ウイスキーラヴァーの日常

シングルモルト、ウイスキー好きのサラリーマンが、ウイスキーを通じて感じたこと、思ったこと、考えたことなどを綴るブログです。

トーモア 1988 28年 49.3% スコッチモルト販売 THE TASTERシリーズ 第10弾

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評価:A+

香りはまだ堅いが芳醇なエステリー。オレンジやキウイフルーツ、チーズタルト、少しきゅうりやスイカのような青っぽい野菜。
飲むとスパイシーでまだ堅い。穏やかでライトな麦感、焼き目の少ないホットケーキ、マーマレード、少しグラッシー。ウッディネスな余韻。
加水でスパイシーさは薄らぎ、ライトな麦感やオレンジのニュアンスが広がってくる。サンプルの時点では少量加水がオススメ。

テイスターシリーズの最新作より、トーモア1988年です。

トーモア蒸留所は、1958年にシェンリーインターナショナル社(デュワーズの米国代理店)により創業された、第2次世界大戦後に作られた最初期の蒸留所の一つで、スペイサイドでは20世紀初の新規蒸留所になりました。設計は元ロイヤル・アカデミーの会長のアルバート・リチャードソン伯爵で、白壁と緑色の屋根が印象的で、ウイスキーライターのマイケル・ジャクソンが、「蒸留所の建物の中でも最高傑作」と評するなど、建築物の評価としても高い蒸留所です。

ポットスチルはストレートヘッド型で、1972年にはポットスチルが4基から8基に倍増しています。再留釜には精留器が取り付けられており、ライトな酒質に寄与しています。

1975年にはシェンリー社がホワイト・ブレッドグループに買収され、1989年にはアライドグループが買収しましたが、2005年にシーバス・ブラザーズ社(ペルノ・リカール)が買収し、現在同社の所有です。2011年-2012年には一時蒸留所を閉鎖しウォッシュバックを3基追加、ポットスチルのヒーターを蒸気スチルからコイルに交換し、省エネルギー政策をすすめたり、2014年にはトーモア、グレンリベット、クラガンモア、トミントールを繋ぐガスパイプラインが作られるなら、さらなる省エネルギー化に努めているようです。

 今回はスコッチモルト販売さんのザ・テイスターシリーズで、各テイスターがボトルをセレクトするというシリーズで、最近ですと吉村氏のインペリアルが高評価だった記憶があります(確かに95インペリアルの中でもかなり美味しいものでした)。今回は谷嶋氏のセレクトということで、トーモアというマイナー蒸留所ではありましたが、期待して飲んでみました。

飲んでみるとスペイサイドらしい穏やかなフルーツ香がありますが、サンプルも詰めたてなのかやや固めで分かりにくいところがありました。トーモアに時々感じられる(と自分が思っている)酸味も少し感じられ、ブラインドでは当てられませんが、らしい仕上がりと思います。飲んでみると少しスパイシーですが嫌味はなく、少量加水でフルーツ感がしっかりと開いてきますので、少し放置しておくとかなり良くなってくるのではないでしょうか。

今の御時世、価格高騰は避けられませんが、しっかりとしたらしいフルーツ香を感じる、さすがのチョイスだと思います。今後開いてくることで、更に評価の高いボトルになるんじゃないかと十分期待できる、今後が楽しみなリリースでした。

 

 

 

カリラ 2005-2016 59.0% G&M エクスクルーシブラベル for THE WHISKY HOOP #301502

 

 

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評価:S

香りは岩牡蠣の貝殻や燻した貝、肉汁の落ちた炭火焼、焦げ目のついた焼おにぎり、昆布などの磯っぽさ、レーズンバター。
飲むと牡蠣のスモーク、バター醤油、海塩、ワインの甘納豆、餡蜜、濃いめに取った魚介だし、じめじめした土っぽいピート、余韻はピーティーでスパイシー、うっとりするシェリーの甘み。

日本のウイスキー愛好家団体、THE WHISKY HOOPよりリリースされた、2005年蒸溜、およそ11年熟成のカリラです。少し長くなりますが、カリラについてまとめていませんでしたので、簡単にまとめておきます。

 カリラは、1846年にアスケイグ港の近くにヘクターヘンダーソンにより設立された蒸溜所で、当初は小さな港であったポートアスケイグでしたが、ヘクターヘンダーソンはナムバン湖 Loch nam Banの、ピーティーで豊富な水源に目を付け、蒸溜所を建設し、従業員の宿舎や店なども一緒に建設したといわれています。1863年にはバロックレイド社が買収し、この頃にブナハーブンが建設されています。
 その後DCL傘下となり、現在はディアジオ社の系列です。1972-74年に蒸溜所を改築し、ガラス張りのビルのようなデザインとなっている(Waterloo Street Styleと呼ばれるよう)。アイラの中でも非常に生産量が多く、現在ポットスチルはストレート型6基。70年台の蒸溜所改築中はピーテッドウイスキーが不足し、ブローラ蒸溜所でピーテッドタイプを作っていたという話まである。ウイスキー不況であった1980年台は、他蒸溜所は原酒が少なく不遇な時期であったり、1980年代のボウモアはパフュームの魔の時期であったりと、アイラにとっては不遇な時期だったと言えるでしょうが、UD社も例外ではなく、カリラとポートエレンのどちらかの閉鎖を余儀なくされ、ポートエレンが閉鎖されたと言われています。
 現在30-35ppmほどのピートを焚いており、ヘビーピーテッドだが、同じディアジオ系でもラガヴーリンよりはライト寄りのモルトを生産しています。
 2013年まではビリースティッチェル氏が長年蒸溜所のマネージャーを行っており、家族4代がカリラで働いていたが、定年により退職。現在はDavid Woodがマネージャーです。

 さて、このボトルはTWHの2017年3月頒布のボトルでしたが、そのレベルの高さ・コスパの高さから、追加注文が殺到したと聞きます。実際に飲んでみると、しっかりとしたスモーキーさや磯っぽさを感じる一方で、キレイに乗ったシェリーの甘味が合わさって、複雑さに寄与しています。高々10年少々の熟成で、お手頃なお値段でこれほどのカリラが味わえるのは中々無いかと思います。かなりコスパに優れたボトルだと思いますし、自分もなんとか少数本手に入れました。今回のテイスティングではスモーキーさを取りすぎたような気もしますが、しっかりとシェリーのニュアンスもあり、お勧めの一本です。時間経過でどうなるかも楽しみですし、開けたてでもしっかりと美味しい素晴らしいボトルです。フープ加入店のバーにはまだあると思いますので、見かけたら是非飲んでみて欲しいボトルでした。

グレンロッシー 1992 21年 スコッチ文化研究所 for Whisky festival Osaka 2015 51.7%

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評価:A+
香りは洋梨やオレンジ等のフルーツ、水飴、しっかりとした麦のコク、乾いた木材。
飲むと口当たりはまろやかで、洋梨、ハニーシロップ、バニラ、穏やかな麦のコク、少し強めの樽感、ややスパイシーな余韻。
 
2015年のWhisky Festival in Osakaの記念ボトル。主催元のスコッチ文化研究所(現ウイスキー文化研究所)からのリリースです。
グレンロッシーはロングモーン、グレンエルギン、ベンリアックなどの近く、エルギンの南にあるトムスヒルにある蒸留所で、創業は1876年、グレンドロナックのマネージャーも務めていたジョン・ダフによって創業されました。1896年にはグレンロッシー・グレンリベット・ディスティラリー社が設立され、1919年にはDCL社に参入し、1930年代までJohn Haig社の元、SMD社による経営が続いていました。現在はディアジオ社の所有となり、ヘイグ、ディンプルのキーモルトとして知られています。
1962年にはポットスチルを4基から6基へ拡張し、この頃から蒸留所拡張の計画があり、1971年には同所に拡張された蒸留所が建設されました。これがマノックモア蒸留所で、こちらも現在はディアジオ社の所有です。
原酒としては軽い原酒が多いと言われ、これは再留釜のラインアームに精留機を設置しているためと言われています。確かに綺麗で軽い原酒が多い印象です。
 
あまりシングルカスクでのリリースは少ない印象のグレンロッシーですが、ここ最近で言えば、1980年代前半、1990年代前半のグレンロッシーがポツポツとリリースされている印象です。このボトルは1992年でホグスヘッドとのことですが、リフィルなどでしょうか。そこまで樽感は強くなく、原酒由来と思われるフルーツ感や素朴な麦感が嫌味なく主張してくる、優しいボトルでした。味自体は王道ですが、キュートなラベルと相まってスコ文研らしい面白いボトルだと思いました。
 

宮城峡蒸留所に行ってきました。

GWの真っ只中、いかがお過ごしでしょうか。

幸いお休みを戴けたので、先程宮城峡蒸留所に行ってきました。

ビジターセンターが新しくなったこともあり、近々行って見たかった蒸留所の一つですが、幸い同行いただける方もおり、自動車での長旅も無事に終わり、楽しく見学させていただきました。

簡単ですが、宮城峡のレポートを作っていきます。

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新しくなったビジターセンター。格好良くなっています。

ロゴのポットスチルが宮城峡仕様になりましたね。

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ポットスチルの展示。これは余市でしょうか。

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新しいこともあって、かなり展示も詳しく、実情に沿ったものになっていると思います。

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木材の側板を見ると、どれくらい使い込まれた樽かわかるようです。

実際にこのしみ混み具合も熟成度合いの目安になるようです。

 

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かなりわかりやすく展示されています。

 

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GWということもあって、かなりの人数でした。

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外の景色は非常に綺麗でした。

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ビジターセンターもガラス張りになっていて、花模様を伺えます。

 

そんなこんなで見学コースを見に行くことに。

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カフェ式蒸留機。

解説はありませんでしたが、どうやら2機あるようで、1機は西宮工場にあったもののようです。

マッシュタンや発酵槽、中央管理室の見学もできます。

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宮城峡は中央管理室が大きいですね。撮影は禁止されていましたが、スチーム式であるからか、かなりがコンピューター制御されている印象でした。

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お次はポットスチル。宮城峡のスチルはバルジ型で、ラインアームは上向き。所謂ライトなウイスキー。初留釜と再龍釜の大きさはほぼ同じ、サイトグラスの有無ぐらいしか違いはなさそうです。

手前のスチルは創業当時からあるもの、奥のスチルがおそらく76年に増設したポットスチルです。ラインアームが交換されていますね。

 

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蒸留所の周りの木は、何故か黒色に変色しています。
なんでなんでしょう?酵母と関係があるという説も聞きましたが、定かではありません。

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その後熟成庫へ。

その後試飲会場へ。と言っても試飲の内容は余市と同じで、十六茶を一気飲みして終了。

 

と、こんな感じの見学でした。
初めて来れましたがいい空間でした。新しくなったビジターセンターもいい感じでしたし、ニッカらしく魅せてくれるような空間でした。

ぜひ皆様も一度立ち寄ってみてはいかがでしょうか?

ではこれから飲みに行ってきます!

ボウモア 15年 OB for WHISKY SHOP W. 54.8%

 

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評価:A+~A++
香りは生木、ジンジャーシロップ、柿、スイカ、牡蠣の燻製のようなしっかりしたスモークと磯っぽさ。
飲むとジューシーでコクのある口当たり、トロピカルジュース、牡蠣の燻製、濡れた木材、余韻はピーティーやスパイシーで長い。
 
以前大阪にあった、サントリーセレクトショップ、WHISKY SHOP W.向けに詰められたボウモア15年です。2011年リリースで、2400本ほどのリリースだったようですが、2015年位まではネットショップに売られていて、1年半くらい前に各所で続けて話題に挙がったボトルだったと記憶しています。
あれから1年半、90年代のボウモアはすっかり影を潜め、WHISKY SHOP W.もなくなり、当然このボトルもSOLD OUTとなってしまいましたが、ご厚意で少し譲っていただく事が出来ました。
逆算すると95年程の原酒が使われているとのことで、実際に飲んでみると、らしいトロピカル感を感じますし、90年代前半と、しっかり目の香味がメインになってくる後半の過渡期にあるボトルなのかな、と(ボトルスペックを知っているからだとは思いますが)納得出来る香味でした。
 
ボウモアの香味は、ここ30年で言えば大きく4つに分けられるんじゃないかと思います。近年蒸溜のものはあんまり詳しくありませんが…
~80年代:パフューム時代
89~91年:パフュームと90年代前半らしいボトルの混在
90年代前半:93ボウモアに代表されるトロピカルなボトル
90年代後半:96-99年辺りはバランスの良いフルーティー(柑橘感)が目立ってくる
2000年以降:紙っぽさやオイリーが目立つボトルがある
 
このボトルは95年と中間に位置し、どちらかと言うとトロピカル感も感じられ、良いボトルですね。確かに買いと言われていたのも納得のボトルでした。評価は難しいところですが、この時期のボトルすらも貴重になってきており、甘めにつけてしまいたくなりますね。

クライヌリッシュ 1995 19年 アルテミス・リザーブド KINKO 57.3% 

 

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評価:A++
香りはこもった麦感、ワクシー、チェリー、オレンジ、バニラ。
飲むとワクシーだがリッチ、麦の甘み、バターとハニーをたっぷりのせたパンケーキ、やや強めの樽感、バニラ。
鹿児島を中心とした酒販、オーリックさんの洋酒部門、キンコーさんのオリジナルボトルのクライヌリッシュ、1995年です。ボトラーはアベイヒルのようです。最近アベイヒルからのリリースは殆どありませんが、最近ですとモルトヤマさんのPBもアベイヒルでしたね。
クライヌリッシュは1819年にブローラの町に設立した蒸留所で、1925年よりDCL社、現在はディアジオ系の所有となっています。
現在のクライヌリッシュは1967年に設立された第二蒸留所で、古い蒸留所はブローラと呼ばれていましたが、1983年にブローラは操業停止となっています。
60-70年代の窓の多い、当時のDCL社らしい外観ですが、特に70年代のクライヌリッシュや、近年だと95-97年あたりのリリースは多く、美味しいボトルも多い印象です。
またクライヌリッシュと言えばその独特のワックスの香味、ワクシー[waxy]が有名です。初留釜より再留釜の方が大きいのが要因と言われていたり、ネックやコンデンサーを掃除していないんじゃないか、という話もあったりしますが、いずれにせよこの独特の枠シーサがクライヌリッシュの魅力の一つだと思います
 
今回の95年のクライヌリッシュは、やや無骨で素朴な麦感があり、好印象のボトルも多い印象を持っています。
キンコーさんのボトルは、ゆっくりと置いておくと開くと説明されているボトルが多いですが、今回もそんな感じで20分ほどの放置を推奨されていますね。あまり気にせず飲んでしまいましたが…
香味からは、らしいワクシーが広がり、オレンジやシトラス、バニラといった分かりやすい香り、飲んでもワクシーでリッチな香味が好印象でした。樽感も含め、香味がしっかりと主張していますが嫌味ではなく美味しいレベルです。
分かりやすい美味しさが印象的な、らしいクライヌリッシュでした。

グレングラッサ 1973-1998 ザ・ファミリー・シルバー 40%

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評価:A++
香りは上質でうっとりするエステリー香、アプリコットやシェリー、キャラメル、ハニーシロップ。
飲むとやや粘性のあるテクスチャーで、アプリコット、アップルキャンディー、焦がしたカラメル、やや渋みのある樽感、甘みのないローストしたカカオ豆。
 
ザ・ファミリー・シルバーより、1998年ボトリングの73グレングラッサです。
おおよそ25年熟成といったところでしょうか。
 
グレングラッサはマレイ湾にある漁村ポートソイの近郊にある蒸留所で、当時地元の実業家であったジェームズ・モイアが1875年に設立しました。ポットスチル製造にはトーマス・ウィルソンを従え、家族経営で運営していましたが、1892年にロバートソン&バクスター社に売却を持ちかけ、ハイランド・ディスティラリーズ社に売却となりました。しかし1907-1960年、1986年~と創業停止となり、熟成庫のみが使われている時期のほうが長かった、流行に飲まれてしまった蒸留所と言っていいのかもしれません。
しかし2008年に前所長のスチュワート・ニッカーソンを中心とした投資家グループが買収、同年より操業再開となったのでした。
現在、リバイバルシリーズなど、不定期ではありますがニューリリースがいくらか出ておりますし、70年代のグラッサは今でも長熟グラッサとして時々目にする銘柄です。
 
このグラッサはおよそ20年前ほどのリリースということで、おそらくかなり経年変化を経て、テイストが変わっているのだろうと思いますが、アプリコットやシェリーといったエステリーなニュアンス、飲むとあまり甘みのない果実やカカオ豆を感じ、この頃のグラッサらしい飲みくちでした。ピークは過ぎているような気はしますが、十分70年代の余韻に浸れるモルトでした。