかと思います。
 
さて、今回20mlだけですがテイスティングしてみると、麦の若さやドライな感じが目立ちますが、全体的にはバッティングの妙か複雑さがあり、麦の甘味を感じることの出来る上品なモルトという印象でした。嫌みが少ないというのは上手くバッティングされていたり、加水も上手なのだろうなあと推察します。近年らしく軽さは否めないですが、この価格帯を考えると十分華やかで美味しいモルトでした。

スペイバーン 25年 1977 OB 63.7%

 

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評価:A++
しっかりした麦のコクのある麦、ハニーシロップ、バニラ、レモネード、ナッツ、サーモンのスモーク、パパイア。
飲むと粘性のある口当たりに、オレンジ、レモン、しっかりとした麦のコクや甘み、シリアルコーン、バニラ、マカダミアナッツ。余韻は華やかでバーボン系の粘性のある甘みが長く続く。
 
 
スペイバーン蒸溜所のオフィシャルボトル、1977年蒸留、25年熟成です。
スペイバーン蒸溜所は1897年設立のスペイサイドの蒸溜所で、現在はインバーハウス社が所有しています(親会社はタイのタイ・ビバレッジ社)。どうやらビクトリア女王60周年に合わせるため、かなり突貫で工事したという話もあります。
インバーハウス社は日本では三洋物産が正規輸入しており、現在オフィシャルでは10年が輸入されているようですね。ちょっと種類が少なく寂しいですが…
正直地味な印象が拭えないスペイバーンですが、1900年には世界初のドラム式モルティング(製麦装置の一種)が導入された蒸溜所のようで、モルトスター委託になるまで(1968年頃までのようです)使われていたようです。
また、蒸溜所周辺はハイキングコースになっていて非常に美しい外観なようで、現在一般の見学などは出来ないようですが、一度行ってみたいものですね。
2014年には原酒需要に応え、180万L/年→400万L/年の拡張計画というニュースがありました。*1今後の生産量増量が楽しみです。
 
さて、このスペイバーンですが、非常に芯のある麦のニュアンスがあり、恐らくバーボン樽と思われますが、樽の香味に負けないバランスの取れたものでした。
最近のバーボン樽のものは、放置すると樽感が強く出てしまうものがありますが、これはしっかりと麦が負けてないんですよね。最近はこういうモルトはリリースされなくなってきたように思います。
フルーティーさ、シェリー感など華やかな香味もいいですが、こんな芯のあるウイスキーもたまには飲みたいよね、と思える美味しいウイスキーでした。