ウイスキーラヴァーの日常

シングルモルト、ウイスキー好きのサラリーマンが、ウイスキーを通じて感じたこと、思ったこと、考えたことなどを綴るブログです。

静岡蒸留所を見学してきました。その③

注意!
静岡蒸留所は2017年6月現在、一般見学を行っていません。公式ブログでは、2017年夏以降の一般公開を目処に整備中となっております。今回は一般公開前の蒸留所を、偶々知り合いの方が見学することになり、同伴させていただいた次第ですので、ご理解ください。一般見学につきましては、工事完了後に見学可能になると伺っております。詳細に関しましてはGAIAFLOW様の公式ブログをご覧ください。尚、ブログ掲載や写真撮影に関しては口頭での許可を戴いていますが、見学時点の情報であることを重ねてご了承くださいますようお願い致します。

 

 前回の続きです。

malt.hateblo.jp

4.蒸留

見学先は蒸留に移ります。まず特徴的なのは、3箇所のガレージがあることです。

こちらは直火焚きを行うに当たって、風通しのよい環境を作ろうとしたためのようです。建築当初から直火焚きを考えていないと、確かにこのような設計にならないですよね。グレンファークラスなどがこのような風通しの良い設計になっているみたいです。

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こちらにはスチルが3基ありますが、下の写真は軽井沢蒸留所時代のポットスチルです。ポットスチルは計4基あったようですが、使えるポットスチルは1基がやっとだったようです。このポットスチルも厚さ2mm程度と、かなりギリギリの状態で、ほかのポットスチルは1mm程度のものなど、とても使用には堪えられない厚さのようですね。それにしても長いラインアームが特徴的です。

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こちらはフォーサイス製の初留器と再留器です。形状はバルジ型、容量は初留釜6000L、再龍釜3800Lで、初留釜は世界でも類を見ない薪の直火炊きとなっています。残念ながら見学時点ではまだ稼働していませんでした。

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樽詰めしているところも見ることが出来ました。基本的にはバーボンバレルが多いようですね。

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こちらが初留釜の下にある直火炊きのコンロです。まだテスト段階のようですが、30分に1回は薪をくべる必要があるようです。初留に掛かる時間は一応6時間とされていますが、温度がどこまで上がるかにも依るため、現時点ではどれくらいの時間になるかわからないとのことでした。

作成にあたっては余市なども参考にしたようですが、結局最終的には異なる形になったようです。どのようなスピリッツが出来るのか楽しみです!

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もう少し近くからの撮影。

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軽井沢の蒸留器も近くでみてみます。容量は3500L、スチームコイル式の加熱です。

よく見ると不思議な構造物がついています。

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二つある小窓はサイトグラスですが、元々取り付けられていなかったようです。初留するためにはサイトグラスは突沸を防ぐために必要ですから、もしかすると昔ながらのトントンと叩く手法で蒸留していたのかもしれません。

その下のくびれの部分に穴があるのが見えますが、これは水を入れる場所のようです。コンデンサーのように水を入れて冷やし、突沸を防いでいた?など色々なことが考えられるとのこと、真相はよくわかりません。

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下の方にもサイトグラスが付いています。

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現在は再留器と軽井沢蒸留器で蒸留しています。初留器のラインアームは緩やかな上向き、再留器は下向きになっています。

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奥にあるガラス張りの部屋がテイスティングルームです。

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手前の茶色い柱みたいなものは軽井沢の蒸留器のコンデンサー、左真ん中にあるタンクは廃液タンクのようです。

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再留釜。これは稼働してます。

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まだ稼働していない初留器です。

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直火焚きのため、中心部が凸になっているのがわかるでしょうか。
スチームコイルも入っています。温度が上がるまではスチーム、それ以降は直火になる予定のようです*1。プロペラ状のものはラメジャーと言い、直火焚きのものでの焦げ付き防止に置かれるものです*2

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軽井沢蒸留器のスピリットセーフ。昔ながらの形をしています。

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手前側のはフォーサイス社のスピリットセーフです。

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ミドルカットのチェックのノージングをしました。

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さて、蒸留をみた一行はウェアハウスへと向かいます。

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5.熟成

蒸留の終わったウイスキーは樽詰めされ、ウェアハウスにて長い熟成期間を経ます。

静岡蒸留所の樽は主にバーボンバレルです。ラックもほとんどがバーボンバレルになっています。独特なのはウェアハウスに日光が入ることです。UVなどはカットされており、温度のみ上がるようになっています。一方で周りは杉で囲まれているので、熟成環境としては窓があったほうが温度変化があり良いのかもしれないですね。

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奥に見えるのは軽井沢の蒸留器。

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ここでは使用できなくなった軽井沢のポットスチルも展示されます。

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見てわかるように、釜には補修した部分があります。何せ厚さ1mm程度まで薄くなっていたそうですから、触れたら穴が開くレベルです。

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その他にも今は倉庫的な役割をしており、今後熟成庫は拡張予定だそうです。

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6.試飲

さて、最後にテイスティングへ向かいました。一本杉がお洒落な、美しいカウンターです。

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酒販関係者と同行した経緯もあり、特別にガイアフローの取り扱っているブラックアダーやアスタモリスを中心に試飲させていただきました。

ニューポットは雑味がなくきれいな香味でした。熟成後の変化が大変楽しみです。

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主題から逸れますが特に美味しかったのはこの3つ。

1.ブラックアダー グレンロッシー1996

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 某酒屋で入荷される予感がします。

アムルット10年 グリーディー・エンジェル

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びっくりするくらいの南国フルーツです。

 

BRUGEROLLE 1989

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コニャック好きには重すぎると思われそうですが、コレくらい重いコニャックだと美味しく飲めます。重厚でモルト好きでも楽しめる味だと思います。コニャックやアルマニャックが美味しく飲めないお子様な自分でも美味しいと思えたので、是非試してみてほしいですね。

 

さて、駆け足になってしまいましたが、静岡蒸留所の見学記を書かせていただきました。蒸留所によって様々な香味のウイスキーが出来るように、蒸留所によって異なる理念で異なる原酒が作られ、異なる環境で熟成されて行きます。そんな未来を作る今のディスティラーの皆さんの熱い思いやこだわり、したたかさを感じる見学になりました。蒸留所の皆様に敬意を表し、拙文ではありますが簡単に紹介させていただきました。

静岡蒸留所は一般公開を前提とした作りになっており、また見学が出来るようになった暁には必ず再訪しようと思います。中村社長を始め、ガイアフローの皆様には大変お世話になりました。この場を借りて御礼申し上げます。皆様に蒸留所の雰囲気がこの文章で少しでも伝われば幸いです。

*1:スプリングバンクなどで採用されているパターンと同じかと思います。

*2:3rpmほどの回転数で回転できるとのことでした。