エドラダワー 2005-2016 11年 醉俠The Drunken Master Whisky BAR 向け
Drunken Master Bar Edradour 2005 11 Year Old Single Cask #100
First fill Oloroso Sherry Cask
Distilled: 03/05/2005
Bottled: 24/08/2016
62.8%
70cl
Limited 643 bottles
評価:A++
香りはしっかりとした甘いシェリー、プラム、オレンジの缶詰め、杏仁豆腐、シナモン。
飲むと香り通りのシェリーやフルーツ感、桃やプラムのコンポート、コーヒークリームのリキュール、シナモン、キャラメルナッツ、やや強めだが嫌みのないタンニン、程よい麦のコク。
今世界でもものすごい熱いウイスキーシーンである台湾は高雄にあるバー、醉俠The Drunken Master Whisky BAR向けにリリースされたエドラダワーです。形的にはイビスコシェリーと同じボトルの形状でしょう。何本かあるようですが、そのうちの一本のサンプルを戴きましたのでご紹介。
シグナトリーが関わってからの、2000年以降のエドラダワーはパフュームがなくなり素晴らしいリリースが多く、これまでも度々このブログでも取り上げていた気がします。
が、流石に普通ではまずお目にかからないボトルに興味津々でテイスティングさせていただきました(お目にかからないボトルばかり飲んでいるじゃないか、というツッコミはさておき)。
テイスティングコメントにあるような、例えるならイビスコシェリーや日本向けのエドラダワーなどにあるような、らしいしっかりシェリー系にコーヒークリーム感があります。また香りは杏仁豆腐のような酸味があったのが印象的です。
エドラダワーとなるとやはり気になったのは日本向けの9年との比較。昨年になりますがTWHが現地で見つけて、日本向けとしてボニリジャパンがリリースした話題のボトルでした。
飲み比べもしてみましたが、Drunken Master向けは複雑は短熟のためかそこまでですが、それでもこの9年よりも多層的、草っぽさ嫌みがなく、シェリーの濃い感じも9年より少し抑えめです。かなり良いチョイスだと思います。飲んでて楽しいんですよね。
問題は、このボトルは直輸入で2万強!とコスパ面ではちょっと…と言わざるを得ないですが、ラベルも含め台湾のウイスキーシーンを投影するようなナイスチョイスのエドラダワーだと思いました。
以下ウイスキーとはほとんど関係のない話題なんですが、台湾絡みでご紹介。先日私が個人的に見ているブログでご紹介いだきました。実家が北海道ということもあり個人的にマイルをセコセコと集めているのですが、このようなマイラー活動の情報収集ブログはたいへん助かっていて、よく見ているんですよね。ANAなら台湾まで往復2万マイル位ですし、実家に帰る際もマイルなら比較的フラっと帰れたり、なんならスコットランドまでマイルで行きたいなあと思案していたり…。
まあそんなことをしている中でも、お世辞抜きにsasasanさんのブログは(マイラーとしてもブロガーとしても)結構参考にしていましたので、ジャンルは違えどご紹介いただき光栄です。基本的にこのブログではウイスキー以外の話題は扱いませんが、ブログを始めた当初では考えられなかったような形で読者がいらっしゃることはありがたいことです。人に伝える練習として始めたブログですが、やはり読者がいてこそのブログだと思います。また襟を正してアップしていきますので、よろしくお願いします。
グレンモーレンジィ タグタ
Glenmorangie The Taghta
46%
評価:A+-A++
香りはアプリコットティー、プラムのコンポート、オレンジババロア、メロン、華やかな木香、サブレ。
飲むとオイリー、塩キャラメル、セイロンティー、アプリコット、しっかり目のウッディとタンニン、あけたてはアルコール感が強く、ウッディ感が比較的マスクされているか。余韻は少し土っぽさとタンニン。
2013年にファン投票があったようで、それによって選ばれたグレンモーレンジィの限定品。バーボンバレルで熟成後、マンサニージャ・シェリーのカスクで追加熟成されたものとのこと。2014年リリースのようですが、何故か正規で入ってきたようで、ホームバーに入荷されたので飲んでみました。マンサニージャシェリーは辛口で、確か地域呼称によるもののはずですので、シーズニングではない、払い出しされたカスクなんでしょうか。
飲んでみるとこれが結構美味しいです。アプリコットティーやプラム、オレンジババロアのような酸味を伴った果実のお菓子のような感じ、サブレのような塩ビスケットの味もします。塩気が特徴とのことでしたが、開けたてのせいか個人的にはビスケットの塩程度のニュアンスでした。
嫌味も少なく、綺麗にまとまって美味しいですが、今後どう転ぶかわからないなあという思いも…それでも、限定のオフィシャルモーレンジの中では結構好きなボトルでした。
ボウモア 1993-2001 for MAEDA 40%
1993-2001 8 year old
Cask No. #500065, 500066, 500067
Specially bottled for MAEDA Co., Ltd
Alc: 40%
評価:S+
香りはパッションフルーツ、クァバ、パイナップルなどの南国フルーツ、種まで入れたグレープフルーツジュース、ボウモアらしいピート、少し磯っぽいニュアンス。
飲むと香り通りの南国フルーツ、少し塩素感やローストした貝殻、磯っぽさ、らしい穏やかなピート。
93ボウモアの先駆けとも言われる、通称「前田のボウモア」。2000年代初頭に主要地域のプライベートボトリングで4種類ほどリリースされたようですが、自分はこのボウモアとローズバンクしか知りません…。実際にリリースされたのかもちょっとわからないです。大阪を中心に展開していた、酒の楽市さんで販売されていたようです。
このボウモアは当時5000円ほどで売られていたようですが、経営していた㈱前田が倒産、現在はやまやの系列になっております。このときに1本1000円ほどで投げ売りされていたとか。今となっては信じられないですが、そんな時代が少し前まであったんだなあと改めて実感します。
93ボウモアはトロピカル感、南国フルーツなどで所謂当たり年の一つかと思いますが、このボウモアも8年という短熟にもかかわらず、そういう香味が出ています。
提供いただいたマスターによると、「もっと置いておくと南国感が激しくなりますよ」とのこと。口開けから2度ほど飲みましたが、暫く置いておくと南国フルーツ全開で、とても美味しいボトルでした。加水や経年変化のせいか、トゲトゲしさはあまりなく、分かりやすいフルーツ感とピーティや磯っぽさがあって、かなりキャッチーなボトルになっていると思います。レートは迷いますが、個人的な好みも含めてちょっと高めで。状態も抜群ですし、これくらいの評価でも良いんじゃないかと思います。
さて、このトロピカル感はどこから出ているのか?というのは愛好家の中でもときどき議論になるところだと思いますが、こういう短熟でも出ているところを考えると、熟成以前の工程、つまり発芽~発酵までの間に出てきたものと言われています。とある組織は酵母説を主張していたり、愛好家の中では麦芽由来を推していたりするわけですが、今後のリリースでもこういうボトルが出てくれるとうれしいですよね。
こんなボトルは中々地元で飲む機会がありませんので、惜しみもなく提供くださったマスターには大変感謝しております。ごちそうさまでした!
加水によってウイスキーの香味はなぜ変化するか?:Dilution of whisky – the molecular perspectiveから考える、ボトリングでの加水、飲む時の加水、瓶熟についての考察
今日のnatureに、こんな論文が投稿されていたようです。
natureではなくScientific Reports誌という雑誌に投稿されている論文のようです。ご指摘いただきありがとうございます。
上はアブストラクト(要約)の日本語訳、下はnatureの原文です。
今回は、この論文を少し読んでみました。
この分野の専門ではないので詳細を突っ込まれるとわからないのですが、自分がぱぱっと読んだところだと、グアイアコールという、焦げ感やバニラのニュアンスの元となる分子の挙動を、分子動力学(MD)シミュレーションで解析した結果のようです。MDシミュレーションは2013年のノーベル化学賞にも受賞されたのは有名かもしれません。グアイアコールは両親媒性分子という、アルコールのような水にも油にも溶けやすい分子ですが、この物質のアルコール度数による挙動を解析したようです。
水-エタノール-グアイアコールの混合溶液をシミュレーションしたのが下の図です(度数は27%)。小さい赤白のものが水分子、大きい分子はエタノールです。このように表面にエタノールが集まっているのがわかります。このように物質が不均一に広がっているのが特徴のようです。
この縦軸をz軸として、エタノール濃度における分布をz軸で見たのが下のグラフです。赤が水分子、青がエタノール分子、黒がグアイアコールです。
見てわかるように、0%~45%では両端、つまり液表にグアイアコールが集まっていますが、高濃度になるほどグアイアコールはz軸の中心、つまり溶液の中にグアイアコールが潜っていきます。このような不均一性が香味の変化をもたらすのではないか、といった事が書かれています(加水すると液表に香味の物質が来るというわけですね)。
その他、グアイアコールの周囲に水分子やエタノールがどのようにくっつきやすいか、電子密度の計算もされています(解説が面倒なので省略しますが、高校化学~大学初等の化学くらいしか知らない自分でもなんとなくの理解はできる内容でした)。
また、最後の考察にも書かれているのですが、加水後も十分水分子がグアイアコールに触れていないので、上記の分布とはことなり、違う香味をもたらすのではないかとのことでした。
この論文を読んでそういえばなあ…と思うことが幾つかあります。
1.数滴の加水で香味が「開く」こと
これは論文にも言及されていますが、アルコール濃度が変わったことで香味成分の分布が変わったという解釈で良さそうな気がします。
2.瓶熟の変化
これは水分子やアルコール分子のクラスター形成といった影響が大きいのではないかと思います。この辺りはブルーバックスから出ているウイスキーの科学という本にも掲載されていると思いますが、サントリーやニッカが過去にしてきた研究は色々論文になっておりまして、熟成によってクラスター分子が増大していることが指摘されています。これによって「口当たりがまろやかになる」と言われているということですね。
以下、リンク先のPDFに色々と載っています。
http://repo.lib.hosei.ac.jp/bitstream/10114/10725/1/13R2124.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/26/4/26_4_260/_pdf
http://www.kitasangyo.com/pdf/e-academy/tips-for-bfd/BFD_31.pdf
さて、これに関しては調査もあまりしていないのでわからないのですが、水-エタノール間でのクラスターの形成によって、今回の論文で出ているような不揮発成分の分布が変わるのではないか?というのが自分の仮説です。今回の実験では、水やエタノールの不均一性が一番上の図であった時の結果ですから、クラスター化されればまた話は変わってくるんじゃないかと思うわけです。この辺りは誰か調べて下さい、シミュレーションしてくださいとしか言いようがないですが…。
3.樽内~ボトリングまでの変化
これもよく言われているのですが、サンプルとボトリングでは香味が違うという話です。これも上のモデルで考えれば、樽から出してきたサンプルは上記の通り樽内で不均一になったところのどこかから引っ張ってきているため、撹拌されてボトリングした香味とは味わいは違うのでしょうね。このあたりは合点がいきます。
以上たらたらと、興味のない人にとっては意味不明な話が続きましたが、元々このブログを読んで下さっている人は少なからずウイスキーには興味がある方々だとは思いますし、上記の科学的知見は結構面白いんじゃないかなあと思います。引用の論文も面白そうなものが多そうなので、時間があるときにゆっくりと見てみたいですね。
グレンタレット 1987 29年 シグナトリー 信濃屋向け 52.7%
評価:A++
香りはカカオ豆、花密、ハチミツ、バタースコッチ、オレンジ、桃。
のむと熟れたアプリコットやオレンジ、軽いヘザー、ナッツクリーム、程良いタンニンやバニラ、引き締めるウッディネス。
久しぶりの更新となってしまいましたが、信濃屋×シグナトリーのPBより、グレンタレット1987です。
前回のロッシーと一緒にリリースされたボトルです。
グレンタレットと言えば1775年に創業で、現存するスコッチで最古の蒸留所、タウザーのスコッチキャットとしての伝説で有名な蒸留所かとおもいます。現在はエドリントングループで、蒸留所のビジターセンターは、フェイマス・グラウスのビジターセンターと兼用になっているようですね。
このボトルは前評判がかなりよく、ネット販売は1分以内に売り切れるほどの人気だったと記憶しています。2度ほど飲む機会があり、テイスティングしましたが、モモヤオレンジ、花蜜といったフルーツ感やフローラルなニュアンスに、ナッツやバターのような甘みが混じり、確かに前評判通りの美味しいウイスキーでした。良い出来のグレンタレット、と言ったところでしょうか。野球で言うなら2ベースヒットのような、この価格でこの味ならかなり良いチョイスだと思います。やはりシグナトリーは色々と良い樽を持っているようですね。これから日本向けのリリースもふえていくんじゃないでしょうか。これからのリリースが楽しみに思えてくるようなボトルでした。
これから1ヶ月程度、私的な用事が重なったり3週間位風邪を引いてしまい飲酒を極力控えていたことなどがあり、更新頻度が少し落ちるかもしれませんが、細々と表現の練習として行っていけたらと思います。宜しくお願い致します。
グレンロッシー 1992-2017 24年 シグナトリー 信濃屋向け 57.4%
GLENLOSSIE 1992-2017 24yo H/H #3454 SIGNATORY FOR SHINANOYA
700ml
Alc:57.4%vol.
278 btls
評価:A+-A++
香りはオレンジオイル、キウイフルーツやパイナップルの缶詰め、フルーツタルト、少しワクシー、奥から木香やハーブ。
飲むとオレンジ、香り通りのミカンや桃の缶詰を乗せたフルーツタルト、レモンクリーム、まだ固くスパイシー、ウッディ。
先月、SHINANOYA×SIGNATORYの初めてのコラボとなったグレンタレットとグレンロッシー。すぐに売り切れてしまい、悔しい思いをされた方も多いのではないでしょうか。
自分はグレンロッシーのみは買えたのですが、グレンタレットはバー飲みを2回した程度、ロッシーも何回か飲む機会に恵まれましたので、久しぶりのテイスティング記事ですが書いていきます。
グレンロッシーはロングモーン、グレンエルギン、ベンリアックなどの近く、エルギンの南にあるトムスヒルにある蒸留所で、創業は1876年、グレンドロナックのマネージャーも務めていたジョン・ダフによって創業されました。1896年にはグレンロッシー・グレンリベット・ディスティラリー社が設立され、1919年にはDCL社に参入、1930年代にはSMD社による経営が続いていました。1962年にはポットスチルを4基から6基へ拡張し、1971年には同所に拡張された蒸留所が建設されました。これがマノックモア蒸留所で、こちらも現在はディアジオ社の所有です。
カラ松製のウォッシュバックが8基あり、発酵は75-80時間、これがグラッシーな印象を与えているのではないかと言われています。
リリースとしては1990年より花と動物(Flora&Faura)より10年、2010年には1999年蒸留のモルトを詰めたマネージャーズチョイスがReleaseされました。基本的にはブレンド用ですので、オフィシャルからのシングルモルトのリリースは多くありません。
さて、今回はシグナトリーとの初のコラボとのことですが、勝手な憶測ですがシグナトリーが様々なボトラーに提供しているところをみると、いままでシグナトリーと提携できなかったのは輸入代理店の影響が大きいんだと思います。TWHもボトリングにあたって瓶の形状を交渉したりなどしていた過去がありますし、信濃屋さんも恐らくかなりの交渉をされたのではないか、と察します。
そんな中満を持してリリースされたボトルですが、どちらもシグナトリーらしく、コスパの高く、今までのPBを踏襲するようなボトリング、という感想を持ちました。
このロッシーに関して言えば、まだスパイシーさが強いですが、今でも十分フルーツ感が楽しめるボトルですし、今後瓶熟でこなれてくると、意外でさらに美味しいボトルになると考えています。自分は暫く寝かせようと思います。レートも悩ましいところですが、角が取れたあたりで複雑さが増しそうで、今後更に高いレートになると思います。
今の時点で十分楽しめるタレット、今後ものすごく美味しくなると勝手に期待してるロッシーと、ナイスな2本でした。シグナトリーは敬遠する方も多そうではありますが、少なくともメジャーのボトラーでさえ原酒をあまり確保できていない状況に鑑みると、今後更に存在感を増しそうな蒸留所だと思います。今後のリリースも楽しみですね。
東京遠征回想②
前回からの続きです。
グレンタレット 1976-1986 58.7%
短熟ですが芳醇なフルーツ感を纏った恐るべきボトル。はっきりと香味が主張してくるのは、この短熟+瓶熟のせいなのでしょうか?何れにせよ非常に美味しかったです。
アードベッグ 1975 フランス向け
素晴らしいシェリーのニュアンスと往年のアードベッグらしい香味。経験したことのない美味しさでした。
クラガンモア 1986 30年 オールド&レア
評判の高いオールド&レアのクラガンモア。価格こそアレですが、このチョイスにしたのも納得の美味しいスペイサイドモルトでした。
スプリングバンク 1992
このバンクも非常に美味しかったです。92とか94あたりのビンテージのバンクは自分も好きなものが多いです。
これだけの色んなモルトをいただきながら朝まで飲み続け、土曜日も飲みにふけっていました。
あんまり書くこともなくなったのでこれでこのシリーズは一旦終了とします。
印象に残ったモルトを何個か並列で書いたほうが良さそうですね。