ウイスキーラヴァーの日常

シングルモルト、ウイスキー好きのサラリーマン(20代)が、ウイスキーを通じて感じたこと、思ったこと、考えたことなどを綴るブログです。

秩父蒸留所を見学してきました。見学記①

昨年9月に行ってきました秩父蒸留所ですが、その見学記が未完のまま、再訪を果たすことができました。この9ヶ月、自分の中のモルトに対する認識も変わって変わってきた今、同じ蒸留所でも感じるものは全く違うように思うだろうという意気込みで行きましたし、実際得るものも大きかったと思います。前回途中まで書きかけて終わってましたが、これを機にきちんと書こうかと思い、再度はじめから書くことにします。一部重複するところもあるかと思いますが、ご容赦ください。

malt.hateblo.jp

 秩父の道中。市内は長閑で山あいの風景が続きます。盆地という地形ならではの眺めです。

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入口にはポットスチルが。羽生のポットスチルなのでしょうか?

当日は天候にも恵まれ、梅雨の合間の晴れ模様が素晴らしい日でした。

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0.ビジターセンター

昨年と大きな違いはないですが、今年受賞されたWorld Whisky Awardsのトロフィーなどが飾られていました。

 

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 尚、写真撮影等はフリー、特に隠していることもないという寛容さも秩父蒸留所らしいところに思います。ここぞといろんなことを質問させていただきましたが、同行者のレベルが高すぎて、かなりマニアックな見学になったことを付け加えておきます。

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川崎グレーンの長熟のサンプルや、トマーティンのサンプルもありました。

トマーティンはホワイトラベル用のサンプルでしょうか?

さて、ビジターセンターでの待機・見学が終わったところで、一行は吉川アンバサダーの案内で蒸留所へと向かいます。

 

1.粉砕

秩父蒸留所は通年ウイスキーを仕込んでいますが、夏場は冷却に大量の水を要してしまうなどの理由で、7-9月中旬はメンテナンスの時期とし、清掃など行っているようです。清掃直前にピーテッドタイプの蒸留を行うとのこと。今回は25kgの小袋、ノンピートの蒸留を行っていました。

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秩父蒸留所は殆どはモルトスターからの買い付けで蒸留しており、買い付け先は写真の通りイングランドのクリスプ社、またドイツなどからも輸入しているようです*1。ピーテッドタイプはスコットランドから取り寄せているようですが、インバネスアバディーンの間あたりのピートを使っているとのことで、ヘザーや枝のピートがメインとなっているとのことでした(会社名は聞いてないのですが、シンプソンズ社のような気がします)。フェノール値は50ppmと、ボウモアの25ppmやラフロイグの35ppmよりもヘビリーなピートですが、前述の通りの内陸ピートなので、磯とか海藻といったニュアンスは出にくいんじゃないかとのお話でした。

最近は秩父の大麦でも蒸留を行っていますが、収穫ムラなどのリスクが有るため、様々な麦芽を用いているとのことでした。写真の後ろに積まれているモルトを全部400kgを全部使い、これから200Lの原酒を作るとのことでした。生産能力としては、1週間に10樽程度、およそ2000Lとのことで、年間約9万リットルの生産となるようです。

9万リットルは山崎蒸溜所では2-3週間、ローズアイルでは2-3日、グレーンでは2-3時間で生産される量とのことで、以下にこのマイクロディスティラリーとしての秩父の規模の多きさがわかると思います。世間で品薄が騒がれていますが、品薄なのもしょうがないよなあと(なにせ手作業の部分が圧倒的に多いですし)。

さて、入荷した麦芽はディーストナー(除塵機)で小石などを取り除き、コンベアーで運ばれ、ミルで粉砕されます。大体30分で粉砕が終わり、この粉砕によって生成されたものをグリストと言いますが、ここからきれいな麦汁を抽出するために、天然のフィルターを形成させます*2。これを作るのがグリスト・セパレーターです。

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このグリスト・セパレーターでグリストを5分ほど篩いにかけると、ハスク・グリッツ・フラワーの3つに篩い分けられます*3。前の見学記にも書きましたが、次の工程で糖化した麦汁を濾過する際に、濁りのないきれいな麦汁を作るためには、適度な粗さの濾材が必要になります。この濾材となるのがハスクです。例えばフラワーが多すぎると細かすぎると抽出時に目詰りし、またハスクが多すぎると抽出時に十分糖化された麦汁が出来ないという問題が生じます*4。基本的なハスク・グリッツ・フラワーの率は2:7:1となるように篩い分けされるとちょうどよく抽出されるとのことです。ただ、これはあくまで目安の比率で、品種ごとにミルによる砕け方が変わりますし、季節により湿度も異なるので、日々微調整をしているとのことでした。モルトミルのダイヤルも日によって異なるようで、ここは経験によるところが大きいとのことでした。ウイスキー製造は引き算で考えるとよく、この時点でバランスが悪いと今後の原酒の出来が悪くなる、ここで70点などにせず、100点以上のものを作らないといけないという言葉が印象的でした。

なお、ミルはアラン・ラドック社のAR2000です*5。本国では無料でメンテナンスしてくれるようなのですが、流石に日本まで業者が来てメンテナンスしてくれるわけではないので、実際に渡英し、メンテナンスの仕方を2年ほど勉強したとのことでした。

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 また、ここで出てきた話として、品種で味が変わるのか?ということも話題に上がっていました。経験上は味は変わる、と言っていましたが、一方でやはり樽の方が大事であることも仰られており、ワインなどと異なり、品種よりも樽が全面的にラベルに貼られていることを引き合いにお話されていました。

長くなりましたので次回に続きます。

*1:記憶が正しければDURST MALZ社から取り寄せている写真を見たことがあるので、同社だと思われます。

*2:一般的に、糖化した麦汁は濾過し、濁りのない麦汁にする必要があります。ウイスキー製造の場合は、これを一つのマッシュタンで行うワンステップ・インフュージョン法を用いるのが普通です。

*3:ハスクは粒径1.4mm超、グリッツは1.4mm~0.2mm、フラワーは0.2mm以下とされます

*4:一般論として、粒径が細かいほど糖化時に糖分がたくさん得られますが、脂肪分も多く抽出されてしまい、この脂肪分が発酵過程で香味成分生成の阻害をしてしまうようです。その為グリッツ程度の粒径が好ましいとされています。

*5:ここではあまり話題に挙がりませんでしたが、蒸留所の設計から蒸留器を作ることで有名なフォーサイス社(厚岸蒸留所が創立時にフォーサイス社の職人が泊まり込みで設計や設備の設営、メンテナンスをしていたのが有名になりました)はミルは作っていないのですが、アランドックのAR2000は同社からおすすめされる機種と聞いていますし、それほどメジャーなモルトミルのようでです。三郎丸蒸留所がクラウドファインディングで達成したモルトミルもこれで、やっと導入できると伺っています。写真にある通り、4つの無段階ダイアルがあり、これを回すことで粉砕の幅を変えることが出来るようです。つまみには数値が書いてありますが、これが何の単位なのかよくわからないところもあるという話も見学中に聞こえてきました。