ウイスキーラヴァーの日常

シングルモルト、ウイスキー好きのサラリーマン(20代)が、ウイスキーを通じて感じたこと、思ったこと、考えたことなどを綴るブログです。

静岡蒸留所を見学してきました。その②

注意!
静岡蒸留所は2017年6月現在、一般見学を行っていません。公式ブログでは、2017年夏以降の一般公開を目処に整備中となっております。今回は一般公開前の蒸留所を、酒類を専門とする関係者と同伴の上で特別に見学させていただいた次第ですので、ご理解ください。一般見学につきましては、工事完了後に見学可能になると伺っております。詳細に関しましてはGAIAFLOW様の公式ブログをご覧ください。尚、ブログ掲載や写真撮影に関しては口頭での許可を戴いていますが、見学時点の情報であることを重ねてご了承くださいますようお願い致します。

 

 前回の続きです。

malt.hateblo.jp

 3.発酵

糖化された麦汁は、発酵槽ウォッシュバックに注がれます。
容量は8000L弱で、オレゴンパイン製が4基、静岡産の杉で作ったウォッシュバックが1基ありました。杉製とはまた珍しいですが、今後増設予定とのことでした。

下からみたオレゴンパインのウォッシュバックです。

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こちらが杉で出来たウォッシュバック。

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現在は5基のみ設置されていますが、今後拡大を見据えていることがわかる作りです。

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見学ルートからはこのように上から見えるようになっています。

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こちらもまだ余裕がありますね。

手前一基が杉産です。

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当日の麦汁が注がれています。一番麦汁が注がれ、二番麦汁がこれから注がれるところです。上のプロペラはスウィッシャーです。出過ぎた泡を切る効果があります。

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二番麦汁が注がれているところです。温度は20℃スタートで、温度管理はしていないようです。

わざと上から落として空気を入れているようです*1

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 こちらは2日ほど発酵させたもの。アップルビネガーやプラムといった酸味を伴った赤い果実香がしっかりと香ってきます。ピーテッドということもあるのでしょうが、秩父でみたノンピートとは違う香りでした。

まだ試験蒸留の段階でもあり*2*3、熟成時間は色々試しているとのことですが、3日ほどの発酵時間で7%ほどのアルコールを得るとのことでした*4

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こちらは静岡産の杉を使ったウォッシュバック。現在水につけているとのことでした。何故こんなことをしているかというと、タンニンとアクがあるため、灰汁抜きをしているようです*5。今後はこの桶でも発酵されるとのことで、楽しみですね。

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 長くなっちゃいましたので今回はここまでとします。

 

*1:発酵時は空気を入れたほうが良いのか良くないのか、という議論もあります。まあ嫌気呼吸によってアルコールが出来ることを考えると、空気を入れないほうが良いんじゃないかとも思ってしまいますが、このあたりも議論の余地があるようで興味深いところでした。

*2:尚、酵母はマウリ社のディスティラリードライイースト100%のみ、エール酵母などは現在研究中とのことでした。プレスイーストの方が活性などが良いのでは?といった話もあるようですが、長持ちしないところが難点のようで、ドライイーストを使っているところも多いようです(日本もそうですが、スコットランドもそうみたいです)。有名なイーストの取扱企業としては、旧DCL社であるケリー社やマウリ社がありますが、日本にドライイーストを輸入する際はマウリ社になるんだとか。手持ちの文献ではケリー社もドライイーストを出しているようなことを書いていますが、少なくとも日本では手に入らないようですね。

*3:秩父蒸留所の見学記には、ディスティラリー+ブルワリーイーストの混合の方がフルーティーになりやすいという文献もあるという話を記載しましたが、酵母の扱い易さに関してはディスティラリーイーストの方が良いみたいですね。というのも、例えばエール酵母であれば酵母活性化を行う必要があるようです。酵母活性化というのは一度水で戻す行為の様なんですが、それを行うのにもバケツなどが必要だったり、汚染されないようにある程度滅菌が必要だったりするようです。面白いのは、酵素の活性化にはミネラルが必要ということで、蒸留水などではミネラル分が少ないため活性化には不適だそうで、マニュアルでは「煮沸した水道水(滅菌のための煮沸)」と書いてあるとのことでした。日本でも有名蒸留所の中には麦汁を用いた酵素活性化を行うところがあるようですが、ミネラル等の成分が多くなるほど、蒸留器にカスが溜まりやすかったり、時間がかかるのがデメリットとされています。このような工程が必要とも知らなかった自分としては、大変驚き興味深い話でした。机上調査で調べたところ、このような説明書を見つけました。加水活性はビールを作る際は有名な工程のようですね。

http://www.sceti.co.jp/images/ingredients/fermentation/beercatlg_2016.pdf

静岡蒸留所の仕込み水は井戸水とのことですので、煮沸したらミネラルも多くなるのでしょうか?

*4:一般に木製のウォッシュバックは乳酸菌が住み着きやすく、その蒸留所固有の乳酸菌叢が発酵に寄与するとされています。しかしながら試験蒸留の最初は中々pHが下がらなく、乳酸菌が働いていないんじゃないかと振り返ったそうです。一方でとある古くからやっている蒸留所は、金属製のウォッシュバックであるにも関わらず、3日ほどでpHは3-4まで下がるとのことでした。気温や湿度といった条件が無視できないほどに大きいのですが、ウォッシュバックに住み着いている乳酸菌以外にも、その蔵に住み着いている乳酸菌が関係している可能性もあるのではないかという話をしていました。

*5:樽に使う木材には、赤みと白みという部分があり、その間に白線という赤と白の移行地帯があり、疎水性のため、アルコールがそれ以上染みないようにブロックしているとのことでした。赤みはタンニンが含まれているため、ウォッシュバックに用いる木桶の選別としては、「赤みが薄く」「目が細かく」「節が少ない」ことらしいです。丁度地物の杉で条件を満たすものがあったらしく、今回のウォッシュバック製作に繋がったようです。