ウイスキーラヴァーの日常

シングルモルト、ウイスキー好きのサラリーマンが、ウイスキーを通じて感じたこと、思ったこと、考えたことなどを綴るブログです。

秩父蒸留所を見学してきました。見学記③

前回の続きです。

malt.hateblo.jp

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4.蒸留

発酵槽で作られたもろみは、ポットスチルにて蒸留されます。秩父では、フォーサイス社の2000Lサイズのポットスチルが1対使われています。

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初留は発酵液すべてを蒸留し(全留)、アルコール度数20-23%ほどのローワイン(初留液)が700L程作られます。写真撮れていないですがコンデンサーはシェル&チューブ式です。加熱方式はスチームコイル式で、初留と再留で形は異なりますが、スネーク型のスチーム巻になっています。今回見学時は蒸留中でしたので、暑い中での蒸留でした。扇風機が回っているのが見れるかと思います。

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旋回訪問時は稼働前日で、メンテナンス後で銅が磨かれているのがわかります。今回は黒くなっていますね。

ポットスチルの形状はストレートタイプ*1で、ラインアームは少し下を向いています。一般的に、銅は還元剤として用いられ、特に硫黄などの成分や、様々な成分が銅と反応し原酒になるとされます(今回訪問時の銅が黒くなっているのも、酸化反応が起こったためでしょう)。原酒と銅の接触面積が多いと軽い原酒に、少ないと重い原酒になると言われていますが、くびれなどにより蒸気が滞留する空間が出来ると、一部はモロミに戻され、更に加熱されるようになるため、雑味の少ない、軽い原酒になると言われています。またラインアームが上向きだと重力に従って蒸留液が一部戻り、これも軽い原酒になると言われています。今回はストレート型で下向きなので、太く重い原酒を作るのに適していると思われます。

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前回訪問時ですが、初留釜の中です。

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これも稼働前に取ったスピリッツセーフです。後述しますが、ここでミドルカットを行います。

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再留は全部で5時間ほど行われるようですが、全留した初留とは異なり、ニューポットの最初の部分(ヘッド:前溜)と最後の部分(テール/フェインツ:後溜)を除き、熟成に適した部分(ハート)のみを取り出すミドルカットという行為を行います。 このミドルカットのタイミングは、スピリッツセーフの切替タイミングをノージングで判断するとのことでした*2

 ここで、ヘッド・ハート・テールの香りの違いをチェックするコーナーを設けていただきました*3

個人的なノージングで感じた香りは、ヘッドは野菜の煮汁や、少し時間が経って苦味が出てきた時のキャベツの芯のような香りがします。テールはやや機械油のようなべっとりしたオイリーだったり、ツンとした硫黄香も少し感じました。

ヘッドとテールはタンクに戻され再度蒸留しますが、ミドルカットは約10%とのことです。言及はされていなかったように思いますが、かなり絞った数値で、ミドルカットを絞っているとされるマッカランで約13%、最近できたミドルカットの絞りがすごいと言われているウルフバーンでも10%ですので、それくらい秩父も絞っていることになります。

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ここから去年訪問時の写真が続きますが、こちらがボトリング施設です。平日にパートの方がボトリングしているようです。

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前回訪問時にした質問で、「ボトリング時にバッティングした際、最初と最後で味が変わるのか?」という話をしたことがありますが、秩父蒸留所ではそういうことはまず考えられないとのことでした。撹拌をしっかり行ったり、撹拌後にも前後で味のチェックを複数人で行い、違いがあれば再度撹拌する等のことを行っているようです。

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ダブルディスティラリーズです。これは実際にボトルが入っていない箱なんでしょうか?*4

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前回何気なく取っていた写真ですが、よく見るとH28年6月20日の、ノンピートのフェインツと書いてあります。前回訪問時がH28年の9月中旬でしたから、稼働後に再留に使用するために出しておいたタンクだと思われます。

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またまた長くなってしまったので次に進みます。終わらせる気はありますので、もう少しお付き合いください。

 

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*1:ストレートタイプの蒸留所は例えば、スプリングバンク、ロングモーン、マッカラン、カリラ、ボウモア…などが挙げられます。最近の日本のクラフトディスティラリー毎の型を挙げると、厚岸はフォーサイス製ストレート~オニオンタイプ(オニオンはラガヴーリンブナハーブンで使われています)。安積蒸留所は三宅製作所製のストレートタイプ、額田蒸留所はKOVALなどにあるようなハイブリット型スチル、三郎丸蒸留所は独特のローモンドスチルに近いような形:今度見学したときに聞いてみます、静岡蒸留所はフォーサイス製のバルジ型、マルス信州所得る湯所は三宅製作所製のストレートタイプ、長濱蒸留所はホヤ社製の独特のポットスチル(エデンミル、ストラスアーンなどと同じようです)、ホワイトオーク蒸留所は独特の円錐のようなポットスチル、岡山蒸留所はハイブリット型、津貫蒸留所も信州と同じく三宅製作所製のストレート型になります。フォーサイス製のポットスチルは数年待ちのようですので、ごく限られた蒸留所でしか導入できなさそうです。

*2:例えばキルホーマンの場合、ヘッドのタイミングは時間、テールのタイミングは度数で判断するなど、蒸留所によっては機械的に行う場合もあるようです。なぜミドルカットを人力で行うのかというと、そもそもヘッドのタイミングは18-19分程度とある程度見当はついているとのことでした。一方で秒単位でのミドルカットのタイミングとなると、その時使った麦の品種や季節で異なってくるようで、その点で機械的に行っていないようです。教科書的にはデミスティングテストという混濁試験を行い、ヘッドの終了点をみるなども書かれていますが、少なくとも秩父ではされていないようですし、他のところもノージングでやっているのではないでしょうか。このあたりも色々知りたいところです。

*3:後ろに見えるダンボールの山は出荷前?ボトリング前?のホワイトラベルです

*4:前回訪問時にはコルクのことについても聞きました。秩父のコルクに関して言えば、横向きにしてもコルク臭がつく確率は低いとのことでしたが、ワインなどと違って栓が甘いため、漏れの原因となることはある、との話でした。