ウイスキーラヴァーの日常

シングルモルト、ウイスキー好きのサラリーマンが、ウイスキーを通じて感じたこと、思ったこと、考えたことなどを綴るブログです。

ブナハーブン 18年 OB 46.3%

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評価:A++
香りはややわざとらしいチェリー、キャラメルマキアート、ナッツのシロップ、シナモン、じっくり煮詰めたアップル、プルーン、梅の塩漬け。
飲むとリッチでフルーティー。ココアパウダー、レーズンやプルーン、しっかりとコクのある麦感、ブリニー、余韻は塩気やビターチョコレート。
 
ブナハーブンのオフィシャル、18年です。
ブナハーブンの歴史については前回の記事を参照いただくとして、現行の蒸留内訳についてまとめていきます。
基本的にブナハーブンはアイラ唯一のライトピーテッドと言われるのは有名なところかと思いますが、実際の数値で言うと2-3ppmとかなりピートの少ないボトルになっています。80年代後半~90年代前半にも時々ミディアムピーテッドのボトルなどが見られることもありますが、その生産量はかなり少ないと思われます。本格的にピーテッドタイプが出てくるようになったのは1997年蒸留のもので、35-40ppmのヘビーピーテッドタイプを試験的に蒸留し始め、2004年に6年物をmoine(モンニャ、モーニャ;ゲール語でピートの意)としてアイラフェスで発売した経緯があります。
2003年以降は毎年ピーテッドタイプを作っており、全体の10%程度を占めるようですね。ブナハーブンというとシェリーなイメージですが、実際はシェリー樽は10%程で、90%はバーボン樽と、意外にも少なく思えます。
 
さて、このブナハーブン18年ですが、他のOBよりもシェリー樽比率が高いのが特徴と言えそうです。40%程がシェリー樽、60%がバーボン樽という贅沢な比率でブレンディングされている通り、香りからはシェリー感が漂います。
開けてすぐはチグハグな香りでしたので、1ヶ月ほど待ってやや一体感が出てきたところでテイスティングしてみましたが、ドクターペッパーやチェリーコーラのようなややわざとらしいチェリー感や、キャラメル飲料のような甘味とコク、甘味やオイルをしっかりとまとったナッツやシナモンパウダーなどの香味が広がり、オフィシャルのシェリーのブナっぽい作りの味です。ボトラーズではシングルカスクが多く、こういう香味はあんまり出てこないので、ヴァッティングの妙なのでしょう。
飲んでもフルーティーさと甘味がしっかりと感じられ、潮っぽさを感じながらも一体感があり、中々完成度の高いボトルに仕上がっています。ブナ好きなら飲んでおきたい一本と思います。
 
このボトルについて最後に2つほど。これに限らずなんですが、バーン・スチュワート社の発売するオフィシャルは46.3%にこだわっており、カスクストレングスなどの数値ではなく、調整でこの度数にしているということ。
上のテイスティング写真では度数が見えませんでしたので、下にも貼り付けておきます。
また、ブナハーブンは正規取扱がアサヒですが、18年に関しては正規輸入品がなく、並行輸入品しかないところも残念なところです。自分の住んでいる片田舎ではブナハーブン12年すら売っている酒屋がありません。あまりにも悲しい現実ですが、ブナ好きとして普及に努めたいと思います。笑
 

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ブナハーブン 1988-2016 28年 single malts of scotland 46.8%

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評価:A++
香りはミントキャンディ、華やかで嫌みのない麦感、ハニーシロップ、クリーミーで甘い、バタースコッチ、僅かに海苔のような磯の香り。
飲むと厚みのある麦の甘味やコクが華やかに口の中に広がり、白い花、マカダミアナッツ、クリーミーでオイリー。わずかに樽の引っかかりやブナっぽいエグミ、紙っぽさ。
余韻は長くリッチ。
 
スペシャリティドリンクス社より、シングルモルツ・オブ・スコットランドシリーズの1988年蒸留の28年ものです。
 
 ブナハーブンアイラ島の北東、アスケイグ港より4kmほど北の海岸にある蒸溜所で、1881年にロバートソン&バクスターのウィリアム・ロバートソンが、オールドパーなどで有名なグリーンリースブラザーズ社の協力を得て、1881年Islay distilleriesとして創立した蒸溜所です。当時結構な未開な土地だったようですが、ロバートソン&バクスター社が、当時のカリラのオーナーだったバロックレイド社との関係が深く、丁度カリラの改築の時期だったようで、そのこともありこのアスケイグの地を選んだようですね。蒸溜所の建設にあたっては、メンバーの宿舎や周辺の道路も整備したようで、現在宿舎の一部などをビジターセンターとして使用しています。
 
水源はマーガディル川、スタオイシャ湖で、上流から水をパイプラインで引いているためピートの含有が少なくなっているのが特徴です。
1883年に1stスピリットの蒸留を行い、また1887年にはIslay distilleriesがグレンロセスと合併してHighland Distilleriesとなり、以後Highland Distilleriesが運営していました。
スコッチ需要の高まった1963年には、1対だったポットスチルが2対になり、同時期にモルティング施設は撤去されています。1987年頃には年間300-400万リットルの生産量を誇っていましたが、2002年ころは75万リットルまで減少しました。原酒不足に悩まされるのはこれからかもしれません。
Highland Disilleriesは1998年にエドリントングループの傘下になり、Highland distillersという名称で運営されていました。カティーサークやフェイマスグラウスなどにも使われていましたが、2003年4月にはトバモリーやディーンストンを所有しているBurn Stewart Distillersに買収、現在はブラックボトルのキーモルトになっています。2013年にはバーンスチュワートディスティラーズが、南アフリカのDistell Group(ディステル社)に買収され、現在同社の所有となったのは記憶にあたらしいところです。
 
Single Malts of Scotlandシリーズを展開しているスペシャリティドリンクス社は、1999年にUKのウイスキーショップ、The Whisky Exchangeのスキンダー・シンにより開かれたボトラーズで、Single Malts of Scotlandシリーズ以外にも、Elements of Islay、Whisky Trail、Port Askaigなどのシリーズを手掛けており、高品質のボトルが多い印象です。
 
さて、このボトルはサンプルを頂きましたが、香りからはモルティさやナッティさ、またミントキャンディとしましたが、キシリトールのような人工甘味料的な甘味を感じました。桃っぽさとインポーターコメントにはありましたが、このことかもしれません。飲むと厚みのある麦の香味やナッティさを感じ、ブナらしいエグみもそこそこに感じ、結構高品質なブナハーブンでした。ちょっと樽感はありますが、1988ビンテージも中々良いボトルが多いですね。

オスロスク1993-2009 43% Gordon & Macpail Connoisseurs Choice


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評価:A~A+
香りはモルティで華やか。シトラス、ハニーシロップ、モルティでクリーミー、パセリなどの香草。
飲むと口当たりは軽く、モルティ、麦汁、軽いスパイスや紙っぽさ。余韻は淡く、生木のニュアンス。
 
ゴードン&マクファイルのコニサーズ・チョイスより、オスロスク1993です。J&Bでお馴染みのJusterini & Brooks社が、ブレンド用キーモルト生産のために1972年に設立した、比較的新しい蒸溜所です。設立の経緯の一つには、当時の親会社のIDV(International Distillers & Vintner)社がドリーの泉という良質な軟水源を見つけたことも一因のようです。70年代のスコッチブームと相まったと推察されます。
その後、IDV社は同年に1972年にグランド・メトロポリタン社の傘下に入り、1997年12月には親会社であるグランドメトロポリタン社がギネス社と合併し、UDV社に吸収される格好となり、現在のディアジオ社に至ります。
マッシュタンとウオッシュバックはステンレスで、ウォッシュバックは8基、ポットスチルはランタン型4ペア、熟成は基本バーボン樽ですが、シングルモルト用にはシェリー樽の熟成や、最後の2年をバーボンとシェリー樽原酒を合わせたダブルマリッジさせる場合もあります。
シングルモルトの発売開始は1986年で、読みやすいシングルトンという銘柄で販売されておりましたが2001年に終売、2002年にFlora & Fauna(花と動物)シリーズで販売されましたが、その後オフィシャルのボトルはリリースされいません。
新しい蒸溜所だけあって、ウェアハウスが広く、近隣の関連蒸溜所の貯蔵庫にもなっており、おおよそ26万樽程度のストックがあるようです。
 
ゴードン&マクファイルは1895年、高級食料品として創業し、20正規初頭よりシングルモルトを販売している最大級のボトラーの1つです。蒸溜所限定ラベルやコニサーズ・チョイスをはじめとして、他ボトラーの追随を許さないくらいのストックがある、信頼の強いボトラーです。1993年にはベンロマックを所有しています。
 
前置きが長くなってしまいましたが、こちらは2009年リリースのオスロスクです。軽い口当たりに、麦のジュースのような華やかな香味が広がり、スターターとして抜群のボルトです。普段のみにも使えそうですし、安いながらも上品なボトルでした。

ブッシュミルズ21年 40% OB 2014年ロット

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評価:A+

香りは、焦がしたカラメル、ローストした麦、ハニーシロップ、桃の皮、リンゴ
飲むと口当たりは軽く、麦汁の甘い香味、熟したリンゴ、シナモン、ハニーシロップなどの甘い香味が優しく広がる。
 
昨日に続き、アイリッシュブッシュミルズの21年、こちらは2014年ロットです。
知り合いが持っていたのを詰めてもらいました。2015年と2014年で味が違うのかどうかですが…
全然別物でした。
2014年ロットはガブガブ飲んでいるわけではないですが、カラメルやりんご、ハニーシロップのような甘味はあるんですが、どちらかと言うと麦汁にシェリー感が合わさっているような香味です。こちらにもトロピカル感はなくはないと思いますが、2015と比べちゃうと「ないです」と言ってしまいます。
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今後、ブッシュミルズ21年がどういう味になるかわかりませんが、少なくともこの2015年ロットは美味しいアイリッシュですので、見かけたらぜひ一度試してみて下さい。2014もトロピカルを感じないだけで、美味しいボトルではありますので、好きな方はこちらを飲んでみるのも良いと思います。2015がわかりやすいキャッチーなモルトで評価を一つ上げておきましたが、本当いいモルトに仕上がっていると思います。
 
さて、昨日のブログでアイリッシュウイスキーの定義をまとめましたが、一部訂正があります。
Single Pot Still Whiskeyという表記が撤廃されたことについてです。

どうやら2014年にアイリッシュウイスキーの定義が変わったようで、麦芽の使用やライ麦までの使用率が定められたようです。

使用率に対する文献はアイルランド政府の法令をそのまま引っ張ってきているので間違いはなかったのですが、呼名を昔のままで作ってました。お詫びして訂正致します。

海外版Wikipediaも文章を省略して記載されているので、法令をそのまま引っ張ってきますと、

“Pot Still Irish Whiskey/Irish Pot Still Whiskey” is defined as a spirit distilled from a mash of a combination of malted barley, unmalted barley and other unmalted cereals. The mash must contain a
minimum of 30% malted barley and a minimum of 30% unmalted barley and be:

となっていますので、改正点は、①「Single pot still」の呼名の廃止と②malted barleyとunmalted barleyはそれぞれ30%ずつ使用、ライ麦などの雑穀は5%以下にすること。

で間違いなさそうです。

日本語での言及はこのブログに記載されているという情報を戴きました。

mtsuchiya.blog.fc2.com

某資格教本では、この定義後の発行ですがまだ掲載されていなく、現在の法令と矛盾した記載がまだなされている(レッドブレストではモルトと未発芽大麦を5:5~8:2で使用という記載あり:2014年以前ならこの使用方法は法令上OKなはずです)ので、次回までには加筆修正が欲しいところです。

というか、レッドブレストが未だにSingle pot still whiskeyを名乗っているのが混乱の元なんだよ!と思わなくもないですが、もしかすると定義でこうなってしまった以上、Pot still Irish whiskeyを名乗れないのかも?と思ってしまうところもあります。どなたかお詳しい方、ご教授戴ければ幸いです。

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ブッシュミルズ21年 40% 2015年ロット

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評価:S

香りは甘く、トロピカルで華やか。ハニーシロップ、リンゴ、マロン菓子、ナッツ、過熟のプラム、パイナップル、ドライマンゴー。
飲むと口当たりは軽く、プルーン、ナッツ、パイナップル、パッションフルーツ、アップルジュースなどのトロピカルやフルーティーを感じ、軽くケミカル、麦汁のニュアンス。余韻は長く、嫌味のない軽いウッディネス。
 
アイリッシュウイスキーからブッシュミルズ21年、2015年リリースのものです。
アイリッシュは以前一度紹介したきりですが、自身の知識の整理も込めて、一度まとめておこうと思います。
 
まずは製法。シングルポットスチルウイスキーというのがアイリッシュ独特の製法であります。
伝統的なアイリッシュはこの作り方だったようですが、現在はミドルトン(レッドブレスト)のみです。
簡単にスライドにまとめておきましたので、こちらを参照して下さい。

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ブッシュミルズ北アイルランドはアントリウム州にありますが、御存知の通り北アイルランドは英連邦に所属しており、アイルランド国ではなく、実際にイングランド王より蒸留免許を与えられていた歴史があるようです。1608とラベルにはしっかり記載されていますが、ブッシュミルズ蒸溜所という名前だったかの文献はないそうで、実際にブッシュミルズという名称で創立されたのは1784年、ただそれ以前より密造はされており、現在に至っているようです。
基本的にはシングルモルトウイスキーを製造していますが、3回蒸留という独特の製法で、仕込み水はSt.コロンバ川のダムより引いてきています。
1972年に、当時少なくなったアイルランド蒸溜所を束ねていたアイリッシュディスティラリーズ・グループ(IDG)の傘下に入りますが、1988年にはペルノ・リカールがIDGを買収、2005年にはディアジオに売却され、現在に至っています。
蒸留は3回蒸留で、独特の軽さはここから来ているのかと思います。
 
さて、このブッシュミルズですが、この2015年ロットの21年が凄く美味しいととあるバーでお伺いし、なんとか必死で手に入れた1本でした。結構な量が出ているらしいんですが、日本への正規品の流通はかなり少ないようで、卸先も異なり中々入手の難しい一本でしたが、運良く購入することが出来ました(うちの地方だけかもしれません)。
製法としては、19年熟成のシェリー樽熟成、バーボン樽熟成をバッティングし、2年間マディラカスクで熟成したもののようです。
 
開けたてはそこまでではなかったんですが、徐々にトロピカルやプラムやアップルのようなフルーティーさが出てきており、ものすごくわかりやすい美味しさです。マディラ由来と思われる、シェリーっぽいフルーツ感と、トロピカル感が嫌味なく両立しているのが素晴らしく、アイリッシュらしい原酒の軽さとフルーティーさを備えた、良いボトルだと思います。あとは価格が少し安ければ文句ないんですが…
なお、2015ボトルと2014ボトル、2013年、年数表記なしなどが出回ってますが、情報として聞いているのは、こちらの2015年だけがトロピカルのようです。購入検討される方はご注意下さい。

トマーティン 1993-2010 17年 BBR 復刻ラベル


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評価A+(写真掲載忘れてました…すみません)

香りは赤い果実やウッディ。桃の皮、砂糖漬けのアップル、プルーン、バニラ、古い家具、木イチゴ、ナッツ。
飲むとリッチでフルーティー。蜂蜜、熟れたアップル、キウイフルーツ、バニラ、古めの家具、濃いめに淹れた紅茶、ヘーゼルナッツ。余韻は長くスパイシー。

 

BBRの復刻版ラベルのトマーティン1993-2010 17年熟成です。一年ほど前に近くの酒屋で見かけて買った一本。トマーティンも最近この年代のボトルが出なくなりましたが、中々出来の良いボトルが多い印象です。

全体的にトマーティンのフルーティーさと赤い果実感、紅茶のような程良いタンニンが合わさったニュアンスで、往年の76とまではいきませんが、トマーティンのこのようなシェリーとフルーティーが融合したタイプのは好みですね。残り少なくなってきましたが、大事にのみたいと思います。

サマローリ ’S PEATY 1995 ブレンデッドモルト for Whisky Live 2014

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評価:A+
 
香りはヘザー、メープルシロップ掛けのパン、バニラ、少しのウッディネス、ピーティ。
飲むとソルティ、ヘザーハニー、クラッシュナッツ、ウエハース、僅かにグラッシー、アニス。程よいピートに引き締めるウッディネス。
 
サマローリより、2014年のWhiskyライブ向けにリリースされたブレンデッドモルトです。中身はラフロイグとハイランドパークのようです。
Peatyと銘打ってはいますが、ピート感だけではない麦芽やハニー感、塩っぽさやナッツなど、ピートだけに留まらないバランスの良さがあります。心なしかハイランドパーク感もありますし、ラフロイグ感も見られます。十分美味しいボトルでした。
 
今更このブログで取り上げるものでもないのでしょうが、先日サマローリ氏の訃報が届きました。このボトルはサマローリ氏が関わっているボトルではないですし、最近の飲み手で地方在住で、サマローリの伝説のボトルを飲む機会もないまま、こんな日を迎えてしまいました。
それでも、ホームバーのマスターはサマローリの伝説のボトルを過去に飲んでいて、サマローリが心底好きで、あんまりモルトを飲んでいないときからも「サマローリはすごい!」と現行のサマローリを飲みながら、それでも美味しさを共有させていただいたものです。
 
そんなサマローリ好きに育てられていたこともあり、なんというかテレビのヒーローのような、ふんわりした存在でしたが、そうやってモルトが好きになった人々もたくさんいるでしょうし、それで好きになった人に育てられた、そんな繋がりを感じます。
 
そんな状況って何処かで聞いたことがあるな、とふと思いついたのが、斉藤和義の「僕の見たビートルズはTVの中」。
 
昨日はこれを流しながら、サマローリ氏に献杯とさせていただきました。